胞子の海を進む
ひと月のPVが、9月に初めて1万を超えました!皆様ありがとうございます。引き続き、宜しくお願い致します。
胞子の海へ到着した。
冒険者ギルドの支援で来てくれている馬車や御者、その護衛の人達はここ迄だ。ここでこれから、明日の昼迄は野営しながら待っていてくれる話しになっている。とてもありがたい話だ。
帰りにこの人数を送れる様な、乗合馬車なんて無いからな。だけど、今日1日と明日の昼までに帰って来れなければ、その旨を冒険者ギルドに報告してくれる手筈だ。
もし誰も帰って来れなければ、全滅及び討伐失敗として報告を入れてもらう事にするとギルドマスターと話し決めていた。全滅とは言い辛い事だが、生者が居ないのなら誰かが報告してくれないと困るからな。出来ればその役目をこの人達に負わせたくはないが。
御者や護衛の方々に、ここ迄ありがとうございます。と、お礼を伝え馬車から少し離れた場所に陣取る為に移動した。これから各々最終準備を行っていく。
崖下へ降りたら、まともに話す時間もなくなる。今の内に全員へ一言は伝えておきたい。
少し小高い丘へ立ち、全員を見渡す。それぞれ色々な表情をしているなぁ。必ず倒して報酬を持って帰るぞ!と気合を入れているPTリーダーもいる。でも見渡していて一番見かけるのは、やはり不安な顔がダントツで多かった。
今まで誰も討伐した事が無いレイドボスを、本当に倒す事が出来るのか。ここで死んで、二度と町へ帰れないんじゃないか。今からでも帰ろうか。等々・・・きっとそんな気持ちだろう。
少しでも不安を払拭し、来てくれた人達には無事に帰って欲しい。その気持ちだけでも伝えておきたいので、俺は大きく息を吸い込んだ。
「皆様!!本日は危険を顧みず、このオルフェン討伐PTに御参加頂きありがとうございます!私の目標は討伐だけではありません!全員が無事にザイオース城下町へ戻り、皆様へ酒場で奢る事です!」
皆こちらを向いて手を止めてくれた。その表情は多少良くなっている。
「だから───死なないで下さい!死なせないで下さい!世界初のレイドボス討伐を成功させ歴史に名を残し、世界一美味いであろう勝利の美酒を飲みましょう!浴びるほど飲んで下さい!!!」
「うおぉぉぉ!!」
全員武器を頭上に掲げ、良い返事をしてくれた。先ほど迄不安そうな顔だった人達が、少しだけ元気で良い顔になった。俺が出来るのなんてこれぐらいだ。こんな事しか出来ず、申し訳ない気持ちになる。
後は皆、それぞれが倒す為に、死なない為に動いてもらうしかない。俺の仲間含め、願わくば誰1人欠ける事なく、馬車が狭いと文句を言いながらザイオース城下町へ戻りたい。
アリア、ミイ、レイ。これから討伐してくるぞ。また討伐したら報告するよ。
集まってる皆を見ながら、そんな事を考えていた。
時間が経ち、全員準備が整った様だ。流石にこの人数だと、確認を取るだけでもかなりの時間を要した。でも事前準備は大事だからな。手を抜く訳にいかない。ここでかける時間は無駄ではない。
「では、事前の打ち合わせ通りに!最低限のエンチャントをかけ、道中の魔物は全て倒して下さい!では・・・エンチャント開始!」
全PTのヒーラー、バッファー達が動き出す。このエンチャントの時間合わせもかなり大事だからな。PTの役割事にずらしたりはするが、それは後ほどの話しだ。今はハクに全体を把握してもらう為にも、タイミングを合わせてかけてもらう。
事前の話し合いのお陰でスムーズに終わり、バッファーの動きが止まる。
「では、行きます!」
「おぉ!!」
しっかりと隊列を組み、徐々に崖下へ下って行く。先行してもらっているのは、ギンナルさんを含むPTだ。本来ならうちが引っ張って行かなければならないのだが、全体を見たいので先頭をお願いしてしまった。
下る道が1本しかないので、この人数だとどうしても時間がかかる。先に降りて行ったギンナルPTは、扇状に広がりつつ魔物を倒していく。この人数とレベル、装備なので、雑魚の魔物は余裕で狩れているな。
再度魔物がわく前に移動してしまえば、倒すのは一度で良い。スキルは極力使用しない様にして、オルフェンにたどり着く迄は、MPを温存してくれと伝えた。
ギンナルPT達が扇状に広がったまま、徐々に前進していく。その後ろをゾロゾロと適度な距離を置きつつ他のPTが進んでいく。胞子の海の中心にいるオルフェンが出てくる位置までは、少し気を抜いても良いとは思うが、前回と違う場所で出てくるかも知れないからな。油断せず進んでいく。
そろそろ警戒を強めた方が良さそうな位中心部へ進んできた。実際何処まで行ったら出てくるのか、良く分からない。以前の外側で待ち伏せしていた眷属だけでも先に倒す事が出来ないか、探しながらここ迄来たが見つける事は出来なかった。きっとオルフェンが反応してからしか、出てこないんだろうな。
だが、外側で逃げる敵を待っていてくれるなら、同時に相手をする数が減るのでありがたい。
ま、討伐後とか撤退する時に出てくるのは非常にやっかいだが。
俺はギンナルPTから短剣職を前に出し、警戒しながら進んでもらう様伝えた。
MPは減ってしまうが、一応先に感づかれない様にスキルは使用してもらっている。
さ、どの辺に居るのかな。