レイドボス討伐 PT編成完了
訓練場から冒険者ギルド内へ戻ると、受付嬢が待ってました、と言わんばかりのテンションでこちらへ駆け寄ってくる。物凄い笑顔だ。
「ハガネさん!ラスト1PTの応募がありましたよ!フルPTの9名です。今、丁度受付に見えたので、事情を話し、お待ち頂いてます。宜しければ、そのまま面談されますか?」
「おぉ、ありがとうございます!はい、早速お会いしたいと思います。1部屋お借りしても宜しいですか」
「はい!そう仰ると思い、1部屋押さえてあります!どうぞ、お使い下さい」
なんて気の利いた受付嬢だ。感謝を伝えると共に、すぐ押さえてくれた部屋へ向かう。これでもし双方に問題が無ければ、予定人数は揃う事になる。是非参加してもらいたい。
募集要項には色々と冒険者ギルドに書いてもらったが、念の為、面と向かって確認しておかないと後々揉め事になる事が多いからな。元社会人としては、とても大事な事だと思う。
まぁ社会人って言っても、オフィスの様な所で働いた事は無く、居酒屋チェーン店にバイトで入り、正社員登用してもらい、ずっと雇われ店長だったからなぁ。
一度地区長にならないか、とありがたい話は頂けたのだが、やはり接客が好きなので、無理を言って辞退させてもらった。その時、良い話を頂いた、俺の担当地区長が苦虫を噛み潰したような顔をしているのを今でも覚えている。まさか断るとは思ってなかったんだろうな。
本来なら俺が引き継ぎ、その地区長は本社へ上がりたかったという事を、後日店長仲間から聞かされた。
そのせいか分からないが、その後は昇進の話しは当然の如くなく、売り上げの悪い店舗に飛ばされて何とか立て直すと、また別の売り上げが悪い店舗へ飛ばされて・・・をずっと繰り返していた。
冷遇されていた様な気もするが、実際立て直しで異動すると、やる事が多くて意外と楽しい。
大体売り上げの悪いお店は元気が無い。いらっしゃいませも、ありがとうございましたも、ただ店長や社員から、言えと言われて声を出しているだけな事が多い。あれじゃあ、また同じお店に行きたいとは中々ならない。もちろん店の雰囲気、値段、味等々色々店を選ぶ理由はあるだろうが。
高々挨拶如き・・・と思うバイトさんも多かったが、ちゃんと意味を教え遣り甲斐を感じてもらえれば、皆良い声で挨拶を気持ち良くしてくれる様になってくれるのだ。
そうなってくれれば、挨拶以外の時・・・接客する時でも、お客様に対しての姿勢が変わってくる。そこでお客様から褒められたりした日には───接客業の楽しさを覚え、長く続けてくれる。
そうすると、新しくバイトに入ってくれた人たちは、挨拶は元気良くが当たり前になり、好循環が生まれる。
その上ホールは可愛い・・・接客の上手い女性をメインにしていたから、やはりお客様は増えた。おっさんホイホイだ。俺もお客様の立場ならそんなお店に行ってしまう。
皆にそうなって貰える様、募集要項に書いてあっても、大事な事は、再度面接で念押し&確認を行っていた。
と、かなり脱線してしまったが、そう言った経験があり、口頭でも良いから必ず確認する様にしている。本当なら書面に残すのが、意識付けとしては大事だが。
今回来てくれたPTは、戦乙女の知り合いだった。PTの構成が戦乙女と類似していたので聞いてみたところ、知り合いだと言うのが分かった。このPTも女性のみという縛りを設けて、メンバーを集めたみたいだ。戦乙女の名前は元々知っていて、女性だけの2PTと知っていたから、合同PTでも狩りを行った事はあったが、まさか、あの楽園の管理者の傘下に入り血盟入りしてるとは思わなかったので、気がつかなかったそうだ。あの、って何ですかね・・・。またろくでもない評判だろうな、きっと。
やはり今まで男女間のトラブルが多く、望んでなくても好意を寄せられ、辛い思いをした女性達が過半数との事。これだけ綺麗な女性と冒険していれば、そういう気も起きるのは男として良く分かる。
そんな事がありながら、良くこれだけ人数の多い、もちろん男も多いレイドボス討伐に参加する気になりましたね、と聞いたところ、楽園の管理者の様に昔にPTメンバーを殺された事があるから、参加したいと思っていた。
だけど、貴方が言う様に男性が多いので、ギリギリ迄参加を迷っていたんです。でも、やはり敵討ちがしたいから来ました!と、最後は気合の入った声で参加理由を教えてくれた。
何の問題もなく、討伐に対して強い気持ちを持ってくれているので、もちろん参加を承諾した。
ただ、PT編成は女性だけにする様、ワニとハクに配慮する様にお願いしておいた。
色々あったが、これで募集していた人数迄達する事が出来た。後はPT編成を発表し、お互い顔合わせや連携、エンチャント、消耗品の確認を行えば・・・いよいよだ。
必ず倒せると皆に約束は出来ないが、何も出来ずに死者を出し撤退する事が無い様、事前準備をしっかり行う事にした。