久々の模擬戦
あっと言う間に5日間が過ぎた。危ない場面もなく、穏やかに狩りが出来た。
まぁ全く奥へ行かず、入り口で狩りをしていただけだからな。早々危ない目には合わない。
何組かPTが奥へ向かって行ったが、どのPTも2PTかそれ以上の人数だった。1PTで狩りをしているこちらを、皆一様に怪訝な目で見ていたな。
現地解散して、再度野良PTに入り続けて狩りを行う人はおらず、皆乗合馬車で帰って行った。中々勧誘するタイミングはなかったな。
うちのPTも乗合馬車に乗り、ザイオース城下町へ戻る事にした。2日経ち、町へ着き本格的に勧誘をする事にした。最低限2人捕まえてから、再度狩りへ行きたいところだ。
町へ戻り宿へ荷物を置き、とりあえず風呂へ入る。狩り中は濡らした布で身体を拭く位だから、やはり風呂は良い。身だしなみを整え、冒険者ギルドへ向かう。
ギルドへ着き、フェアリーの谷での報告を行い報酬を受け取る。7人で割っても結構な額だ。現状冒険者ランクはC。ここからが中々上がらない様だ。
何かしら偉業と呼ばれるような事を達成したり、上流貴族等の指名依頼を完遂させたりすればBランクへ上がる事もあるようだが、今のところ当てはない。
実際この町迄の道中で一番多いのはDランクの冒険者で、聞く限りではCランクPTは30組位しかいないみたいだ。Bランクは知っている限りじゃ3PT、Aランクに至ってはここには居ない。
Sランクもあるとは聞くが、この先の大きい町へ行けば会えるのかも怪しいものだ。一先ずはBランクを目指そう。そこ迄いけば、PTメンバーの生活は安泰するだろう。
メンバーを探す為に、受付嬢に声をかける。
「お早う御座います。お尋ねしたいのですが、レベル52以下でCランクのフリーな冒険者って御存知ないでしょうか?」
「お早う御座います。楽園の管理者に勧誘するんですか?まずレベル52以下のCランク冒険者が早々居ません。殆どがDランクの方か、すでにPTへ加入しているかと」
「ああ、Dランクでも構いませんので御紹介頂けると助かります」
「ハガネさんが気に入る様な、綺麗な女性か・・・少し探してみますね」
別に女性じゃなくても、悪さをしない男性なら歓迎するんだが。探してくれるとの事なので、お願いしよう。
「では、また明日の同じぐらいの時間に参ります。宜しくお願い致します」
受付嬢にそう声をかけ、受付を離れる。今うちのPTが平均レベル49だ。出来れば同じくらいかその前後の人がいるといいな。明日が楽しみだ。
だが、ギルドだけに任せる訳にはいかない。自分でも探さないと。やっぱり酒場・・・かな。今は昼過ぎだからそんなに人が居ないだろう。夜になったら酒場へ顔を出して探してみよう。
今は町中をぶらついて、出会いを探したいところだが、レイの様な出会いは中々ないだろう。どうしようかと考えつつ、何となくギルドの訓練場を見に行った。
訓練場を見ると、結構人がいる。装備や動きを見る限り40前半位から50前後の人が多い様だ。皆自己鍛錬や、対人戦の訓練をしている。
何となく眺めていると、1人の女性が俺を見て動きを止め、こちらへやってくる。知り合いでは無いな。
近くまでやってくると、やはり俺に用が有った様だ。声をかけられた。
「ねぇ。アンタが楽園の管理者のリーダーやってるハガネかい?」
大分気さくに話しかけてくるな。見たところダークエルフの短剣使いであるアビスウォーカーか、弓使いのファントムレンジャーかな。今は木で出来た短剣を手に持っている。
「ええ。私はハガネと申します。貴方はなんとお呼びすれば?」
「私はミラ。暇なら手合わせしないかい。ビショップなのに戦えるんだろ、アンタは。後、その貴族みたいな話し方は好きじゃないね」
「わかった。手合わせいいぞ。今は時間もあるしな」
急に申し込まれたが実際夕方迄暇だし、鍛錬にもなるから模擬戦を承諾した。
「それでこそ男だね。じゃあやろうか!」
笑顔になり大声でミラはそう言った。周りの人達も模擬戦をするのが分かったのか、手を止めてこちらを見ている。
俺は訓練場の中へ入り、中央辺りで対峙する。皆気を利かせて、場所を空けてくれた。
「じゃあ、シールドだけかけさせてもらうよ」
そう伝え、お互いにシールドのみかける。相手に怪我をさせたくないし、俺がボコボコにされるかもしれないからな。見た感じかなり強そうだ。
「よし、行くよ!!」
木の短剣を逆手に握りしめ、こちらへ駆けてくる。思い切りのいい踏み込みで、袈裟切りをしてきた。
俺は肩口に来る短剣を避けようと、身体を傾ける。その瞬間ミラは目の前から消えた。ん、アビスウォーカーだったか。
これはアビスウォーカーのスキル、シャドーステップだな。効果は相手の背後に一瞬で移動し、背後から一撃を加えてスタンをかける。だったな。
棒立ちしていたらスタンを喰らうので、俺は後ろも確認せず前面へ飛び込み、転がって立ち上がる。
「おぉ、初手のこれを避けるとはやるね!」
嬉しそうな顔をして再度突っ込んでくる。俺が身構えると躊躇なくデットリーブロー(短剣による突き。クリティカルで大ダメージを与える)を放ってくる。
直撃は受けたくないので、相手の手首を狙って下方向に叩きつけながら、体裁きで躱す。痛いな、ちゃんと籠手を着けてくれば良かった。
町中の散策予定だったので、今はローブ装備のみだ。
叩き落とし、そのまま逆手で首を狙い手刀を叩きこむ。俺にデットリーブローを防がれ体勢を崩していたにも関わらず、そのまま流れに逆らわず前へ倒れ込み避け、その上片手で逆立ちした状態から踵を頭に放ってきた。
慌てて十字受けで止めるとミラは少し浮き上がり、俺のアキレス腱を短剣で切りつけてくる。木の短剣だったのでアキレス腱は切られなかったが、本来なら左足は死んでいる。
「やるな、ミラ!今のは俺の負けだ。このままもう一度良いか!」
「いいよ、やろう!」
完全に俺の油断だったので今のは負けだ。再度申し込むとそのまま立ち上がり、再度突っ込んでくる。待ちを知らない人だな。