フェアリーの谷へ
あれから数日経ち、最後の休日となった。
ハクとユイと三人でも一日出かけて、何となくだが皆気持ちを少しだけ前向きにする事が出来た。
忘れられる様な事ではないが、また前を向きやっていけそうな気持にはなれた。ワニとも2人で飲み、胸の内を話す事も出来た。
さぁ、明日からフェアリーの谷へ狩りに行く。だが、PTメンバーが増えていない。が、お試しで現状の面子で行ってみる事にした。
谷の入り口から徐々に進み、退路は確保しようと思う。フルPTではないし、実際の狩場がどんなものなのか分からないからな。やはり今までよりは慎重にもなる。
今回、特に装備品の更新はしていない。もう少し頑張ればレベル52になるので、そこでBグレード装備購入が良いからだ。それまでは今の装備で我慢我慢。52で覚えるスキルも楽しみだ。
色々考えたいが明日から移動なので、寝床へ入り目をつむる。
昨日は早めに寝た為、大分早起きになってしまった。新しい狩場へ行くという事だけで、かなりテンションが上がる。しかも、あの幻想的で美しいフェアリーの谷だ。
魔物が居なければ観光でもしてみたいが、流石にそんな余裕は存在しない。
1Fへ降り朝食をとりに行くと、他のメンバーが既に食堂に居た。皆楽しみにしてたのかな?俺が一番かと思っていたのに、集まるの早すぎるでしょ。
食べ終わって予定より早く出発出来そうだが、乗合馬車の時間までまだ時間がある。
女性陣は食後のデザートにフルーツを追加して食べていた。この世界、鮮度を保つ冷蔵庫等ないので、新鮮な果実はお高めなのだ。
これから数日狩場にこもる事になるかもだから、出発前の贅沢だな。
時間が来て、乗合馬車へ乗り込む。ここから2日ほどで着くはずだ。のんびり役割分担の話でもしながら、向かうとしますかね。
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特に何事もなく、フェアリーの谷へ到着する事が出来た。
近づくにつれ緑が増え、空気も良くなった気がする。植物が豊富で、水がとても綺麗だ。それに精霊とかなのかな?入口付近から、キラキラ輝きながら浮いている物体がある。
正直ゲームの世界より何倍も綺麗だ。自分の目でこの光景が見れるとは。感動が押し寄せてくる。
そういえば、観光旅行に行こうと思いながらも、全く行ってないな・・・ワニ達エルフの故郷にある世界樹の傍も、確かこんな感じのはず。
いい加減観光に行こうかな。この世界に来てからずっと狩り続けてるが・・・やっぱり強くなるのが楽しいんだよな。
ゲームの時は狩りにもいかず、観光していたり町中で一日話をしてたりしたが、こっちに来てからそういった日がなかった。
自分が強くなるのがこれ程実感でき、またそれがこんなにも嬉しいものだとは思わなかった。
生活をするだけなら、クエストを少しこなしてお金を貯め、何処かに家を借りるか買うかすれば定住も出来るだろう。
結婚して子供を育て、人並みな生活を送るのも有だとは思う。
だが、俺はオルフェンを倒したい。元々大人数で戦うレイドボス討伐は好きだったが、今はそんな理由じゃない。
アリア、ミイ、レイの敵討ちではないが、必ずあいつは倒す。Bグレ装備を整え人数を集めたら、冒険者ギルドに声をかけ人を集め討伐する。参加してくれる人がいるかは分からない。
この世界では、レイドボス討伐は一般的では無い様だ。ま、当たり前だよな。死んだら終わりだもの。
レイドボスは一定の範囲内へ近づかなければ害は無いし、放置すれば良いだけだ。わざわざ危険を冒して倒す必要性が無い。
それでもあいつは倒す。これは休みの間に決めた事だ。まだ全員に伝えてはいないが、ワニには伝えてある。もちろん、と快く承諾してくれた。
その為にもレベル上げ頑張らないとね。観光はそれまでお預けだ。
まずは馬車で話をした様に、エンチャントをハクメインでかけてもらう。ユイと俺は職業固有のエンチャントだけかける。
歌はソングオブウォーディング(魔法抵抗力向上)とソングオブインボケイション(物理、魔法クリティカルダメージの減少)の2曲。
ここの敵はシルフなどが風魔法をよく使ってくるので、魔法防御力向上は必須だ。魔法クリティカルを受けたら、下手をすればセラ以外即死する可能性もある。
踊りはダンスオブミスティック(魔法攻撃力向上)とダンスオブコンセントレーション(詠唱速度向上)、それとダンスオブファイア(物理クリティカルダメージ向上)の3曲を頼んだ。
メイン盾がセラでヘイトのMPを使用する関係上、ディムに3曲歌ってもらった方が良い。本当はセラにソングオブハンター(クリティカル率向上)も入れて欲しいが、MPが持たなくなり、ユイにリチャージをもらう事になる。
そうなってくると、いざという時のPT全体のMPが足りなくなってしまう。大リンクをしたら殲滅力を上げ、速攻で魔物を倒すのも有効的だが、普段はそこまで急ぐ理由も無い。
効率的に狩りは行いたいけど、死ぬ可能性迄考慮すればこの構成になる。
エンチャントも終わり、入り口から入る事にする。
魔物の強さがどんなものかワクワクしながら、皆で谷の中へ入って行った。




