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馬車の旅は大変

 ザイオース城下町迄の道中は盗賊が出たり魔物が出たりしたが、特に問題なく処理し平穏な旅路だったと言えよう。

 確かに外的要因に対しては何の問題もなく順調だったんだが、問題は内的要因で毎日大変だった事だ。

 

 乗合馬車は業者席に2人、馬が4頭。ホロ付きの馬車内部に10名程座れる、横長の椅子が向かい合わせで設置してある。

 椅子の座り心地はお世辞にも良いとは言えず、木の板に直座りだしサスペンションが無いに等しい。と言うか、無いので振動が直でお尻にくる。

 その上、道は踏み固められてるだけなので、揺れる揺れる・・・。お尻が痛くなって困った物だが、それが辛そうなのは俺位だった。

 長年この世界にいるワニは平気そうだし、そもそもこの世界で生まれている他の皆はこれが当たり前なのだ。だから対して気にもして無い様だ。


 内的要因の問題がこれだけだったら全然俺も平気なのだが、問題としてあったのは席順だ。

 小学生じゃあるまいし、そんな事が問題になるとは思えないだろうが、大人だからの問題だった。

 

 カストール村から乗り込んだ時に特に気にせず乗り込んだのだが、それが良くなかった。

 席順が前からディム、リカ、俺、ハク、セラ。対面にミイ、ユイ、アリアの順で座った。それは別に良いと思うんだが。

 ワニは見張りもかねて業者席に座るとの事。ずっとそれでは疲れるんじゃ?と聞くも外の方が気楽で良いですよ。との事。

 いつも苦労を掛けて申し訳ないと思いながらも了承した。



 馬車がゆっくりと進みだし、今後の事を話しておこうと皆に向き直り声をかけた。



「これから野営しつつザイオース城下町へ向かうが、日々2交代で3名ずつ見張りを行って夜は過ごそうと思う」



 そう伝えると皆がこちらを見ていた。別にこの意見に対し思う事は無い様だが、皆の視線が俺の左側に集まっていた。

 そういえば、先ほどからリカが俺の腕を掴み寄り掛かっているけど、これか?これのせいで皆の視線が痛いのか。

 リカにちょっと起き上がってくれと伝えるも、嫌だと言われてしまった。このままだと話し合いに支障が出る事に今更ながら気が付いた。

 そんな事をしていると、何故か右側からもハクが同じ様に寄りかかってくる。流石に腕を組んだりはしなかったが、これは落ち着かない。

 それに伴い、他の方からの視線がさらに痛くなる。



「ん・・・えっと。見張り役は」



 取り敢えず気にしないで話を続けようとしたが、対面のユイ達から待ったがかかってしまった。



「ね、ハガネさん。いつもそんな感じなの?」


「ユイ。あれは気にしちゃダメなやつよ」


「ハガネさん・・・良いわね、幸せそうで」



 あれ・・・アリアが怖いぞ。いつものお姉さんっぽさはなく、ただ怖い。



「リカは積極的だね!はーさん嬉しそう!」



 ディムがとんでもない事を言う。



「はーさん、私ずっと隣に座ってても良い?」



 リカが上目遣いでそんな事を言う。もちろん良いが、今良いとは言ってはいけない気がする。



「ハガネさん・・・模擬戦の日から随分と仲良くなったんですね。良いですね」



 右隣のハクが腕は組んで来ないが、俺の脇腹をグリグリしてくる。ちょっと痛いんですけど。



「ハガネ、私は膝に乗らせてもらう。重かったらすまない」



 え、セラがおかしい。既に膝の上に座ってから、そんな事を言ってきた。



「いや、重くなんてないよ」



 重くはないが、これ流石に平常心が保てないんですけど・・・。右脇腹がさらにグリグリされて痛い。



「ちょっと、セラ!流石にそれはやりすぎよ!」



 アリアが慌てて声を上げる。しかしセラは立ち上がる気は無い様だ。小さく頭を振り、拒否を示す。あれ、セラ可愛い・・・。



「ずるいよ、セラ。私もはーさんの上に乗りたい!」



 ディムの危ない発言を受け、セラは少しずれて俺の右足の上に乗る。そこへすかさずディムが左足に乗った。

 いやいや、これは幸せ過ぎるでしょ。無理無理。こんな状態で旅が出来る訳がない。



「ハガネさん・・・覚悟は出来てますよね」



 ハクが低い声で淡々と伝えてくる。俺の脇腹に添えられたハクの右手には、風の魔力が集まりだしている。いや、こんな0距離で撃たれたら、流石に危ないよ。

 撃たれては堪らないので、顔をハクへ近づけて小声で伝える。後でハクも膝の上に来る?と。

 右手の魔力が霧散して、ハクは俯いてハイと返事をした。良いんだ。有りなんだね!これは良い展開なんじゃ!!

 とか思っていたら、対面に火と闇の魔法が見える。



「ユイさんエンパワー頂戴」


「分かった、アリア。ミイにもかけるね」



 ユイさん何してんの・・・。魔力を上げてどうするつもりだ。このままでは死んでしまう。



「待って待って!皆一度離れて落ち着こう!馬車も壊れちゃうよ!」



 何とかそう叫ぶと、少し皆落ち着いてくれた。危なかった・・・こんなところで死ぬわけにいかない。

 冷や汗を拭いつつ周りを見渡すとワニが御者席から後ろを向き、ニヤニヤしていた。あいつ・・・こうなる事が分かって御者席に行ったな。なんて危機管理の出来る奴だ。

 この場は一旦収まったが、道中終始この様な感じだった。


 まさに楽園だとは思うが、とても管理出来ているとは思えない。PT名に相違があるな。

 皆と交流を深めつつ、馬車の旅は続いた。





 カストール村を出発して3ヶ月弱。漸くザイオース城下町へ入る事が出来た。

 ここは今まで訪れたどの町よりも大きく、堅牢な石壁に守られ全ての種族が混じり合った様な町だ。


 商売がメインで発展した町なので、お店がとても多い。屋台もメイン通りにずらっと並び、その両サイドには店も同じく並ぶ。

 ここで装備を揃え、新しい狩場へ向かうのだ。幸いな事にクルマーの塔で稼いだ分が沢山あるので、全員Cグレード上位装備を購入出来そうだ。

 まずは宿を取り、買い物と冒険者ギルドだな!

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