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模擬戦?

100話目です。皆様ありがとうございます。引き続き宜しくお願い致します。

「エンチャントは終わりました。それでは皆さん宜しいですか?大けがしないで下さいね」



 ハクが不安そうに声をかけてくる。皆そこら辺りはわきまえているから、大丈夫だと思いたい。

 セラが滅茶苦茶ワクワクしてるのが、少しだけ不安かな・・・。まぁワニがやられる事はないだろうし、俺が気を付ければ平気だ。

 見学者達が静かになった。そんな真剣に見なくて良いから。ハクが緊張しちゃうでしょ。



「では模擬戦・・・・・・始めてくだひゃい!!!」



 うむ、噛んだな・・・ドンマイ、ハク。



 見学者が開始と同時に叫ぶ。やれーだのいけーだの可愛いーだの。最後の奴には気を付けよう、ハクが狙われてる。

 

 開始と同時に、俺とワニは走りだす。相手のアタッカーがメイジだからな。近づかなければ、一方的にやられてしまう。

 ただそんな事はセラ、ディムも予測済で2人が並んで前へ出てくる。アリアとリカはその後方へ走って行く。

 理想はセラ、ディムの立ち位置のちょっと先位(俺とワニが居るであろう位置)が狙えるポジション迄下がる事だからな。

 このまま2人に下がられたら、俺とワニは一方的にやられてしまう。ちょっと見学者を楽しませようかな。


 ワニが先行して走っており、俺はその後方。やっぱりワニは足が速いな。もう少しでセラ、ディムに接敵するタイミングで、走りながら俺はワニへ声をかける。



「ワニ!飛ばせてくれ!」



 その声が届いた瞬間にワニは相手に背を向ける。セラ、ディムは一瞬驚いた表情になる。そりゃそうだよな。接近戦しか出来ない相手が、走りこんで来ていたのに急に立ち止まり後ろを向くんだもの。

 あんな言い方でちゃんとワニは理解してくれて嬉しい。立ち止まったワニに向かって、俺はさらに加速する。

 ワニが膝を落とし、手のひらを上に向け手を組み、俺を待ち構えてくれる。そのまま俺は跳躍して、ワニの手の上へ。膝を曲げ、衝撃をやわらげ力を溜める。

 そうするとワニが伸びあがり、手のひらを後方へふりぬく。タイミングを合わせて、再度跳躍。当然乗ってた俺はワニの後方へすっ飛んでいく。

 喚声が聞こえるな。空飛ぶビショップはさぞ珍しいんだろうなぁ。


 近づいて来ていたセラ、ディムの頭上を飛び越え、後方へ走っていたリカの正面に着地する。



「えっ!!」



 驚いたリカは魔法を使うのも忘れ固まってしまう。ごめんね、リカ。まともにやったらこのメンバーに勝つのは難しいので、ちょっとふざけた作戦でやらしてもらうよ。

 

 固まってるリカへ向け、手のひらを顔の前に出す。固まってるリカの視界を奪って、それから投げの間合いに接近する。

 特に大技はいらないので、リカの左肩を押して右腕を掴み手前に引っ張る。足をかける迄もなくバランスを崩す。

 本来なら地面に押し込むように倒すのだが、リカにそんな事はしたくない。右手を掴んでいた手をリカの頭の後ろへずらし、肩と頭を抱き留める様にして地面へ転がす。

 周りから見ると押し倒してる様に見えるのか、女性から黄色い声が聞こえる。男性からは死ね~等の声が聞こえる。男達が好き勝手ヤジを飛ばしてくるな。後でWSぶち込んでやる!



「ごめんね、リカ。これで倒した事にして良いかな」


「・・・ハイ。大丈夫です」



 あれ、この子リカだよね!ハクみたいに声がちっさい。顔は真っ赤になり、がっつり見つめてくる。ついつい吸い込まれる様に、リカを見てしまう。

 まつ毛長い・・・なんて綺麗な顔をしているんだ。こんなに近くでしっかり見た事はなかったから、つい見惚れてしまった。

 お互い見つめ合っていると、リカが目を閉じる。え、今ここで良いの!嘘でしょ!でも、この状況でしないとかないな。

 俺も顔をゆっくり近づけ、目を閉じようとしたら視線を感じる。

 見学者がこれだけ居れば、そりゃ視線はあるだろうがそういう事ではない。明らかに殺意を込めた視線を感じるのだ。


 不安になり顔を上げ、リカから目線を外すとハクがこちらを見ている。これはまぁ想定内・・・だが他からも感じる。

 近くにいるアリアと、先ほど飛び越えたセラからも感じる。まさかセラから殺意を込めた視線があるとは・・・。

 ディムはワクワクといった顔でこちらを見ており、ワニは遠くで笑ってる。


 見学者はマジかこいつ。こんな所で何やってんだ。的な視線だ。怒りと呆れを感じる。

 そんな事を気にしてキョロキョロしていたら、リカの目が開いた。



「はーさん・・・まだ?」



 潤んだ瞳でリカがそんな事を言う。ヤバイ、可愛い。

 これはもう周りは放っておいて良いでしょ!!再び目を閉じつつリカへ顔を近づけるが・・・もの凄い熱気を感じる。

 アリアが範囲火魔法を使おうとしてる。待て待て、そんなのこっちに撃ったらリカも巻き込まれる。

 というかもう目が怖い。アリアのあんな顔は初めて見た。ここに来て自分の愚かさにようやく気が付いた。



「リカ、ごめん」



 リカから手を放し、そっと地面へ寝かせる。しかし、アリアの範囲火魔法は消えない。

 色々と刺激しない様にゆっくり立ち上がり、その場から少しずつ離れる。少しはアリアの表情が和らいだ。良かった、消し炭にされるかと思った。

 しかし今ここで、言ってはならない事をリカが言う。



「・・・また後でしてね」



 リカ・・・そのセリフは魅力的だけど、今は良くない。可愛すぎてつい鼻の下を伸ばしてしまった。

 

 再び恐ろしい程の熱気と強い視線を感じる。後、何故か模擬戦に参加してないハクがWSを放つつもりなのか、こちらへ手のひらを向けて魔力を高めていた。



「さ・・・さぁ、一人倒したぞ!模擬戦を続けよう!色々な事は・・・模擬戦が終わったら伺わせて頂きます」



 つい敬語になってしまった。けど、上手く誤魔化せた・・・訳はなかった。だが無理やりにでも模擬戦に戻す!



「いくぞ、アリア!!」


「・・・無理ね。流石に許されないわ。ハクさん、セラさん手伝って」


「ドライアードツール」



 え・・・何故不参加のハクさんが行動阻害魔法を俺に。

 ハクが自分とアリアと近くへ来たセラへ攻撃系も含めエンチャントをかける。



「ハガネ、諦めろ」



 セラが怖い・・・あのいつもの快活なセラさんはどこへ!?

 

 セラが攻撃系の歌を、ワクワクしていたディムも攻撃系の踊りを使用する。

 ワニに助けを求めようと、先ほど迄立っていた場所を見ると居ない。

 

 いつの間にか見学者に交じってこちらを見ている。



「ワニ!!助けて欲しい!」



 先ほどと違い具体的に言葉に出して意思を伝えたにも関わらず、ワニは微笑むだけだった。




 結局模擬戦は実現せず、俺が袋叩きにあう所を衆目に晒しただけで終わってしまった。

 

 今度はちゃんと模擬戦をしようと心に誓い、一人で宿へ帰る事にした。

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