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第4話 アシスの理と無属性魔法

 この世界をもう少し知ってから判断しようという考えは、いともたやすく打ち砕かれる。


 アシスに来て、クオンの次に仲間になるのが雷の精霊ウィル・オ・ウィスプになる。洞穴の中で灯りの役割を担い、比較的に簡単に仲間に出来たはずなのに、今の俺にはどうすることも出来ない。


 本来なら最初の洞穴には、沢山のウィル・オ・ウィスプがいて、暗い場所なんてなかった。それなのに洞穴では、入り口から射し込む光が届かない場所になると、暗くて何も見えない。少し奥に進んでみても、灯りは無く何も見えない暗闇が続く。しばらく暗闇で目を慣らしてみるが、この奥にどれだけの空間が広がっていのかでさえ、俺には判断出来ない。ただ、洞穴の中から吹き出す風だけが、奥にある空間を感じさせる。


「ご主人様、どうしたの?」


 俺の影から顔を出したクオンが、俺に話しかけてくる。


「クオンは、この奥に何があるのか知ってるか?」


「ううん、知らない。奥は寒いから、ボクは行かないし、行ったことない」


 俺の小説の中の寡黙なクオンとは違い、普通に会話してくるクオンが新鮮に感じる。


「行かないってことは、暗闇の中でもクオンは行けるんだよな?」


「影の精霊には、暗闇なんて関係ないよ。先に何があるのか知りたいの?」


 クオンに聞かれたものの、そこで悩んでしまう。クオンだけが奥に進めても、肝心の俺が先に進めなければウィル・オ・ウィスプが居ても召喚契約出来ない。

 そして肝心のウィル·オ·ウィスプは、俺の無属性魔法に関心を示して出てきたはず。


「ちょっと待っててくれるか。先にやらなければいけない事を思いだした」


「うん、分かった」


 そう言うと、再びクオンは影の中に潜ってしまう。


「ふぅっ」


 一度肺の中の空気を吐き出して、思考も体もリセットする。異世界転移して、勝手が違うと言うのはおかしいが、全てが少しずつ異なっている。大きくは違わないが、一緒ではなく簡単に進まない展開が歯痒い。でも順番がどうであれ、これは避けては通れない部分もある。それが、無属性魔法を習得すること。


 アシスは精霊と魔法が存在する世界で、8つの理から始まる。神々が最初につくったのは、火・水・地・風・光・闇・空・無の8つ理。その理に原初の精霊が魔力を流し、8つの属性が産まれる。それらが、複雑に組合わさり混ざり合うことで、数多の属性と精霊がアシスという世界に誕生する。


 そして異世界転移した俺も、アシスの世界の理に従い影響を受けている。複雑に絡み合い数多の属性がある中で、俺が持っているのは何故か無属性だけ···。


 無属性とは、魔力を炎や水に変換するのではなく、まさに魔力そのもを操る。ガソリンでエンジンを動かすのではなく、ガソリンタンクを武器にして戦う原始的な魔法。

 それでも、俺にとって無属性スキルが必要になる。下位スキルこそ、魔力を集めて物質化するスキルになるが、上位スキルは魔力吸収スキル。魔力を吸収してしまう異常体質の俺にとって、魔力吸収スキルがあればそれを制御出来る。そして、それには地道な努力しかない。


「マジックボール」


 そして、俺は呪文を唱える。魔法を発動するにのは、特別な呪文を唱える必要はない。どのような魔法を行使するかのイメージが出来ればイイ。

 ただ、ここは精霊と魔法の世界だけでなない。俺の小説と似た世界ならば、当然言葉の力がある。頭でイメージしただけの魔法と、文字となり言葉となった魔法の効果が同じであるはずがない。


 だが一番の理由は、魔法を使ったことのない熟練度の低い俺にとっては、絶対に詠唱が必要なだけでもある。


 体の中の魔力が少しずつ移動して、右手に集まり出す。さらに俺は集中して、物質化するものをイメージする。


 手の平からは、集まった魔力が浮かび上がってくると、次第に1つに集まり形を作り出す。最初はラグビーボールみたいに尖った形をしていたが、強くイメージすればするほどに綺麗な球状へと形を変えてゆく。


「出来た」


 目の前に現れたのは、リンゴ程の大きさの球。透明ではあるが薄っすらと青く光るのは、それが俺の魔力の色であるから。俺の着ているチュニックも、俺の魔力を元に精霊がつくりだしたものなのだから、さらに凝縮されれば浅葱色になるのかもしれない。

 しかし、今の俺が作り出せるのは、透明で薄っすらと青く光る程度。まだまだ、十分な魔力を集めることは出来ていない。


「綺麗な色」


 俺の魔法に好奇心をそそられて、再びクオンが影から顔を覗かせる。


「でも込められた魔力は、まだまだだぞ」


 最初から物質化魔法が形となったのだから、上手くいった方ではあるが、一番の問題はそのイメージを継続し続けること。クオンに短く返事をしただけでも魔法の制御は乱れてしまい、綺麗な球の形は歪に変形すると一瞬で壊れてしまう。

 そして、壊れた球は再び魔力に戻ると、俺の体の中へと吸収されてしまう。俺がどれだけ無属性魔法を行使しようとも、魔力は体の中へと吸収されてしまい、自力で魔力を消費することが出来ない。


「でも綺麗な光。暗闇を照らしてくれる」

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