表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/39

第21話 湖の戦い

 ガオウッ!


「少し、心配し過ぎかたもしれないな」


 無警戒で馬鹿騒ぎをしているゴブリンであっても、声を聞き取っているのはクオンだけで、俺には何も聞こえていない。まだ付き合いは浅いが、クオンもスキルも信用している。

 それでも、向かって来ている相手が上位種のゴブリンであるかもしれないと考え出すと、自然と不安は増すしてしまう。知性があり魔法を使うゴブリンは、コハクですら相手にならず縄張りから追い出された。それに、魔法を使う相手とは戦ったとこがない。


 しかし、その不安はコハクが払拭してくれる。コハクもゴブリンの声が聞き取ると、俄然として気合いが入り始める。


(うん、下位種のゴブリンで間違いない)


 俺達の中でゴブリンを一番良く知っているのは、縄張りの森を追われ、怪我を負わされたコハク。ましてや、魔法で怪我を負わされたなら、上位種の声を聞いている。


「コハク、上位種のゴブリンの声は混ざってないんだな?」


 コハクに聞くつもりはないがペット感覚で、ついつい話しかけてしまう。それに、コハクはコクコクと頷き返してくる。ペットと会話が出来るという話は、ただの勘違いした飼い主の戯言だと思っていたが、コハクは俺の言葉を理解してるように見える。


(鼓動の音。運ばれてくのは1人だけ)


 コハクがゴブリンの声を聞き取れるまで距離が縮まってくると、クオンがガチャガチャと金属の鳴る音に混ざって鼓動の音を感じとる。


「まだ、生きてるのか?」


(うん、下品な声もしてる)


 そして、聞こえてきたのは鼓動と、時折漏れる下品な呻き声は、間違いなくソーキの声。お付きのオニには不明だが、呻き声を出せるならば、まだ死にかけてはいない。


「ウィスプ達の準備は?」


(もう準備出来てる)


 相手が最悪の上位種のゴブリンを想定しただけに、少し気が抜けてしまうが、相手が上位種であろうが下位種であろうが、俺達の戦い方に大差はない。


 俺達がゴブリンよりも勝っているのは機動力。湖の中では、俺の膝辺りまで水に浸かっている。それはゴブリン達も同じ条件だが、俺よりも小さなゴブリンにはより動きが制限される。

 しかし、宙に浮かんでいるウィスプ達には、湖は関係ない。さらに、湖に吹く風が味方してくれている。森の中の開けた空間には、強くはないが絶え間なく吹き続ける。

 その風が、葦を揺らし音を立てくれる。小さなウィスプ達は、その葦の揺れと音に紛れて、ゴブリン達の後ろへと移動している。


 下位種である確信があっても、上位種であることを想定し、細心の注意を払ってはいる。でも相変わらず馬鹿騒ぎを続けるゴブリン達は、全く気付いていない。精霊達が逃げ出した森で、まさか雷の精霊に奇襲されるとは思わないだろう。


「そうか、じゃあクオン頼むよ」


(うん、任せて)


 そう言うと、影の中からクオンの気配が消える。クオンがチートなのは聴覚だけじゃない。ウィスプ達の影へと移動したクオンが、作戦開始を告げると再び戻ってくる。音もなく、瞬間移動のようにウィスプ達の影へ行くと、作戦開始の合図を告げる。


 そして、再び俺の影の中に戻ってくると、今度は俺が合図を送る。目の前でお預けを食らっているコハクは気合いが入っている。

 今のところ、森の王者としての風格は一切感じられない。しかし、下位のゴブリンと戦うことで、失った自らの威厳と、俺達の集団の中でも有用であることを証明しようとしている。


 俺の合図で、わざと巨体をくねらせて葦を大きく揺らし、音を出しながらコハクがゴブリンに近づく。流石に油断しきったゴブリン達でも、この異変に気付く。さらに、低く唸るコハクの怒りの声。森で戦ったゴブリンであれば、コハクのことを知っている。再び現れたコハクに気を取られ、ゴブリン達は後ろから忍び寄るウィスプ達に余計に気付けない。


 ウィスプ達から雷が放たれ、バシッと弾ける音が聞こえるが、その音を掻き消すように、コハクが怒りの咆哮を上げると、ゴブリン達に向かって駆け出す。ゴブリン達も音のする方へ向けて、弓に矢をつがえているが遅れた反応と、コハクの跳躍の前では時すでに遅し。コハクは1体のゴブリンの首もとに食らいつくと、そのまま後ろの1体に体当たりする。


 そして、再びウィスプ達から雷が放たれると、立っているゴブリンは2体。数的不利は一気に解消され、こちらが、ゴブリンを包囲している。残りは俺とクオンの出番で、クオンがゴブリンを動きを止め、俺が止めを刺すだけ。


「コハクっ」


 しかし、コハクが俺とゴブリンの間に立ち塞がり、邪魔をしてくる。それは、残りの2体のゴブリンに余裕を与え、十分に引き絞られた弓から矢が放たれる。


 だが、コハクは微動だにせず、矢はコハクの巨体に弾き返される。何の表情の変化も見せず、ゆっくりと歩みを進めると、立ち尽くしているゴブリンに前足を一振りすれば、ゴブリンの体は湖面に落ちることなく消滅してしまう。


(コハクのバカッ!)


 しかし、クオンの反応は違う。慌ててはいないが、少し怒った声を残して、影から気配を消してしまう。もちろん、クオンの行く先はゴブリンの影。


 残ったゴブリンは2体だが、放たれた矢は1本。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ