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第5話

パーティ開始5分前。


私はみっともないくらい会場内をキョロキョロと見回した。

・・・いない。

どうして?


去年のお爺ちゃんの言葉を思い出す。

廣野大吾と言う人が組長で、統矢は跡取り。

ということは、このパーティには組長がくれば事足りているということじゃないか。


私と一緒で、統矢は絶対参加しなくてはいけないという訳じゃない。


それに、統矢は去年、

「初めて来たけど、なんだこのくだんねーパーティは?」

と言っていた。


・・・もしかしたら今年はもう来ないかもしれない・・・


そう思ったとたん、一気に気持ちが沈んだ。

この1年、何のために頑張ったんだろう?

もう統矢とは二度と会えないのかな?


扉をジッと見つめた。

お願い、開いて。

そして、入ってきて、統矢。


でもそんなこと、

ドラマみたいにパッと扉が開いて待ち人が現れるなんてこと、あるはずがない。

あるはずが・・・


そう思って諦めようとした、その時。

まさに扉がパッと開いて、統矢と統矢のお父さんと思われる人が会場に入ってきた。


嘘・・・

夢見たい!!!


実際、統矢はそっと入ってきて、壁伝いに歩いて会場の一番隅に行ったのだけど、

私にはスポットライトでも当たっているように見えた。


それから私はその場に立ち尽くし、

統矢がお父さんと一緒に、簡単に挨拶まわりをしているのを目で追った。


よかった・・・来てくれた。

それだけで、もう涙がでそうだった。


そして、去年のように統矢がテラスに出て行くのを見て、私は慌てて後を追いかけた。


ダメダメ、焦っちゃ。

せっかく大人っぽく、って思って頑張ってきたのに、

ここでいかにも待ってましたとばかりに追いかけたりしちゃあ・・・

落ち着いて、落ち着いて・・・


だけど、私のそんなお芝居は、統矢にあっさりと見破られてしまった。


「・・・愛?久しぶりだな、どうした、そんな慌てて」

「・・・慌ててないわ」

「そうか?走ってきたみたいだぞ?」


ぐっと詰まる。

走ってなんかないわよ!・・・まあ、気持ちだけは100メートル走並に走ってたけど。


「お久しぶりね」

「ああ。びっくりした。大人っぽくなったな、誰かと思ったよ」


もう、その言葉を聞いたときの嬉しさと言ったら・・・!!!!!

頑張ってよかった・・・本当によかった・・・


そっと統矢に近づく。

なんか、少し痩せたのかな?大人っぽくなった気がする。

・・・嫌だな、これ以上差をつけないでよ。

追いつけなくなるじゃない。


でもそんな大人っぽくなった統矢に私はポーッと見とれた。


「どうした?」

「・・・ねえ、ちょっとは綺麗になった?私」

「ああ。綺麗になったと思うよ。てゆーか、去年から愛は綺麗だと思うけど?」


嬉しすぎる・・・

あまりの嬉しさに、私は思わず飛んでもないことを言い出した。


「じゃあ、大人になったら統矢のお嫁さんにして」

「はあ?あははは、いいよ。考えとくよ」


うわ。

物凄く適当。

全然本気にしてもらえてない。

でもここまできたら引き下がれない。


「絶対よ?絶対、真剣に考えてよ?」

「わかった、わかった」

「・・・全然わかってないじゃない」

「わかってるって」

「じゃあ、いつ?いつになったらお嫁さんにしてくれる?」

「大人になったらだろ?」

「じゃあ私が二十歳になったら!」


また統矢が笑った。


「だーめ。俺、今二十歳だけど、二十歳なんてなってみたら、全然子供だぞ」

「いつならいいの?」

「うーん、30歳くらい?」

「遅すぎる!!私、まだ14歳よ?30歳なんて、今までの倍以上生きないとダメじゃない!」

「じゃあ、25」

「遅い!」

「二十歳との間を取って、23で手を打て」

「22」

「・・・二十歳とたいしてかわんねーじゃねーか」

「でも、私が22歳のとき統矢は29歳でしょ?ギリギリ20代同士の夫婦になれるもん」


「なれるもん」って・・・なんて子供っぽい・・・

馬鹿みたい。

でもどうしても統矢のお嫁さんにしてほしい。

ヤクザでもなんでもいい。


「わかったよ、負けた。じゃあ愛が22歳」

「・・・本当にお嫁さんにしてくれるの?」

「だから、考えとくって」

「考えるじゃダメなの!」

「22歳の愛を見て決めるよ。だから女を磨いとけ」

「・・・言ったわね?覚悟しといてよ」

「おお。楽しみだな。期待しとくよ」


そう言って統矢はイジワルそうに笑った。

なによ、全然期待してないじゃない。

絶対に「惚れた」って言わせてみせるんだから!!!


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