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第17話

雨だ。


本降りになりそうだな・・・


そういえば、幸太と初めて会ったときも雨が降っていた。

あの時はまさかこんなに幸太のことを好きになるなんて夢にも思わなかった。


私はリビングの床に座り込み、

雨で冷たくなった窓ガラスに頭を預けた。





3日前。


統矢が私を愛人にした理由を、

その1年間のことを、

話し終えたとき、意外にも幸太は笑顔だった。

しかも、満面の笑み、と言っていいだろう。


「どうして笑ってるのよ?」

「いや、だってさ。愛には悪いんだけど、統矢さんはちゃんと理由があって浮気してたんだってわかって、

安心した。やっぱり統矢さんは統矢さんだ。変わってなかったんだ。

てゆーか、その割り切り方がいかにも統矢さんらしい」

「・・・そうね」


なんだか気が抜けた。


「ねえ、私のことは?」

「愛のこと?」

「嫌な女だと思わないの?」

「なんで?別に思わないけど?もし昔、嫌な女だったとしても、今は違うから俺には関係ないし」


関係ない、って・・・

思わず笑ってしまった。

せっかく覚悟して話したのに・・・全く、もう。


「愛、悪いんだけど、俺、今日は帰るわ」

「え?あ、そうね。その方がいいわ。統矢とちゃんと話してね」

「うん。ありがとう!」


幸太は私をギュッと抱きしめると、すごい勢いで飛び出していった。


その翌日。

前日とは別人のように幸太はニコニコしていた。


「よく考えたら、俺、大学受かったんだよなー。しかもH大!よく頑張ったな、俺!」

「・・・何、自画自賛してるのよ」

「いいだろ、4月からまた司法試験に向けて勉強しないといけないし」

「そうね。昨日は統矢と話せたの?」


幸太が一瞬詰まる。

え?何?


「・・・話せたとゆーか、話せなかったとゆーか・・・そこまでたどり着かなかったとゆーか・・・」

「どういう意味?」

「・・・昨日、統矢さんに謝ろうと思って、統矢さんの部屋行ってさ。

話は聞きました、誤解しててすみませんでした、って言おうと思ったんだけど、

『聞きましたって、誰から聞いたんだ』って言われるに決まってるだろ?」


・・・ああ、物凄く嫌な予感。


「だから、思い切って、先に愛のこと話したんだ。そしたら・・・」

「そしたら?」

「『お前は、組長の元愛人とつきあってるのか!どーゆー神経してるんだ。てゆーか、

それってありなのか?いいのか?』って散々呆れられて馬鹿にされて・・・」

「されて?」

「結局そのまま俺の合格祝いも兼ねて統矢さんと飲んで・・・」

「飲んで?」

「すげー盛り上がったよ、愛の話で」

「・・・」

「色々聞かせてもらえたし」


色々!?何を!?何を話したの、統矢!?

真っ赤になっている私に怯えたのか、幸太が一生懸命弁解する。


「と、とにかく愛のお陰で、久々に統矢さんと楽しめたしさ。ありがとう・・・」


・・・まあ、元はと言えば私がまいた種だ。

これくらいで二人が和解するなら御の字じゃない。

でも・・・統矢は一体、私の何を話したんだろう・・・

ああ、知りたいような、知りたくないような・・・


一人であれか、これか、と悩む私を見て、幸太はお腹を抱えて笑った。





あの日は、本当にホッとしたな。

幸太が廣野組をやめるようなことになったらどうしようって本気で心配したから。

笑い話で終われてよかった。


時計を見る。

午後6時。

今日も幸太は来るって言ってた。


でも・・・

どうしよう。

どんな顔して会えばいいんだろう。


私は両手で両膝を抱え込んだ。

そのとき、ガチャガチャと玄関の鍵を開ける音がした。


「あれ?愛、もう会社終わったの?ビックリした」

「・・・今日は酔っ払ってないのね」

「・・・ごめんって」


昨日の夜、友達と飲みすぎた勢いで私の家に来た幸太は、

散々吐いた挙句、トイレで寝てしまったのだ。

今朝は私のご機嫌取りで必死だった。


「もうあんなことしないって」

「・・・」


あんなこと・・・

あんなことがこれから何回あってもいい。

むしろあってほしい。


「愛?まだ怒ってる?・・・悪かったって」

「違うの」

「え?」


ダメだ・・・幸太の方を見れない。

私は床に視線を落とした。


「愛?」

「・・・妊娠したの」


幸太がハッとするのがわかった。


「・・・俺の子?」


そうならこんなに悩まない。


「今、3ヶ月だって」

「3ヶ月・・・じゃあ・・・」


私は顔を両手で覆った。


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