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第11話

1分ってこんなに長かったっけ?


遅々として進まない時計にイライラした。


11時にお昼ご飯を食べて、私は勝手に早めの午後をスタートさせた。

ほら、もう12時よ。

立派にお昼よ。

すぐに夕方になるわ。


幸太の受験が終わるのは5時頃のはずだ。

・・・まだ5時間もあるじゃない。


一体、何をそんなに試験問題を出す必要があるのよ?

日本史なんてたった4問なんでしょ?

たった4問なのにどうして受験時間が1時間以上もあるのよ?


いっそ平日だったら仕事があって気を紛らわせられたのに、休みだとそうもいかない。

いや、この分だと仕事があったら全く集中できなかっただろうから、休みでよかったのかも・・・


映画でも見に行こうかと思ったけど、これも頭に入りそうにない。


・・・仕方がない。

私は部屋の掃除を始めた。


就職祝いにお爺ちゃんが買ってくれたかなりお高めの2LDKのマンション。

同じく就職祝いでお父さんが買ってくれた車を止めてある駐車場代だけで、

普通の賃貸マンションが駐車場付きで借りられて、お釣りもくる。


そんなところに社会人1年目のOLが一人暮らし。

目立つこと、目立つこと。


どうせ「どっかのお偉いさんの愛人」って目で見られているんだろう。

まあ、あながち間違ってないし。



キッチン、リビング、お風呂、トイレ・・・と順番に掃除し、

最後に寝室を掃除する。


時計をみると、3時。

まだ後2時間。

いや、試験が終わったからと言って、すぐに会えるわけじゃない。

ってことは、後3時間くらいは・・・

いっそお隣さんの家も全部掃除してあげたい。



もちろんそういう訳にもいかず、これまた仕方なく買い物に出かける。

でもデパートまで行く気にもならない。

近くのスーパーで食材を買おう。

料理はあんまりしないから、買う物もないけど。


パン、卵、牛乳、バター、コーヒー、後はハムと・・・お酒。あ、おつまみも。


うわ、「寂しいOL代表」って感じの買い物だ。


家に帰り、買ってきたものを冷蔵庫に入れ、テレビを点ける。


・・・4時。

まだ先は長い。


今から何をしよう。

幸太は今頃最後の科目をやってるんだろうな。

頑張って。

終わったら早く会いたいよ。


そうだ!

大学まで迎えに行こう!

そうしたらすぐに会えるじゃない!


23歳の女の行動じゃない、っていうか、かなり変な女だと自覚しながらも、

急いで着替えて、化粧も直して駐車場に向かう。


いいじゃない!

この2日間我慢してたんだから!


大学についたのは5時少し前だった。

小さな大学で、お客様用の駐車場もないため、路駐だ。

大学の前で路駐って目立つかな、と思ったけど、

我が子の帰りを待っているらしい親の車で大学前の通りは路駐天国。

堂々とその仲間に入れてもらう。


5時半を過ぎたころ、開放感と一種の虚無感を顔に浮かべた受験生達が一斉に出てきた。

バラバラと車に向かったり駅に向かったりする。


私はドキドキしながら受験生が来る方向を見た。

すると、どこから来たのか、突然幸太が私の目の前に現れた。


「愛のことだから、来てくれてると思った」


そう言って、ニコッと笑った。



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