ばあちゃん故に幼女-やりたい事ー
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
ランクインしている事に驚き、2度見しました。
ホントにありがとうございます。
とても嬉しいです。
誤字脱字の報告もありがとうございます。
憂鬱な朝が来た。地獄のような朝が…
”コンコン”
「失礼します。お嬢様おはようございます。」
メイドのカーラが暖かい手ぬぐいを渡してきた。
「…………おはよう。カーラ」
受け取りながらチラリと彼女を見る。
十代ぐらいじゃなかろうか?なんだかねぇ~……
受け取った手ぬぐいで寝ぼけた顔をフキフキして、彼女に返した。
受け取った彼女は頭を下げ静かに退室する。
”バタン”
「何なんだろうね。あの妙に冷めた感じは?!まだ十代なんだろ?人生楽しまなきゃ損よ~」
彼女を見ると、ついつい前世の孫やひ孫を思い出す。
「私もせっかく若返ったんだ。孫たちを見て羨ましいなぁと思った事やりたいね♪」
だって、私マジで若返ったから!
歳のせいで、出来なかった事いろいろあったはず!
それにひ孫が、今の状態でする事があると言ってた様な…
なんだったかな?頭を捻って考える。
意味もなく目を細め、あさっての方角を見て考える。
ウ~~ン……確か………
「異世界…トーチ?だっけ??そう…ポッと明るくする様に!坂本龍馬の異世界の夜明けだぜよ。!!」
なんてったって、私は若返りを手に入れたのだから♪
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「お嬢様せめてスープは飲むように………」
「フィル、そんなしかめ面で食事をしたら美味しくないわ」
「すべてフォークのみで終わらせようとしない。どうして幼児退行したのだ!」
………ハ~、うるさいねぇ、まずい食事がさらにまずくなる。
「フィル、食事中にため息をついてはいけないよ」
………みんな私を監視しているのか?!
私は食事のまずさに辟易していた。
だって使われた野菜がシナシナだから、他には茹ですぎ、焼きすぎ………
そんなの見るとなんだかイラっとするのだ。
なんでシナシナ野菜をサラダに使ってるの………
ここまで茹でたら、栄養ないし歯触りも悪くなる。
なにより肉!香辛料で子供にはきつい。
それに焼き過ぎで、硬くて噛んでも噛んでも喉に通せない。
それに、全体的に塩辛いし、高血圧で病気になるよ。
「フィル、手が止まっているよ。早く食べないと家庭教師が来てしまうよ。」
は~、ホントにどうしたもんかね~………
「フィル、聞いているのか!食事中にため息をしない!!」
しかしホントうるさいね~…………
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私自身の話をすると、前世は日本という所に住んでいた。
そして今いるこの世界はその日本の前に住んでいた所、ついでに時間もまったく同じ。
つまり、舞い戻りってヤツだった。
フフッ……幸せだったらよかったのよ。
でもあいにくの地獄の日々なクソ人生。
ふざけんじゃね~…………怒り狂ったのは間違いない。
恨んだわ。神なんかクソだって、心底恨み倒したわよ。
でも、ありがたいことに気がついたら一番回避したいことが回避できていた。
それは王子との婚約。
コレのせいで最悪だった。
また地獄のような日々が始まるのか?!
でも父が断ったそうだ。
私は父の英断に、感謝感激雨あられ状態だったけど………
回避できた理由が、行儀の悪さだった。
だから、今何かある毎に煩く言われているわけだ。
でも…
”ホント箸がほしいな”
自分の欲求は募る訳で(日本と同じ様に暮らしたい)
”箸の使い易さを知っていると、どうしても面倒くさくなる。”
人間楽な方に行きたくなる。
【郷に入っては郷に従え】
って言うけれど………
【言うは易く行うは難し】
気持ちの整理はできそうにない。ホントとにかく面倒くさい。
【彼方を立てれば此方はたたず】
昔の人はよく言ったね~。
全くその通りだ。
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今の私は、まあ可愛い可愛い女の子だ。歳の頃は5歳である。
一番可愛い盛りの子だが、前前世のこの頃のワタシを私は覚えていない。
どうも王宮の思い出が強烈過ぎて、また家族との交流が希薄過ぎたのだろう。
「参ったねぇ。家族の中でもギチギチだった?」
つまり、「どうしよう」と、途方に暮れているのである。
「今世ではいろいろやりたい事目白押しなんだけど、これじゃ全く出来そうにない」
身動きし難い=見張りすぎ+警戒すぎ+信じなさすぎ
どうやら「神なんてクソだ!!の径」で、私は何かに憑りつかれた?!扱いになっているらしい。
身体は5歳だが、その中身は100歳過ぎまで生きたばあちゃんだ。
だから、どうしたって歪になるのも仕方がない。
変に誤魔化したって誤魔化せる訳もなく、もういいや~♪で素のまま行動をした結果、どん詰まりしての今の状態だった。
ホント困ったね。どうしようかなぁ。なんかいい方法ないかな。
そう言いながら、ベットの上でゴロゴロと転がっている。
今日はザマス夫人というふざけた名の家庭教師ならぬマナー教師が来るらしい。
だから本来この状態はダメなのだろうけど………
やろうと思えばできるのよ私!
前前世では血反吐吐くほどやったんだもの。
鏡の前に行き、ウンショ♪としてみれば、見事なカテーシーが鑑っている。
「でも絶対しない……」
変にできて婚約するハメになったら嫌だもの。
あんな王宮の真似事なんてしたくない。
だから撃退する気満々に今か今かと待ちわびる。
ゴロゴロしながら…………
******************
どうやらザマスは急用で私の所に来れなくなったらしい。
という事は時間ができたという事だ。
「それなら庭に出て運動しよう。幼女が外遊びしないなんて、怪我をし易い身体になっちまう。」
子供は外で遊ぶのが一番いい。
庭は綺麗に整えられて、あちらこちらに花が咲き乱れている。
「景色がいいね~。これが自宅なんだから驚きだよ。」
そう考えると、前前世はホント損をしていた様だ。
だってこんな庭知らない。今初めて知った。
「私ホント王宮以外何も知らないのね」
前前世の自分を凄く哀れに思った。
テクテクと庭の小道を歩いてく。
涼しい風が吹いて来て、なんとも言えない解放感。
「ハア~……空気がおいしい~♪」
空気を思う存分堪能しながら、奥に続いている小道を歩く。
いったいどこまで続いているのだろう……
「そういえば、箸にちょうどいい小枝を探してみよう」
小道を外れ木が生えている方に向かって歩き出した。
「へ~、なかなかいい所じゃない♪」
ちょうど登って良さそうな木と、直ぐ脇には池がある。
せっかくだから池のまわりを、覗き込んでグル~ッと歩く。
どうやら一番深い所は、今の身長くらいある。
「いいね~♪いいね~♪」
更にもう一度周辺を歩く。何匹か魚がいるようだ。
「魚釣りができるじゃないか♪」
ニンマリと笑顔になる。
今度お弁当を持って釣りをしよう。今から楽しみだ♪
さてさて、小枝を探さなければならない。
そのまま使う訳にも行かないし、誰かに加工をお願いしないといけない。
「よく考えたら使用人の名前も知らない。家族もよくわからない。ホントずっと勉強に追われていたのね。寂しいヤツだよ……ワタシは」
昔のワタシが哀しそうに泣いている姿が頭に浮かんで消えて行く。
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【ー書斎ではー】
「マナーが完璧?」
今日フィルにマナーを教えて貰うはずのザマストラット夫人が、早々伝えたい事があると言う。
なので、書斎に来て貰い内容を確認すれば、実に不可解な事だった。
伝えたい事と言われた時、余りの行儀の悪さに断りの話かと思ったのだが…………
「はい。先程お嬢様のお部屋へ伺いましたら、まあベッドの上でゴロゴロとされていらっしゃいましたわ」
「それは大変申し訳ない!」
やはり行儀が悪いじゃないか!自分の頬が暑くなるのがわかる。
「いえ、あれくらいのお子様ですもの。よくあることですわ」
クスクス笑った優し気な目を見て、そのまま言葉を受け取っていい事がわかった。
「そうなのですか?私には判断つかず、以前に比べ余りにも奇想天外な行動をするようになったので不安だったのです」
「とても元気でいい事ですわ。本来子供はそういう者です。大丈夫ですわ。実際、私が見たフィラメント様はゴロゴロと転がって楽しそうにしているお姿と、鏡の前で優雅でとても美しいカーテシーをされたお姿です。ただ私がいるとは知らずにいらっしゃいますがフフフ…」
「フィルが…………」
余りの驚きに腰が抜けそうになった。
「まあまあそのように驚かれてはフィラメント様に失礼ですわ。多分何かお考えがあるのです。お歳の割にしっかりとした印象を見受けました。聞く事も大事かと愚考いたしますわ。」
ザマストラット夫人は慈愛に満ちた目で優しく言われた。
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”今日はどういう事だろうね……”
何故かとても静かだった。
キョロキョロと見ながら食べる私。
食べ方はおろそかになり、フォークだけを使い、フォークを口に加えたままボーとしたりと、かなりな事をしているのだが、誰も注意してこない。
”これはこれで不気味だ……”
そう思い、モソモソと俯いてチビチビと食べて言った。
その後、父親から書斎に来るように呼ばれる。
部屋に入ると、両親と兄そして執事が待っていた。
”いよいよなんだろうね。”
場の雰囲気もなぜか緊張した空気だ。
なんとなく謝った方がよさそうな気持ちになるのは何故だろう…………
「フィル…………」
「はい!!」
父親の声に過剰反応をして思わず返事する。
「フィル怖がらなくていいよ。僕の隣にお座り」
兄が私の手を取りソファーへ誘導し、私が座った横に座る。
執事がそれを確認すると、流れる様にお茶を入れ渡された。
”あ、美味しい”
少し蜂蜜の入ったハーブティーに心が和む。
それを見て皆もお茶を飲み始めた。
四半時たった頃だろうか父親が私を見た。
”あ、何か言われる”
思わず身構え私。
そんな私に横から兄が優しく頭を撫でた。
「フィル、お前に話す事がある」
私に確認するように目を見て話す父。
皆もそんな私達を見ている。
「お前に婚約の打診があった事を以前話したな?」
”ゲッ、なんでまたその話が……”
「実はまた打診があったのだ。それでお前に聞きたい事がある。」
だが私は茫然自失状態だった。
そんな私の様子に兄が心配そうに…
「フィルどうした?大丈夫か?!」
兄が私を揺さぶる。
母も心配して私の額や頬に手を当てる。
しかし私はパニック状態に陥っていた。
母と兄はそれを見て、父に首を振って伝えた。
父もそれを確認し静かに頷いた。
兄は私を抱き抱え、静かに部屋を出て行った。。
******************
「はぁ~………(*´Д`)」
朝から私は憂鬱である。
回避できたと思ってたのに、敵はなかなかしつこかったらしい。
しかしむかっぱらが立つ!
「だ・か・ら・さ…私じゃなくて側室だったヤツと婚約すりゃいいじゃん!!」
可笑しくないか?!
「実際ラブラブだったんだし、「ホントは私が王妃だったのにィ~」って言ってたじゃない!!」
なんでこんな嫌がってるヤツに話来るかな!
ん?………待てよ?!
「そうだよ。……そうだよね!なあ~んだ簡単じゃない!!!」
このどん詰まりな状態も、しつこい婚約も!
「そして、第二の目的家族との交流!すべてパーフェクト♪」
下に降りると食堂に皆がいた。
私に気がつくと皆ポカーンと見ている。
ん??なんだ?どうした???
ジッと見られ、私はビクビクして………
「「「なんて格好でいるの(んだ)!!!」」」
あ、しまった着替え損なった。
昨日からダメだね。
恐慌状態だわ……
******************
「つまり、今のフィルは100以上生きたばあちゃんが中にいるって事?」
と兄が言うのでそうそうと頷いた。
兄の指差した指は垂れた。
「フフッまあそうしたらワタシよりも年寄りなのね」
母は朗らかな顔で言っている。
母は、”~ごっご遊び”と勘違いしている。
父は先程がらゴンゴンと額を叩いていた。結構強くね?
それなのに執事はいつも通り静かに父の傍に控えていた。
「えっと、それでなんでそんな話になるのかな??」
兄は兄なりに話を進めようとしている。
他の皆は停滞ぎみなのに。
「婚約したくないから」
だから私は判り易い様に簡潔に答えた。
「まあ!そうね。おばあちゃんだから5歳の子は孫だものね。」
母は手を叩いて、どこまで行っても遊びを付き合っているのだろう。
でもある意味それも正解だ。
「昨日はあの後もフィルをすごく心配したのに……」
「ありがとう。ついでに抱っこしてくれて。」
「どういたしまして。で、それでおしまい?」
「違う。この後が本番……私にはあと30年程の記憶があるフィラメントとしての記憶が」
真剣な目で皆を見回して言った。
皆何言ってんだ コイツ??
って顔をしていたけど、私が真剣な顔のままでいたので、私を見つめ直した。
だから…………
血反吐吐くほど練習した、何度となく称賛された優美なカーテシーを私はして見せた。
さずがの執事も今回ばかりは驚いたみたい。
フフ……どうよ!
なんだか誇らしく思えた。
******************
あれから婚約してどうなったのか、王妃時代はどうだったのか、フィラメントの生涯を話して聴かせた。
母は泣いた。声をあげて泣いていた。
淑女の鑑のような母が心の中から叫びを上げる様に泣いていた。
父は頭を抱えて号泣していた。
微かに聴こえる「すまない…」「すまない…」という呟きが、私の魂を癒していく。
兄は怒りに震えていた。
でもそのまま私を抱きしめて「凄いな」「よく頑張ったな」と褒めてくれた。
それは私にとってとても嬉しい事だった。
そして、執事も怒りを抑える様に目を瞑り歯を食い縛っていた。
落ち着きを取り戻した頃、執事が静かにお茶の準備をしている。
そしてどうして話そうと決めたか理由を伝える事にした。
婚約してから周囲の者らが何と言っていたかを……
自分もそれぐらいできる。
誰でも代わりになる者はいる。
意地汚くその地位にしがみついて滑稽だ。
いつもネチネチチクチクと、鳥のさえずりのように言っていた。
「だから思ったの。そんなにしつこく言うなら、やりたい人がやれば良いじゃないって!」
「まあそうね!そんなにやりたい人がいるんですもの。それでいいと思うわ!!」
「そうだな。こっちは別にやりたくないもんな」
「それじゃあ、今度王宮で側室達に婚約の話を持っていこう。」
「そうね。どうせ側室達とラブラブなんでしょ(笑)」
「俺達親切だよな。それだけやる気があるし複数だ♪教育だってあっという間だろ(笑)」
「そうそう(笑)」
「フフフ…こっちはこっちで楽しめそうだわ(笑)」
「よかった。だって私のんびりもしたいけど、やりたい事もたくさんあるんだもの♪」
「まあまあフィルちゃんがやりたい事ってなあに?お手伝いするわ」
「フフフ一番は家族の交流なんだ。」
「フィルちゃん……」
「だって……私知らないの」
「なにを??」
「家族の名前を…………」
「「「……………………」」」
「だから、家族の一員として、これからどうぞよろしくお願いします。」
私は最高な笑顔を作って頭を下げた。
母と父は私を抱きしめて、兄はほほ笑んで頷いた。
「「もちろん(よ)」」
と言って、両親は泣き笑いのような顔でさらにギュっと私を抱きしめた。
兄はそんな私達を見て、嬉しそうに笑った。
執事のロバートが父オスバルドにお酒を、それ以外に紅茶を渡す。
母マリアナはオスバルドに角砂糖の乗ったスプーンを見せた。
オスバルドは眉を上げおどけた様な表情で、少しの酒をそれにかける。
マリアナはほほ笑んでソレを紅茶にソッと入れた。
「フィル異世界の話をしてくれる?」
そんな一連の動作を見ていた私に兄クリスティオは聞いた。
「そうだな。どんな世界なんだ?」
「フェルちゃんの人生も教えて欲しいわ」
それを聞いてたオスバルドとマリアナも楽しそうに聞いてくる。
「しかも100年も生きるなんて凄いな。フィルは!」
クリスティオはとても楽しそうだ。
「まあいろいろあったけど楽しくも穏やかな人生だよ。」
私は遠い目をして懐かしみながらほほ笑んだ。
「そう、次の来世は素敵な人生だったのね。」
そう言うとマリアナは、涙を僅かに浮かべ嬉し気に微笑む。
そんな二人をオスバルドは酒を飲みながら見つめている。
家族皆に異世界日本での私の人生を話しながら、その日は穏やかに暮れていった。
******************
新しい朝が来た。希望の朝が……
”コンコン”
「失礼します。お嬢様おはようございます。」
メイドのカーラが暖かい手ぬぐいを渡してきた。
「…………おはよう。カーラ」
受け取りながらチラリと彼女を見る。
相変わらずだねぇ~……
受け取った手ぬぐいを、寝ぼけた顔にフキフキして、彼女に返した。
受け取った彼女は、頭を下げ静かに退室する。
”バタン”
「ヤレヤレ……とにかく、すべていい感じに収まったんじゃないのかい」
ニヤリと笑いがこみ上げる。
第二の目的 家族の交流
「フフフ…嬉しいね~」
心の中はホカホカと暖かくなっていく。
食堂に行けば皆出かけた後だった。
”ア、アレッ?家族の交流は?!”
席に着くとカーラが食卓に並べる。
そしてロバートが来て、他の者は退室させた。
つまりロバートと二人で部屋にいる。
「おはようございますお嬢様。本日旦那様達は婚約できない様にする為いらっしゃいません。」
どうやら早々に動き出したようだ。
「つまり、お嬢様の奇行を広めるということにございます。」
「うん、大丈夫お願いします。」
ホッとした顔をして
「それではお嬢様本日の料理です。お嬢様の素直な感想を聞かせて下さい」
そう言って優し気な目をしたロバート。
”私できればロバートがいいかも……結婚相手。”
そんな事思ってるとも知らず孫を見るような目で見る執事ロバートだった。
******************
数日後、王子の婚約者が決まった。
一番やる気に満ちた側室に……
「フィル良かったね。」
ニコニコしているクリス。
一番の願いが本当の意味で叶ったのだ。
「ありがとう。すっごく嬉しい!!」
横で小躍りする私。しかも盆踊りである。
「フフフ楽しそうで嬉しいわ♪」
マリアナも楽しそうに笑う。
オスバルドは逆に少し考えこんでいる。何故だ??
「フィル今度内定した子は、教育ちゃんとするのか?」
それを聞いて”イヤ無理じゃねっ”と思った。
とにかく言うだけ言っておしまいな奴だった。(責任感がないとも言う。)
人の上げ足取るの好き。楽するの好き。誤魔化すの得意。
私の意地の悪い微笑みで状況判断が出来た様だ。
「フィル、本当は隣で見てみたいと思ってるよね。」
「うん、ついでにこんなこともできないの~♪簡単だよ~♪っていうのをしてみたいw」
「そんなフィルも可愛い!!」
ギュっと抱っこされた。今世クリスは妹LOVE。
「もう一つ決定的な奇行をした方がいいかもしれんな」
オスバルドは私に目を合わせ静かに言った。
私は一瞬考えた後、最大の奇行”短く髪を切る”を実行に移した。
******************
「ここはさらに空気がうま~い♪」
私は今領地にいる。病気療養の為だ。
異世界帰りの私にとっては大した事じゃなくても、こっちじゃ大した事になる。
マリアナに話をした時もギョッとしたが、笑ってオッケーしてくれた。
ホント柔軟で暖かい母親だと思う。
私が若かったらしたかった事がある。そして前前世でもやりたかった事。
その一つがおしゃれ。
私が花も盛りの頃は、ちょうど第二次世界大戦の時だった。
雨ならぬ爆弾が降ってくる時代だ。
暢気におしゃれなんかできるはずもない。
せいぜいモンペの破けたとこに可愛いあて布する程度。
戦後が終わって普通にオシャレを楽しめる頃はもう40近かった。
私は凄く憧れた女性達がいた。
ツィギー・オードリーヘップバーン・ブリジットバルドー・マリリンモンロー
若かったらしたかった事、それは彼女たちを真似したファッション!
マリアナも話を聞いて、目をキラキラさせながら手伝ってくれるそうだ。
なので、バッサリ髪を切りました。項まる見え(笑)
意外に器用なクリスが、私の言うがままに上手にチョキチョキ切ってくれました。
ツィギースタイル難しいって聞いていたけど……
兄はもしかしてカリスマ美容師になれる人?!
母マリアナの視線が熱いです。
「お洋服も合わせたいよね」
マリアナは鼻息荒くやる気に満ちていた。
ここ領地は王都から離れている。
だから、誰の目も気にせずやりたかった事をやっていこう。
前世の様にのんびりとね♪
フフフなんだか楽しくなりそうだ!!!
読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)