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風に吹かれて異世界へ

「手品の授業をやるぞ」


 そんな授業はありません先生、と心の中では思ったけど、クラスの大部分の生徒が乗り気だったので空気をよんで黙ってました。でも今心から思ってます、


「先生有難う!先生のおかげでなんとか生きていく事が出来てます!!」




 初めまして、私の名前は遠藤初子です。日本では普通の女子高生でしたが、今では公爵様の後妻に納まってます。なりたくてなったわけではないのですが、まぁ色々とありまして・・・


 事の起こりは高校2年の冬、あれは初雪が降った日の午後でした。部活帰り空腹で家路を急いでいたら突風が吹いたので反射的に目を閉じ、風が過ぎ去ったので目を開けたらあら吃驚見知らぬ場所にいたのです。まるでオ〇の魔法使いみたいなどと現実逃避していたら、周囲でガチャガチャという金属音と悲鳴が聞こえました。


 お約束的に勇者や救世主、神子や結婚相手として召喚されたとかではありません。なので突然お城に現れた私は不審者扱いです。人畜無害な自分と人権問題を必死に訴えてなんとか即効斬り捨てられるルートは回避しましたが(牢屋には入れられましたが)まだまだ立場は不安定。ちなみに言葉は通じました、不思議ですね。


 それから幾度も王様と(檻に入れられた状態で泣)日本での自分の立場や法律、捕虜を扱う時に守らなければならない事(ジュ〇ーブ条約)を若干自分に都合の良いように解釈し身振り手振りを交え時には泣き落としテクニックも使いつつ話し合いを重ねました。


 小学生の時引っ込み思案だった自分を無理矢理クラス委員に任命し強制的に人前で話す機会を与えてくれた先生、あの頃は本当に恨んでいたけど今はちょっと感謝です。あれだけの人数の前で(王様の後ろには常に護衛がずらっと、もちろん私の横にも監視役が張り付いてました泣)臆せず堂々と演説出来たのは、命が掛かっていたのが大きいけど先生の荒療治のおかげも若干はあると思います。


 とにかくなんとか最低限の人権を保障させる事に成功し、議題は異世界でどう生活していくかという問題に移りました。正直、大それた身分は全く望んでいませんでした、ただの女子高生なので。とにかく生きていく為に必要な最低限の賃金が頂ければそれで良いと考えていたし、王様にもそう話しました。


 しかしいくら王様が最低限の人権を保障したとはいえどこの誰とも分からない不審者である私を野放しにするなんてけしからん、という意見があったんでしょうね・・・というか面と向かって大臣っぽい人にそう怒鳴られましてね、王様は謙虚で殊勝な私に絆されてくれそうだったのに、そいつのせいで何故か公爵夫人なんて大層な御身分を無理矢理あてがわれてしまいました。


 私の配偶者になる予定の公爵様は王様の親戚だそうです、かなり前の王様の末っ子が爵位を与えられて臣籍に下ったその子孫とか。前の奥様との間には5人の子宝に恵まれたけど末っ子のお産が原因で奥様は亡くなられ、その奥様が実は王様の従姉で、その縁で割と良好な関係の公爵様の再婚問題を王様は心配していたとか。


 そこに大臣(この世界での正式な役職は難しいので割愛)の訴えがあり渡りに船とばかりに王様は監視役という名目で私を後妻とする事にしたそうです。初対面の時激しい拒否ではないけど命令なので仕方が無いという雰囲気がぷんぷんしてましたよ、そりゃそうですよね大恋愛(王宮侍女さん達の噂話より)の果てに奥様と結婚して子宝に恵まれたけど死に別れ、残りの人生を彼女の残してくれた子供達と静かに生きていこうとしていたのに突然何処の馬の骨とも分からない私と結婚しろだなんてさ、私が公爵様の立場だったとしたら拒否して領地に引き籠っちゃいます。


 でもお世話してくれた王妃様付きの侍女さん(同じくらいの年の娘がおり同情的)が内緒話として教えてくれた話では、王様の思いとしては自分に対して臆せずはっきり物申す私に配偶者と死別し抜け殻のようになっていた公爵様を少しでも前向きに変えて欲しいという願望があったらしいです・・・私、本質的には内気で地味なので正直荷が重いんですけど。


 でも本当の事は言えず、そして自分の立場的に強い後ろ盾は必要だろうという打算もあり、結婚する事にしました。別に好きな人がいたわけではないし結婚に夢見るような性格でもないし・・・とかなんとか自分を誤魔化しつつドキドキしながら公爵様の領地に入って迎えた初夜・・・何も無かったです。


 公爵様にはすでに後継ぎがいらっしゃるし愛が無いのに義務で寝室を共にするのは御免だったので、その旨をはっきり公爵様に訴えたらあっさりOKされました、勇気出して言ってみて良かった。公爵様は若い頃に結婚されたので5人の子持ちといえどまだ30歳前、もしかしたら愛の無い行為を強要されるかもと危惧していたけど、前奥様が亡くなられてからそういう欲求は一切無くなってしまったそうです。


 そんな自分に嫁がされる若い娘が気の毒だと思って素っ気ない態度になっていた、と聞いて割と低かった公爵様の好感度がアップしました。他に選択肢が無かったとはいえ結婚相手がこの人で良かったです。この時は本当にそう思いました。


 それから3年が経ち、同居人として公爵様とは良好な関係を築けていると自負してます。お子様方とも最初はいきなり現れた後妻という事で少しの・・・いやかなりの悪戯(そんな可愛い物ではない)をされましたが、今ではある事がきっかけですっかり仲良くなりました。なので思い出す度に怒髪天を衝く悪戯の話は今は省略します。



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