からだ泥棒
こんな話があったら面白そうだなーと思って書いてみましたが連載する余裕がないので短編で投稿してみました。
物語のプロローグ的な感じです。
間違えてジャンルが異世界(恋愛)になってましたが恋愛要素ゼロです…
現在、修正済みです。すみません。
『やむにやまれぬ事情がある。協力しろ』
協力を願うにしてはずいぶんと上から目線な言葉だった。ついでに言えば、願ってすらいなかった。命令でもなかった。その言葉を耳にしたと思ったら、そいつと私のからだが入れ替わっていた。
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「どうしてこうなった…」
現在、私は獣の姿である。本当にどうしてこうなった。いや、理由は明確でこの獣、聖獣と呼ばれる神の遣いでそれはまぁお偉いケモノサマのせいだ。契約している人間の呼び出しに応じて戦い、まさかの重傷。お偉いケモノサマがなぜ召喚獣。主人である神(雷の神らしい)が何でか召喚獣になることを許可したらしい。なぜ許可した。神々は数多の世界を行き来することができるし、各世界で様々な名で呼ばれ崇められている。つまり忙しいはずだ…。
もう一度言う。なぜ許可した。
一方、私は魔術師。色々あってとある神に興味をもたれ、異界渡りをしてしまったがためにちょっと普通の魔術師ではなくなってしまった。そのとある神の余計なお節介で故郷の世界と渡った先の世界を行き来できるようになってしまい、普通の人間とはちょっと違う。かといって神々やその眷属ともちょっと違う中途半端な存在になってしまった。
で、話を戻して。いま私の体となっているこのケモノサマの見た目は虎。でも大きさは普通の虎の1.5倍。神の遣いなんだから怪我なんかしないと思いきや
、召喚獣として人間の世界に現れればこういうこと(重傷)もあるらしい。元々はとても強いのでおそらく油断もあると思われる。だからこそ、召喚主には重傷であることを隠したい、と。無駄に高いプライドだな。やむにやまれぬ事情とはプライドだ。やむにやまれないでしょ。そんなこんなで私がケモノサマの体に移らされ(?)、ケモノサマは私の体を乗っ取り今日も元気に召喚に応じていった。いや、ケモノサマ虎じゃん。私は人。見た目変わった状態で召喚に応じてどうするのか。ケモノサマ本来の力は私の体では耐えられないから制限をかけてもらっているので、はっきり言って召喚獣としてのレベルは激しく低い。なのになぜ。
そんな不満を抱きつつも所詮は中途半端な存在なために拒否権はない。のでケモノサマの姿でケモノサマの治療中。ケモノサマはね、ケモノサマだから攻撃には特化してるけどこういった治療系は全然ダメっぽい。私は元々治療系と防御系の魔術に特化してるので。攻撃はからっきしだけどね。
ケモノサマに体を持っていかれている間、とりあえず私の家で治療をしている。
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人間の体ではない、さらに言えば普通の動物の体でもないので治療が難しい。自然治癒力も無いらしいので治療しなければ弱る一方って攻撃特化型として結構致命的。本来は神の遣いなので、主神がその辺をカバーするらしい。
今日で最初の入れ替わりから一週間。入れ替わってるとき以外も常に私の家に虎がいる状態。私の家は森の奥深くにあり、この森は一度入ると二度と出られない不吉な場所だとされているから人が来ないのが不幸中の幸いかな。じゃなかったらとっくに討伐隊みたいなのが組まれてそう。神の遣いだけどパッと見、虎だし。しかもめちゃでかい。 ちゃんと見れば聖獣だってわかるけど。
「もうほぼ治療は終わりましたよ? そろそろ貴方の神の元へ一度お戻りになられては?」
『別に戻らなくとも構わぬ。あるじは離れていても我を把握しておられる』
……それはとても嫌だ。監視ではないか。
『お前こそ、一度おのれのあるじに顔を見せてはどうだ』
「私のあるじって誰のことですか? あのお方の事を言っているのであればあるじではありませんよ。言い方は悪いですが一方的に執着されているだけです。だからこそ人間なのに中途半端な立ち位置になっているんですよ」
ケモノサマは私の言い草に何とも言えない表情を浮かべた。虎の表情って思ったより豊かね。ちなみにあのお方とは、私に興味を持った挙げ句にしつこく執着して異界渡りさせやがったとある神の事です。いい迷惑。会いたくない。
「私のことは置いといて。貴方は聖獣ですから、基本的に主神の神力がすべての源ですよね? 私の力は魔力からくるものなので完治は難しいのですよ。傷はもう8割治ってきて目立たないので一度戻って神力を巡らせるべきです。おそらくそれで完治しますよ」
『…ふむ。それも一理あるな。確かに、あるじのもとを離れてしばらく経つ。流石に我が体も無理があるか…』
聖獣は食事をしない。神の使役獣は神のもつ力がすべて。神とともに生き、神が朽ちる時にともに朽ちる。このケモノサマは一週間まるまる主神から離れているので、すなわち一週間断食しているようなもの。しかもその間に何度か召喚されてるから力ばっかり消費(ある意味消費してるのは私の魔力だけど)して、その分を補えてないから本当にそろそろケモノサマの存在が危うくなってると思うんだよね。
『よし、では我は一度あるじのもとへ戻るとしよう。世話になったな。達者でな』
軽い挨拶を残してケモノサマは森へ消えていった。器用にドアを開けて、でかい体をうまいことねじ込んで出ていった。この一週間、家を壊されるんじゃないかとヒヤヒヤしていたのでホッとする。ようやく落ち着く我が家に戻る。よし、ひと息つこう。美味しい茶葉があったはず。
座っていた一人掛けソファから立ち上がるとケモノサマの毛が舞った。徹底的に掃除もしようと心に誓う。
キッチンへ向かおうと足を一歩踏み出した途端──
【我が呼びかけに応え給え】
「!?」
聞いたことのない男の声が頭に響く。それと同時に足元に広がる魔法陣。
「っ! これは、召喚の魔法じ──」
言い切る前に体が沈む。真っ暗闇で何も見えない場所で、水の中にいるようななんとも言えない奇妙な感覚とともに体が引きずられていく。
これってもしかしなくても…さっきのはケモノサマの契約主の声じゃない? え、どういうこと? なんで私が召喚されるの?
めっちゃ困る。あのケモノサマどうしてくれよう。
突然の浮遊感。内臓が引っ張られるような不快感に目をつぶる。それの瞬間に顔に感じる暴風と砂埃。
状況を把握をしなければ。
でもそれよりも。
「あのクソ虎…絶対に許さない…」
私を人前に引っ張り出したあの虎に報復しなければならない。絶対に。
自分の好きな要素を詰め込んだのでいつか連載したいです。
虎と私(ほのぼの?日常コメディ)
とある神様と私(主従関係?コメディ)
虎の召喚主と私(恋愛になっていくかな?)
虎の主神と虎と私(ほのぼの系?)
となんとなく関係性を考えてます…