第一話 二度目の人生は平凡に(前編)
リアルが多忙の為、投稿が遅れましたすみません
少し不思議な夢を見た、――夢の中の私は此処ではない別の世界で暮らしていた。友人にも恵まれ楽しく学生生活を送っていた、平凡な日常ではあるが生活環境に不満はなかった。
ある日の事である――私は不慮の事故で死んでしまった。これは、私の見た夢の一部である。そして――私の欠けていた記憶の一部分だった。
先程見た夢には続きがあるのだが、どうにも思い出せない。不完全な状態ではあるが、ある程度記憶が戻っただけでも良しとしよう。
「それで……ここは何処?」
辺りを見渡すと木々が生い茂る森だった。私はこの森を脱出するべく、歩き出すことにした。しばらく、歩いた所で何者かの気配を感じ歩みを止めた。
「【気配探知】」土地勘のない森を迂闊に動くのは危険と判断し、私は周囲の気配を探知する。反応があるのは、モンスターが数体と微弱な反応しかない冒険者らしき存在だ。
『グルルルッ!!』
目の前に現れたのは、大型の熊のようなモンスターだった。縄張りを荒らされたと勘違いしてこちらに襲い掛かってきた。
「仕方ないなぁ……追い払うか【ロックブラスト】」
丸腰の状態で戦うのは危険な為、魔法で威嚇することにした。石の飛礫は熊のモンスターの脇を掠めていった。
これに驚いた熊のモンスターは、一目散に逃げ出していった。再び【気配探知】を使用したが、先程と違いモンスターの反応は無くなっていた。
一先の安全を確保した私は再び歩き出した。三十分程歩いた所で、重傷を負っている冒険者らしき人物が横たわっていた。
「あの……大丈夫ですか?」
「うぅ……」
これは酷いなぁ……よく見ると全身の肉がズタズタに裂けて所々骨が出ていた、出血量も多いのでこのまま放っていたら死んでしまう。
「よしっ!ダメ元だけどやってみよう【ヒール】」
成功率は五分五分といったところだけど【ヒール】をかけてみた。すると、傷口は何事もなかったように元に戻った。
「うぅ……ってアレ?生きてる……」
「あのー痛い所はありますか?」
「特にないな、キミが治してくれたのか?」
軽装の冒険者らしき若い男の人は、私にそう問い掛ける。
「はい、私が治しました」
「そうか、ありがとう!キミは命の恩人だ。出来る範囲でお礼をさせて欲しい」
「近くの街まで案内して下さい」
「そんな事でいいのかい?」
いつまでも森の中にいるのは危険な為、近くの街までの案内して欲しいと言った。
獣道をかき分けてしばらく歩くと整備された道が見えた。
「この道を北に歩くと『フェーン』って言う街があるんだけど、そこまで案内するよ」
「ありがとうございます。お兄さん」
「オレの事はロイって呼んでくれ」
「はい、ロイさん。私の事はフィアナと呼んでください」
「よしっ、じゃあ街に行こうかフィアナ」
私はロイさんと共に森を抜け街を目指した。その道中で、私の腹から『グゥ~』と言う音が鳴り出した。
「もしかして、お腹すいたの?」
「……」
無言で頷くしか出来なかった。
私は自分の腹から鳴り出した情けない音が恥ずかしくなり顔が朱に染まりだす。
「これからご飯食べに行くんだけど、一緒に行かない?」
「あの……私、お金持っていないです」
「オレがご馳走するから、気にしなくていいよ」
私は持ち合わせが全く無いため、ロイさんの誘いを一旦は断ったのだが、ロイさんの厚意を無下にする訳にはいかず、とりあえず食事を共にすることなった。
私はロイさんと共に冒険者ギルド内に併設されたバルに到着した。冒険者ギルド内は昼間だと言うのに多くの冒険者で賑わっていた。
「おいおい、ここはガキが来るとこじゃねーぞ!」
私は昼間から飲んだくれている太った冒険者に絡まれた。
「そうだ、ルースの言う通りだ。嬢ちゃんは大人しく帰った方が身のためだ」
太った冒険者と一緒に酒盛りをしていた、長身痩躯の冒険者も私みたいな子供が、冒険者ギルドに来るのが気にいらないようだった。
食事を終えた、私は先程絡まれた冒険者の所へと向かい、周囲の人々が驚愕する行動にでた。
「おいっ、クソガキ!何の真似だこれは?」
私はコップに入っていた水をルースと呼ばれていた冒険者に振りかけた、激昂したルースは私の元に詰め寄った。
「何の真似って、私は貴方が気にいらないだけです」
一触即発の事態になりかねない程に、私とルースは
険悪な状態だった。
「おいおい、嬢ちゃん。早くルースに謝った方がいいぞ」
近くに居た冒険者達が、口を揃えて謝った方がと警告する。だが、私は子供扱いされたのが気に食わなかったので、謝罪をする気は全くなかった。
「皆さん、何を騒いでいるんですか?」
この騒ぎを聞き付けたギルド職員が私達の元へやって来た。
「また、酔って他の冒険者に絡みましたね?ルースさん」
「いや、待ってくれ!俺は何もしてねぇ、絡んできたのはそこにいる銀髪のガキだ!」
ルースは常日頃から、酒に酔って冒険者によく絡んでいるようだ。今回の騒動はルースの絡み酒も原因ではあるが、私にも非があった。
「あの、お騒がせしてすみません」
自分の軽率な行動のせいで、乱闘騒ぎになりかけた事を反省した私はギルド職員に謝罪した。
「何で子供がギルドに居るんです?」
「すみません、オレが連れて来ました」
「あぁ、誰かと思えばいつもクエストを失敗しているロイさんじゃないですか?また、失敗したんですか?」
私は再び子供扱いされたが、込み上げてくる怒りを堪えてロイさんとギルド職員の会話に聞き耳をたてた。
「この子のおかげで、何とか成功しました」
「いつも失敗ばかりのアナタがですか?俄には信じられませんね」
先程、ロイが森の中に居たのはクエストの最中だったらしい。
「アナタ、見ず知らずの子供に協力してもらったのですか?」
「結果的にはそう言う事になります」
「アナタ、やはり冒険者には向いていないようですね」
ロイとギルド職員の一連のやり取りをフィアナは隅のほうで聞いていた。
「フィアナ、話しがあるんだけどちょっといいかな?」
「何ですか?」
ギルド職員とのやり取りを終えた、ロイは意を決した表情でフィアナを呼びかけた。
「ロイさん、まさか――」
「オレ、冒険者を引退するよ。君のおかげで最後のクエストを成功する事が出来た……本当にありがとう」
冒険者稼業は一期一会の出合いが非常に多いと言う事を私は知った。ロイさんは私にお礼を述べると冒険者ギルドを後にした。
その後、私は自分の今後について長考していた。冒険者になるつもりはないが、流石に無一文のままと言う訳にはいかない。気が進まなないが受付へと歩を進める事にした。
「すみません、冒険者登録お願いします」
「冒険者登録ですね。分かりました」
先程の眼鏡を掛けた根暗そうな職員とは違う職員が受付を担当した。
(このお姉さん、凄く綺麗だなぁ)
私は内心そう思いつつ、冒険者登録の手続きを始める。
「最初に自分の名前と年齢を記入して下さいね」
「はい、分かりました」
私は手渡された書類に自分の氏名と年齢を記入する事にした。
名前 フィアナ・アーシュライト 年齢 十五歳
私は書類に氏名と年齢を記入し受付に提出した。
「名前は、フィアナ・アーシュライトさんですね。年齢は……えっ?十五歳!?」
何か問題があったのだろうか?職員は驚きを隠しきれないようだった。
「フィアナさん、こちらへ来ていただけますか?」
「はい?何か問題があったんですか?」
「フィアナさんは本当に十五歳ですか?」
「疑っているんですか?本当に十五歳ですよ」
「い、いえ……疑っている訳ではありませんが……」
私はこの時、自分自身の見た目が十五歳に見えない程幼い姿だとは知るはずも無かった。
その後、何とか冒険者登録を済ませた私は冒険者ギルドを後にした。
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