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果無き亡神  作者: 枝垂桜
第一章 孤独な英雄と白き砂漠
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第二話 『人間』

 地上へ出た男は魔道具アーティファクト能源エネルギーを流し込む。


 空間転移の立体魔法陣が組み込まれた黒結晶は、この不毛の世界とは違う別世界へ使用者を飛ばすモノだ。


 だが、そうすると疑問は残る


 何故『彼女』がこんな面倒なことをしたのか疑問が残ったが、何の理由もなくそんなことをする者でもない。


 もう一つの疑問は、『彼女』が男を迎えに来れないことだ。

 あの性格を考えれば、どんなことを投げ出してでも迎えに来るはずだ。


 しかし現に来ていないことを鑑みれば、何かしら来れない理由があるのだろう。

 そうならば考えられ状況はいくつもあるが、その中で最も最悪なのが、『彼女』自身が斃んでいると言う状況だ。


 しかし、その可能性はあまり考えられない。


『彼女』は、理論上最高峰に位置する存在だ。

 そう容易く斃ぼせる存在なまずいない。


 かつて、『全能者の片鱗』とまで呼ばれた『絶対神』だ。

 それこそ、『全能者』でもない限り倒すことは不可能だ。


 しかしそんな『彼女』とて全能ではないため、絶対とは言えない。

 その上、この考えは最悪の一言に尽きるだろう。


 何故なら現在、男は全盛期の一割もの力もない。

 いざ戦闘となれば間違いなく勝てない。


 しかし考えていても仕方ないと思い、手に取った魔道具アーティファクトを発動した。


 すると、目に映る空間が一瞬歪み、全く別の光景が目の前に映し出された。


 それにしても、この転移先がどこに繋がっているかもわからない。

 そのことに多少なりの不満はあるものの、『彼女』の性格を考えれば無駄足になることはないだろう。


 光が収まり、男は改めて周りを見渡す。

 既に索敵は終わらせている。

 いきなり襲われてはかなわない。


 それでも細かい地形などはまだ把握していなかった。


「ふむ、瘴気が濃いな……」


 並の生き物では生きていけないほどの瘴気が漂う。

 まるで核戦争の時、世界中に充満した放射能のようにーー


 しかし、悲しきかな。

 あの核攻撃は弱者を淘汰し、『上位者』を絞り出したに過ぎなかった。


 そう、生存競争を次の段階ランクに移行しただけだったのだ。

 走馬灯のように流れ込んでくる記憶を意図的に遮り、男は無造作に歩き出した。


 砂の上をゆっくりと進む。

 目の前に広がる、砂に埋れかけた廃墟を目指してーー











 廃墟に辿り着いはいいものの、当然人の気配など一切ない。


 建物の間を進み、気になる所を確認していく。

『彼女』を探すに当たって、今持ち合わせる情報が少な過ぎる。

 しかも、こんな何も無いところに送られてはーー


 恐らく『彼女』自身、男を蘇生する空間を作ったとき、未来の自分がどうなるか分からなかったのだろう。

 だから曖昧なモノになっしまったといったことだ。


 故に、欠けている情報は自分で集めなければならない。

 しかしこんな状況では何の情報も得られそうになかった。


 場所を移すしかないか、と考えて周りを見渡す。


 そう考えを巡らせながらある程度の散策を済ませた。


 ーーやはり、ここでは何も分かりそうにない……。


 場所を移動しようとしたその直後、足元の地面が震えていることに気がついた。


 ーー何だ……?


 徐々に大きくなる揺れ。それはまるで巨大な何かが近づいて来るようにーー


 直後、凄まじ轟音と砂埃を立ち上げて、横道からソレは姿を見せる。


 人間の様々な部位が無造作に、無秩序につなぎ合わされたかの様な肉の塊。

 口も無いのに声が聞こえる。それはまるで無数の赤子が泣き叫ぶ様な声の中に混ざる金切り音。


 そんな悍ましい肉塊から生える触手、とも言えない様な人の腕が絡み合うだけの長く太いモノを、男へ叩きつけた。


「ぐっ……!」


 辛うじて刀での防御は間に合ったが、圧倒的な体重差によって強く吹き飛ばされた。


 吹き飛ばされた男の身体は近くにあったビルの壁を突き破り、中の置き物を巻き込むことでどうにか止まる。


 幸い、身体強化の魔法のおかげで大したダメージは受けていないが、精神的な衝撃は相当なモノだった。


 ーー何だアレは……?


 身体の上に乗っている瓦礫をどかして、起き上がると同時にビルが大きく揺れる。

 恐らくあの怪物が男を追ってこの廃墟に突進したのだろう。


 何度も身体を叩きつけるように揺れるビルを見て男の心にいやな予感がよぎる。


 ーーマズイな……。


 あんなデカブツの攻撃を受ければ、こんな廃墟ではそう長く無い内に崩れるだろう。

 そう予感すれば、すぐさま出口目指して駆け出した。


 すぐに出口は見えてきたが、そこに着くよりも先に建物の耐久値が底を尽きたようだ。

 けたたましい音ともに、天井が落ち始めた。


 降り注ぐ瓦礫を躱し、時には刀で払い、出口から飛び出す。と、同時に背後ではビルが完全に崩れていた。


 ーー運が良かった……。


 あと一歩遅ければ生き埋め状態だっただろう。

 だが、息をつく暇もなく危険は次々と男へ襲い掛かる。


 外へ飛び出すと同時に上から降り注ぐ質量の塊。

 前後左右へ跳んで避けるも、追い討ちをかける肉塊の攻撃に足を取られた。


 体制が崩れる中で、視界の端に映る触手。

 それが超高速でしなり、空気を切る音をたてて男へ迫り来る。


「……っ!」


 強引に足へ力を入れて体制を戻し、刀を振るう。

 黒い一閃が腕の絡み合う触手を切り飛ばした。


 瓦礫が降り注ぐ中、刀を振り絞る。

 それは刺突の構えーー


 刀の周囲で黒く細い線が白い光を放つ。

 ゆっくりと動き出したその細線が螺旋を描けば、刀を取り巻くように高速回転し始めた。

 能源エネルギーが収縮し、破壊をその内に閉じ込める。


 そして、放たれたーー


 逆巻く螺旋の刺突が巨大な肉塊の八割以上の体積を消し飛ばす。

 それでも余りある破壊の余波が、大通りを通り抜け、左右に建ち並ぶ巨大な建造物を吹き飛ばした。


 肉体の大半を失って尚、その巨大な肉塊は蠢いている。

 重たくなった肉体を引きずって移動するそれに、男は無表情のまま黒炎を引火した。

 白い光が周囲を照らす。


 身が朽ちていくのを感じて、一際大きな金切り音の混ざる悲鳴を上げると、肉塊は黒き灰となって崩れ落ちる。


 それを見届けると、男は今度こそ踵を返して歩き出そうとした時……その進路へ立ち塞がるように現れた数体の肉塊。


 ーーまったく、面倒な……。


 さしもの男とて、この状態に内心悪態をつく。

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