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外よりマシとはいえ熱がこもったリビングで私たちはあーでもないこうでもないと話をしていた。
母からは「早く帰ってきなさい」とメッセージがきていることは確認したものの、なんとなく足が動かずここに残っている形になっている。
いや、私から彼が離れないよう確認できてからでないと帰れない。とはいえ、全部私次第だと片付けてしまうのがなんとももやるところだ。
「さっきのって本当? 私といたいってやつ」
「まあな、ま、仮に相手が他の女子でも同じようなことを言うんだろうけど」
最低、デリカシーがない。今は私とだけいるんだから「希空だから」だって言っておけばいい。
「ストラップをお揃いにした理由は?」
「ただ気に入ったからだよ、別にお前とお揃いにしたいとか考えてない」
必ずこちらのテンションを下げる言葉を入れないと駄目なのだろうか。
「それよりそろそろ帰れよ」
「やだ、だってこのままにしたらどっか行っちゃいそうだもん」
自分で起こしてしまったことだから気になるんだ。
あの日、海や他の場所に行けなくて残念だった。
だけどあの可愛いストラップをプレゼントされた時点で嬉しかったんだ。
でも、よく分からない気持ちが出てきて、なんとなく一緒にいたくなくてお礼も言えず追い出すような感じになってしまっ――違うか、初めての気持ちと戦うために時間がほしくなったんだ。
なんでかは説明できない。けれど、
「好き」
ここでもしそう言ったら健生くんはどういう反応を見せるだろう。
「ばっ、お前なに言ってっ」
こんな感じを反応を見せるかな? ……あれ?
「お、お前、だから最近は冷たかったのか? 俺が楓華とかといたから」
「え、あれ、もしかして口に出してた?」
「お、おう」
それならしょうがない、だって口に出しちゃったのなら仕方がない。
「ふふ、まあ嘘じゃないよこれは」
「……本気か?」
「うん、なんでか分からないけど健生くんのこと好きになっちゃった」
「へ、へぇ……希空が俺のことを好き……」
漠然とした好きではあるけど、私にとっては初めてのことだ。
「なあ、俺の一緒にいたい気持ちってそれだと思うか?」
「分からないならもっと仲良くしてみればいいんだよ。そうすれば明確に分かるようになる、そうでしょ?」
「そうかもな、ならそうするか。うだうだ考えずこのまま真っ直ぐに」
「うん」
別に彼女彼氏とかって縛りはいらない。
でも、気づいてみせるし、健生くんの口から好きだという言葉を引き出したい。
「さ、送ってやるから帰れ」
「ううん、今日は泊まるー」
「別にいいけどさ」
だから1秒も無駄にしたくない。
変なところでウザい人間にならないよう気をつけながらこうして生活していこうと、私は決めたのだった。