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第1話
ぼやけた視界はどうやら下に向けられているようだった。倒れこむ速さに合わせて白いコンクリートは近づき、細かい凹凸が分かる程になった。重力に抗うことは出来ず、すんでのところで顔だけ横に反らして倒れ込んだ。ばしゃりと水のはねる音が鳴る。
身体を反転させて仰向けになり反射的に瞑っていた目を再び開くと、きれいな青空が映っていた。太陽は身体の真上から悠然と見下ろしてくる。日差しが強く照りつけるため右手で両目を覆った。
両目を焼き尽くさんとするまばゆい光を避けるように視線をほんのわずかに動かすと、透き通った青空に真っ白な雲が漂っている。
地面を背に右手をいっぱいに広げて雲をつかむように高く掲げる。
しばらくそのまま広げていたが、やがて人差し指を残し全ての指は閉じられ、青空を指さした。天に向けられた指は動くことなく、再び時間だけが流れる。
右腕は脱力したように落下し、左右の目は眠りにつくようにゆっくりと閉じられた。