拝啓、自転車泥棒様
『実を言うと、その女の名前が本名だったのか、定かではない。』
僕はそう書き出し、あの人のことを思い出しながら綴ることにした。
岡隼人(おかはやと)は大学入学と同時に一人暮らしを始めるが、3カ月の間に2台目の自転車を盗まれてしまう。
怒った彼は、自分の自転車が狙われているのではないかと冗談ながら考える。そこで自転車に張り紙をすることにした。”自転車泥棒様 私の自転車を盗まないで下さい。困ります。”ビビりな彼が悩んだ末書いたのはそんな文面だった。
そうして自転車泥棒との奇妙な文通が始まった。
”だってまだ、今は恋愛をしているんじゃない。きっとこれは――呪いなんだ。自分でもトモミさんのどこを好きなのか分からないのだから。それでも好きとしか言いようがない。だから、これは呪いだ。”
素直になれない。
目の前の相手を見ているようで、見えていない。見つめているのは、自分ばかりだ。
こんなの、恋愛小説なんかじゃない。
じゃあ、何なの?
僕はそう書き出し、あの人のことを思い出しながら綴ることにした。
岡隼人(おかはやと)は大学入学と同時に一人暮らしを始めるが、3カ月の間に2台目の自転車を盗まれてしまう。
怒った彼は、自分の自転車が狙われているのではないかと冗談ながら考える。そこで自転車に張り紙をすることにした。”自転車泥棒様 私の自転車を盗まないで下さい。困ります。”ビビりな彼が悩んだ末書いたのはそんな文面だった。
そうして自転車泥棒との奇妙な文通が始まった。
”だってまだ、今は恋愛をしているんじゃない。きっとこれは――呪いなんだ。自分でもトモミさんのどこを好きなのか分からないのだから。それでも好きとしか言いようがない。だから、これは呪いだ。”
素直になれない。
目の前の相手を見ているようで、見えていない。見つめているのは、自分ばかりだ。
こんなの、恋愛小説なんかじゃない。
じゃあ、何なの?