ドォルト編8
「ハアアアアアアア〜〜〜〜〜〜〜〜」
頭痛が痛い。クソデカ溜息しか出ん。でもまあ神って存在はこんなもんなのか。等取り留めもなく考えつつ天を仰ぐレン。
「つーことはアレだろ、俺と旅したい〜なんて言って、その反抗期息子をなんとかしてくれってやつだろ」
「あっ、バレたぁ?」
「誰でも分かるわクソ」
隠す気無かっただろ。これは不都合な真実とやらじゃ無いんかクソ。文句は湧くが口にするのも面倒。
「実際そんなの俺がどうこうできるわけ?」
「ん〜多分、レンなら大丈夫ぅ!」
「は?根拠は?」
「だってレンだからぁ!」
「舐めてんのかテメェ」
「いやほんとに!まあ大丈夫だって!」
「まあ、しょうがねえか……」
短い付き合いだがなんとなく分かってきた。こういう時は何を言っても有耶無耶にされるし何を聞いても無駄だろう、と。レン自身、かなり楽観的な考え方をしているのでさっさと切り替える。
「まあお前にまともな対応を求めるだけ無駄だもんな」
「ひどぉい!」
「はい。で、なんの話してたっけ。ああ、勇者か。んで侵略者がどうこうだったか。今はその心配はしなくていいわけ?」
「んー、まあ心配いらないというか、レンがいれば魔王級も楽勝だもん、そんなの心配する必要無いでしょぉ?」
「ああはいはい。ん?魔王級?ってことは侵略者って団体さん?」
「そうそう、それで基本的に魔力量で脅威度を判定してるみたいだねぇ。魔王級は勇者じゃないと無理みたいなんだってぇ。」
「もしかしてさっきテロって脳内変換されたのもそれか?」
「テロって言ってたぁ?じゃあ平和軍は侵略者への抵抗が主任務だからそれだねぇ」
侵略者はありがちだが魔族と呼称されているらしく、強さ別に一般級、幹部級、魔王級と分かれている。一度の侵略で魔王級が何体も送られてくる事は珍しくないらしい。大変なことだ。
「まあなんにせよ、とりあえずは大災害を何とかするっきゃないわな〜」
「そうだねぇ、あ、ケーキ食べていい?」
「いいよ、俺もケーキ食べよーっと。話聞いてたら甘いもん欲しくなった」
へーネスはショートケーキを、レンは苺タルトと名物だというザッハトルテを美味しく頂いた。
「美味しかったねぇ〜」
「ねー。けどアンタ名物食べなくて良かったの?めっちゃ美味しかったよ?」
「初めてのケーキはショートケーキにするって決めてたんだぁ。ここでもショートケーキは定番みたいなとこあるからぁ」
「明らか日本感無いのにショートケーキが定番って」
食べ終わりコーヒーを飲みつつさてどうするかと悩む。何せ健吾とソフィアの準備が整うまで暇なのである。
「そういえばこの国の名物とか名所とかなんか無いの?」
「ん〜、とぉ。名所ってなるとぉ、やっぱり美術館あたりかなぁ?あ、名物ならチョコレートだよぉ!ザッハトルテもシエルの名物として有名なんだけど、チョコレートが絶品だから生まれたんだよぉ」
「なるほどな。よし、一番美味い店のを買い込むぞ」
「えっ!?」
「世界各地を廻るんだろ?じゃあその土地で一番美味しいものいつでも食べられるようにしなきゃ。俺いくらでも持てるんだし」
「レン、君最高ぉ?てか結構ノリ気ぃ?」
「うっさいわボケ」
二人はいそいそとタブレットで有名店や高評価のお店を探す事にした。
「あ、お姉さんザッハトルテとアイスコーヒーおかわり」
「あ、僕もザッハトルテお願ぁい」
「やっぱ食べるんかい」