ドォルト編3
地の文の書き方とへーネスの語尾ちょっと変えました。前回までのは気が向いた時に直します。
「んで、どこで魔法の練習すんの?」
「教会の軍の訓練場ですよ」
ドォルトユミト教会平和軍。この世界の性質上、教会に軍がある。主に大規模なテロに各国の軍と協力したりするらしい。国連みたいな感じなんかな。つか異世界にもテロあるんだな。
「まあどこも似たようなものなんでしょうねえ」
とは教皇さんの言。
「今の時間は勇者様方もいらっしゃいますし、事情説明も含めて顔合わせもしましょうか」
「俺が対応するってさっき決まったばっかだもんね。てか、『様方』って勇者って一人じゃないの?」
「召喚が必要な事態の大きさによって人数が変わってきますね。今回は5人でした」
勇者召喚自体は珍しくないそう。数十年に一度の頻度とか。
「そういうのって大丈夫なの?なんかこう、戻れないとか、元の世界との折り合いとか」
「大丈夫ですよ、ドォルト様は絶対に問題にならないように調整してくださってます」
「ドォルトは真面目だからねぇ〜」
召喚されたは良いけど戻れないとかは無いのか。羨ましい。
「アンタはとんでもねえクソだけどな」
「やだぁそんなこと言わないでよぉ〜」
喋っている間にそれらしい場所が見えてきた。宮殿の裏手から続く通路を通り、通用口にペルソナを翳して潜り抜けると、端が見えない程長い壁に囲まれた訓練場に出た。歴史を感じさせる大聖堂や宮殿と、通路以降の現代的なシンプルな造りのギャップがミスマッチ過ぎる。
そして、広大な土地には市街地戦を想定した施設が立ち並んでいた。
「ファンタジーから急にSFになった気分」
「機密保持の観点からもどうしてもこうなってしまいましたからね」
俺たちは右手側に壁沿いに進み続けると、一際大きな窓が無い建物が見えた。高さは七階建て相当、奥行きはここからではよく分からない程だ。
「こちらは基礎訓練用の建物です。自己修復する建材で造られており、魔法防御の結界が張ってあるんですよ」
「見た目シンプルなのにすげえ」
どうやらここまでに見た施設や建物は全て自己修復する建材だとか。完全に実戦訓練用だな。
訓練場の内部はかなりシンプルだ。入り口から右手側に区画分けされたスペースが並んでいる。通路に面した側には壁が無く、結界のみが張られているらしい。身内で見られちゃまずい事はできないようにしてる為との事。そして左手側にはエレベーターが点在している。
基礎訓練場は三階層からなり、一階がジム、二、三階が模擬戦用の区画になっていた。
「今は、3-7で訓練しているみたいですね」
ということなので、俺達は3-7に向かった。
ガギィン!!ギィン!!ドガン!!ギィーーーン!!!!!
「うわぁ、激しいなー」
「ええ〜そうかい〜?」
模擬戦っていうからスポーツみたいなもんかな、って考えてたけど、そういや大陸の蒸発を防ごうとしてるのにそんなわけが無かった。傍目には殺し合いをしているようにしか見えない。素人目にはよく分からないが、剣技の応酬に容赦ない魔法の攻撃が止まらない。ただ、何故かその様子をハッキリ目で捉えられるのが不思議だが。
「皆様、ご紹介したい方がおります」
激しい模擬戦を物ともせずに教皇さんが区画に入る。ボーッとしてる訳にもいかないので俺も続く。
その瞬間、五対五のパーティー戦をしていた十人の目が一斉にこちらを向く。
「猊下!!このような所までご足労下さりありがとうございます。もしやその方は……」
「ええ、神託にございました御方です。へーメス様と使徒様のレン様です」
ふと、視線の中に異様な気配がした。その気配を辿ってみると、歳は俺と同じくらいの黒髪の男が目玉が飛び出そうな程俺を凝視している。
―――なんか、覚えがある気持ち悪さだな……。
と考えていると、ソイツが喘ぐように呟く。
「レン様……?まさか、いや本当に、本物のレン様……?」
本物の?もしやコイツ
「もしかして、アンタ日本人?」
その反応は劇的だった。
「アアッ!!!!レン様だ!!!!本物の!!!!本物のレン様だアアアアアアアァァァッッッッ!!!!!!!」