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嘘を埋める白  作者: 沢蟹エト
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江藤稀帆

「…ほ……ん。きほ…ゃん。」

誰かが私を呼んでいる。とても穏やかでお母さんみたいな声。ずっとこのままでいたい。が、残念ながら微睡む時間は終わりだ。どうやら6限が終わったらしい。

「稀帆ちゃん。6限終わったよ。どうする?帰る?」

私を呼ぶ声の主は、御堂さくら先生。保健室の先生だ。

「気分は晴れないけど、受験生なので勉強して帰りますね。へへっ。」

「無理に笑わなくていいから。時間あるなら話聞くよ?話してく?」

どうやら私のいろんな不安で満たされた心はお見通しのようだ。このまま勉強してもぼーっとして終わるだろうと思って少し話していこうと決めた。


「ねぇ、ちょっとだけ…お願い。」

いやだ…早くここから出たい。解放して欲しい。

「早く脱いで。」

抵抗する間もなく服を脱がされる。目の前の男は自分の荒れ狂うそれを私の体にあてがう。やめて。やめてくれ。そしてまもなく下腹部に激痛が走る。痛い。私は涙目で抵抗するが、努力虚しく自分の無力さを感じるだけだった。気持ち悪い。痛い。いやだ。やめて。いやだいやだいやだいやだいやだいやだ。


「稀帆ちゃん!大丈夫?」

はっと我に戻る。私は冷や汗をかき、酷く震え、とても思考できる状態ではなかった。落ち着け。負けてはいけない。そう気持ちを落ち着けながらソファから起き上がる。

「思い出しちゃった?ごめんね。無理しなくていいんだよ。今日はこれくらいで辞めておこうか。」

「はい…。」

心的外傷後ストレス障害。通称PTSD。私は檜川和斗という同じ学年の男子から性被害を被り、様々な症状に悩まされているのだ。今もいわゆるフラッシュバックというもの。被害の記憶が鮮明に蘇る。恐ろしい程に増長されて。


「それじゃあ何かあったらまた来てね。何も無くても。」

「ははっ。分かりました。いつもありがとうございます。」

そう言い残し保健室を後にする。足早に自習室へ向かう。テンポの早い足音が放課後の廊下に響き渡っていた。


稀帆と御堂先生の関係を書いてみました。稀帆は御堂先生のことを信頼し、御堂先生は稀帆のことをどの生徒よりも気にかけています。それは稀帆が特別だからじゃない、普通の子だからこそ、抱えるものが多すぎてはち切れてしまうのではないかと心配してるからなんですね。

そんな2人の関係はどうなっていくのか。楽しみです。

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