6のやさしさ
寒さも少しずつ消えて
着ているコートも脱いでもいい季節になる頃
ボクは仕事帰りの電車の中
いつもながら帰宅ラッシュでもあり
かなり 混み合っている
その中 ボクは座ることができた
この時間で座ることができるなんて
奇跡的なことだ
何かいいことがありそうだな
六人がけのロングシートの座席
ボクはハジから二番目に座ることができた
降りるまで あと30分 先はまだ長い
イヤホンを耳に当て 少し仮眠でも取ろうか
ボクはウトウトしていた頃
途中から、杖をついた おばあちゃんが乗って来た
当然 ボクは譲ろうと 席を立った時
「どうぞ」
あれ?
六人がけのロングシートに座っていた
お客さん全員が ボクと同じことを考えていたようだ
ボクも含めて六人全員 立って 席を譲ろうとした
「あらま!」
おばあちゃんは少しばかり 戸惑いを隠せない
そのあと おばあちゃんは真ん中に座り
「ありがとうね」
ボクも含め残った五人のお客さんは
また席に座り 少しばかりの苦笑い
ちょっと暖かい空気になった
春はすぐそこまで 来ているんだね
おばあちゃん ビックリさせてごめんなさい
電車内の小さな偶然
座っていた六人のお客さんが
まさか同じ行動するなんて
マナーが悪い客が多いと言われる中
まだまだ 日本も捨てたものではないと
思った今日この頃




