ドキドキ球技大会
オリエンテーションの2日目が始まった。
グラウンドで男子サッカー、体育館では女子バスケが行われる。どちらの試合も時間をずらした開催になっているので、男女とも同じ組の応援にいく事が可能だった。
まず、最初の相手は賢吾の居る2組との男子サッカーだ。昨夜の賢吾の態度が1組の男女にひどく不評だったため、あんな奴には負けないとみんなの意気も高い。
ルールは15分ハーフの11人制のサッカーで、タッチラインで入れ替われば交代の人数や回数は自由、怪我や体調不良で無い限り必ず一度は出場するという事だった。
「おい、たつや、どういう作戦で行くよ?」
太田君から声がかかる。
「なに?俺が考えるの?」
「そりゃあそうだろ、お前サッカーの経験者だし、お前が売られた勝負だろ。」
「うーん、分かったよ。やってみる。みんなも本当にいいかな?」
「おう!」「もちろん」「やろうぜ」
了承を得たので作戦を考える。ディフェンスの経験者がいたので、俺が真ん中に入って中央のラインを作る。あとは背の高い奴をキーパーに、ガタイがいい奴をディフェンダーに並べる、あとは陸上やってた間壁君をフォワードにし、ボールを追って走って貰うことにした。
「よっしゃぁ、やるぜー」
2組のキックオフで試合スタート
試合は以外にも白熱したものになった。
まずは1組が太田のヘディングシュートで先制すれば、2組もこぼれ玉を押し込み同点で前半終了。
そして後半へ
「へぃ、竜也パース」
呼ばれて、つい半分無意識に出したパスが、キレイに通る。
しかしパスの相手は2組の佐伯だった。
そのまま簡単にゴール隅に決められて1-2
「ナイスアシスト~」
佐伯から声がかかる。
「こら~、なに相手にパス出してんだ~」
太田君をはじめ男子にぎゃぁぎゃぁ言われる。
「竜也〜何やってるの〜2組に負けるなんて許さないわよ~」
福山さんが吼えている。
「みんな悪りぃ。」
これは、自分で取り戻さないとダメだ。気持ち前目のポジショニングを取る。
数回の攻防の後、良いポジションで相手のパスをカットした。そのまま左サイドの空いたスペースに長いボール、間壁君なら足が速くて追いつくだろうと考えて中央やや左からマークを振り切ってペナルティエリアに侵入する。
そして折り返しのボールが帰ってくる、思ったよりキーパーに近いが十分間に合うと思い走りこむ。が、ボールが弱かった。キーパーが飛び出してくる。ワンテンポ早くシュートを打つつもりで左足でのシュートに切り替えるが、相手のキーパーは右足で打つものと思い込んでいたようだ、このままの勢いじゃキーパーに蹴りを入れてしまう。とっさに避けようとしてシュートのタイミングが狂う。カーン。打ったボールはポストに当たって跳ね返る。外した… が間壁君がそのまま走りこんでいた。一瞬早く相手DFより早く足に当てゴール!!
ピッピッピー
直後に試合終了のホイッスルが鳴る。
ふと視線を感じて振り返ると、賢吾が厳しい表情でこっちをみていた。
俺を騙してゴールしたのに嬉しそうじゃないんだな。
「みうには聞いていたけど、本当に天然ボケなのね~馬鹿なの?相手にパスするか~ふつう。でも最後は、惜しかったね~キーパーに躊躇しないで打てば、そのまま入ったんじゃないの?」
「間壁君!!ナイスシュート、よく走りこんでたね。」
体育館の方に視線を移すと、みうが、ふぃっと顔を背ける姿が視界に入った。
さて、体育館で女子バスケだ。クラスの男子はみんな楽しみにしていた。
ところが試合開始前にひと悶着が、スポーツ用車イスが有るのを見つけたまゆみが「私もバスケやりたい~」と言い出したのだ。
「私も参加したいーーー」
近くに居た先生に話すが許可できないと言われた。
接触の無いスポーツなら良いが、バスケの場合は相手も自分も怪我をする可能性が高いので、絶対にダメとのこと。
「昨日言ってたことと違うじゃないですかー」
しつこく食い下がる真由美に折れて、車イスの調整と空いているコートで 遊んでいいとの許可を貰った。太田君、間壁君、俺と控えの女子数名で真由美にパスしたりして遊んでいた。
もともとセンスの良い子なんだろう、少しの間にどんどん反応が良くなるのには驚いた。
そういえば、みうに勝った事があるって言ってたっけ。
「ちょっと、交代して~」
「代わって~」
時々試合をしている女子から声がかかってメンバーが交代した。残りの男子は熱心に応援をしながら、試合をみている。
「おおー!!!!!!!!!!」
どよめく男子、見るとみうがシュートを決めて着地する所だった。
バシッ ボールが顔に飛んできた。
「いてっ」
「こらっ、見とれるんじゃな~い。」
そのまま1点差で2組の勝ちとなった。
賢吾は、クラスの女子におめでとー 勝ったねーと声をかけているが、みうには特に何も言わずに去っていった。