プロローグ
そうあれは、小学校5年生の終業式の日
僕は、教室を出ようとしていた彼女に声をかけ、勇気を振り絞って近所の公園に呼び出した。
春の公園は、暖かな日差しが差し込みキラキラしていた。
「さとみちゃん、僕、君のことが好きです。」
「どうか付き合ってください。お願いします。」
初めての告白。
それは、まだ短い人生で一番の勇気と思いを込めた告白だった。
けれども、彼女の答えは、
「ごめんなさい。私、竜也君とは付き合えません。」
ずっと、仲良くしていた。
お互いに好きだと思っていた。
なぜ?どうして?僕のことが嫌いなの?
様々な想いが頭の中を駆け巡る。
「たっくんなら大丈夫、上手くいくって~。」
元気に明るく送り出してくれた幼馴染の言葉を思い出す。
あの嘘つき、上手くいくって言ったじゃないか?
応援してくれた幼馴染に対して心の中で悪態をつく。
自分じゃない、誰かのせいにしたかった。
八つ当たりだと分かっていたけど、さとみちゃんのせいにもしたくなかった。
「たっくん、みうちゃんと仲良くね。」
今にも泣きだしそうな表情を浮かべ、弱々しく漏らした彼女の最後の言葉はほとんど耳に入らなかった。
小さく手を振ってから、坂道をゆっくりと下って行く。彼女の長い髪がゆれる姿を見えなくなるまで見送った。
それが永い別れになるとは知らなかった。