依頼シートと御見積書
4話目どーん。
風邪気味かなー
相変わらずリアルは嫌い
「ようこそぉ、らぶ&ぴーすへ~。あっガランさぁん!!今日朝のお客様って、ガランさんだったのですね~。あ、この依頼シートに記載をお願いしますぅ」
「おーう、リリィ!急遽入り用なものがあったんだが、仕入れ先では量がないと言われてなっと!こんな感じか」
彼はガランさん。
私達らぶぴのメンバーがよくご利用している酒場"夕焼け"の店主で、体がとても大きく初見の方には怖がられそうですが、豪快な喋り方とは裏腹に笑顔がとてもキュートな虎の獣人族です。
「さ、ガランさん~、お茶をどうぞぉ」
「お、ありがとな!リリィは今日もいい感じでおっとりしてるな!」
「もぉ~、褒めても何も出ませんよぉ」
・・・リリル、決して褒められているわけではありませんよ。
こら、お客様をバンバン叩くんじゃありません。ホントにもうこの子は・・・
「ようこそ、ガラン様。いつもお世話になっております。仕入れと申しておりましたが、どのような?」
「お、シラハ嬢。こちらこそ毎度ありがとな!急でかなり申し訳ないんだがな・・・ほらよ、依頼シート」
「ありがとうございます。では、拝見させていただきますね」
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依頼者 :ガラン・アバリウム
Lv :38
種族 :獣人族
所属ファミリア:酒場夕焼け(店主)
依頼内容:
仕入れ(ギズモットのむね肉×20個)
期限:2日
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このように弊社では依頼者に依頼シートなるものを書いてもらっています。
お名前はもちろんの事、依頼者ご自身の情報と依頼内容を書いてもらい、その内容や重要度、リスクなど様々な要素を含め査定し見積もりを出して、双方が納得して初めて依頼成立となるのです。
え?虚偽の記載ですか?抜かりはありません。
依頼書は特殊な用紙を使用していますので、仮に嘘の情報を記載した場合はその部分が赤字になるようになっておりますのでご心配なく。
それとあくまで念のためではありますが、依頼者が善人か悪人かの判断も行っています。
わたしの能力の一つに魔眼があります。対象の性質を見抜く力なのですが、そちらを使い依頼シートを記載してる際に判断させていただいております。
あ、ただ基本的にはどんな方からの依頼も遂行していますので、あくまで弊社のリスク回避のためです。
さて・・・
「ふむ、ギズモットですか・・・危険度としては大した事はないモンスターですね。ですが・・・」
この依頼、難しい点が2つあります。
1つは距離。
わたし達が拠点にしているここアステル王国は、この世界の大陸《ジャンル大陸》の北部に位置しています。
そこから更に北。最北端にはいくつもの山があり、その中でも一際存在感のある山が今回の目的地となるアズル山です。
同じ北に位置しているので決して遠くはありませんが、普通に行って半日はかかります。
もう1つが今回依頼の部位です。
ギズモット自体は倒すのが難しくはないので問題ないのですが、ギズモットのむね肉は非常に繊細と聞きます。
穏和に過ごしたギズモットのむね肉は国宝級の料理にも使われるほどだそうですが、戦闘をしたギズモットだと肉質も筋肉質になり味が落ちてしまうのです。
「期限に対しての距離と依頼品が繊細という点がありますので、多少お高くつきますが問題ございませんか?」
「2日後に貴族のパーティが開かれるんだが、そこの調理人として招待を受けてんだ・・・。ファミリアの名を売るためだ、背に腹は代えられねェ!シラハ嬢、いくらだ!?」
「承知しました。しばらくお待ちを・・・・・・」
では、ガラン様に了承を得たので見積もりを出していきたいと思います。
見積もりは依頼シート横に記載欄がありますので、そこに査定の内容などを書いてお客様へお見せすることになっており、同意であればそこにサインを書いてもらうことで契約成立です。
余談ですが、依頼者はこの契約を守らなかった場合、例えば報酬を支払わないなどをした場合は呪いにかかるよう魔法が組み込まれています。
このシートをの仕組みを作った代表は、本当に天才です。
―――さて、こんなところでしょうか。
「ガラン様、お待たせしました。今回のお見積り額はこのようになります」
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■御見積書
ガラン・アバリウム様
総計:80,000ギル
┗派遣費:25,000ギル
┗販管費:15,000ギル
┗納品費:40,000ギル
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「派遣費や販管費は難易度や期限、諸々の工賃などで変動しますし、ギズモットのむね肉がひとつ2,000ギルが相場なので、妥当な金額だとは思いますがいかがでしょうか?」
一般的に1ヶ月働いてもらえるお給料が平均して200,000ギル程なので結構な額ではありますが、冒険者や経営者であればこれくらいなんともないでしょう。
余談ですが、弊社は歩合制なので基本給にプラスで指名や依頼をこなす件数により給料が変動するタイプです。
「まぁ、急ぎということもあるし、こんなものだろ!よろしく頼む!!」
「契約成立ですね。では、ガラン様。お手数ですがこちらにサインと血印をお願いしますね」
これにて契約が成立です。
前途お話ししましたが、依頼成立後に支払いがないなどの行為が発生した場合は呪いにかかるといった仕組みです。
呪いについては、追々お話しするタイミングがあればその時に。
「それでは、ガラン様。派遣者のアサインについてはこちらにお任せいただき、依頼達成後に納品物と共にこちらからお店の方へお伺いさせていただきますので」
「おう!じゃあ、シラハ嬢。後はよろしく頼んだ!」
「ご来店いただきありがとうございました」
そう言い、私はガラン様へ一礼します。
さてさて事務手続きは済んだところで、後は派遣メンバーのアサインですね。
あそこで全力素振りをしているどう見ても暇なアランは完全に行かせるとして、後1名は必要ですね。アランだけだとかなり不安ですし。
学校のお邪魔になるとは思いますけど、これは一度クロ様にご相談しますかね。
ステータスウィンドウを開いてっと、SNS起動です。
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≪クロちゃまは私の嫁≫:クロちゃま~、おはようございますぅ(#^.^#)
≪クロちゃまは私の嫁≫:今日はまだお顔を見れずシラハはとてもとても寂しくて、死んでしまいそうですよぉ。。。。(。゜っ´Д`゜)。っ
≪クロ≫:おはよう。で、用件は何?それと、SNS名毎日変えるの止めて
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ぐはっ。