縁結びの神社
森の奥の薄暗い神社に、一人の少女が立っている。
彼女の名は、占見綺羅々。
彼女を見て、まず誰もが感じるのは全身が包帯だらけというその異常な外見だろう。両脚の太ももから足の甲までにそれぞれ白い包帯がぐるぐると巻かれている。紺色のセーラー服を見にまとい、茶色いローファーを履いているが、服装よりも白い包帯が目立ってしまう。しかし、その包帯がかえって彼女の脚の滑らかな曲線が強調させ、見る者はその脚のラインに目が行ってしまう。彼女は少しだけ内股だが、決して痩せ細っている訳ではなく、太ももには適度な肉感がある。
包帯は脚だけではない。右目には眼帯、左腕は骨折したのか、首から包帯が巻かれ、左胸の前で曲げられた状態で固定されている。
そして彼女の瞳には生気がない。瞳に色がともっていれば、さぞかし美少女であることは明白だ。化粧っ気はないが、眉は自然の流れに沿って生えており、細めの黒眉が目頭の少し後ろで山を描いている。瞳は切れ長の大きめの二重、鼻は特別高くはないものの筋はすっと通っている。唇は下唇がぽってりとしているのが印象的で、口紅を塗っていないのにも関わらず紅く色づいている。頬はふっくらとしていて顎は小さく、童顔な印象を与え一方で、肌は白く、血色が感じられないのがどこかはかなげな印象を与える。髪は黒髪を腰のあたりまで長く伸ばしていて傷みがない艶やかな髪だ。
彼女は思い詰めた様子で、その神社の賽銭箱を見つめた。そして床に置いた学校指定の革の鞄から、財布を取り出し、中から三十万円を取り出し、一つのメモとともに賽銭箱に入れた。この三十万円は彼女が小さいときから貯めてきた全財産だ。バイトは家の方針で許されず、お年玉やお小遣いをコツコツと貯めてきた。
しかし何故、彼女が全財産をこの賽銭箱に入れてしまったのか。
それは、この神社に伝わる一つの言い伝えにすがるためにやってきたからだった。
――自分の全財産を神に捧げ、紙に書いた想い人と自分をひと思いに殺せば、転生先で自分が思い描いた人生を相手と歩むことが出来る。
神社の至る所には、男や女の情念的な言葉がしたためられた絵馬や、わらの人形が木に打ち付けられている。神社自体は決して大きくなく、森の奥にひっそりと構えられているだけだが、知る人ぞ知る神社である。神社の奥には泉があり、無理心中する恋人達も絶えないという。
しかし彼女には、転生先で添い遂げたい相手と泉で無理心中することは叶いそうになかった。それは、彼女が片思いをしているからだ。どうしても付き合いたい相手は、すでに結婚間近の初恋の従兄。どうあがいても自分とは結婚してくれない。大好きな従兄、自分を幼い頃から守ってくれた従兄と結ばれるには、この方法しかない。
彼女は踵を翻し、神社を後にした。彼女は怪我なんてしてはいない。自分の足で一歩一歩土を踏んで山を下りていった。
鞄の中に包丁を忍ばせて。