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王女の側近騎士は実は〇〇〇だった!?  作者: 十道 鉚
見えない巨大な影
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間章1   犠牲の上に成り立つ骨組み

バルネスタ国、南門前、目の前では順番待ちをするかのように隊列を組んだ部隊が大きく歪んだ城門を潜りぬけていく。


男はこの先に待っている物を聞かせれていなかった。唯一、知っている事と言えばバルネスタだけが魔物に占領されたということだ。


今回の任務は城壁付近に蔓延る魔物の殲滅だった。番で城壁を越えられでもしたら人界側は一瞬にして地獄と変わる。


皆もそれをわかってるからこそ自ら志願し部隊となり門を潜り、そして部隊員を半分以下に減らして戻ってくる。


そんな姿を見ていると数多くの戦いに参戦した男でも戦いたくない。後ろの野営地に戻りたい。そう頭で思ってしまう、しかし、共に戦い抜けてきた一人が目の前で門を潜ったのだ。


男は握り拳を握り締めると後ろに続く部下に指示を出す。


「第27人界守護混合部隊、行くぞ!!!!!」


己を鼓舞されるよう声を張り、剣を握ると城門を潜る。


中が一体どうなっているのか見当も付かない。もしかしたら前に入って行った部隊が殲滅してくれているかもしれない。そうなれば後は城壁に迫る魔物を袋叩きにするだけだ。


そして城門で遮られた太陽が肌を照らした瞬間、目の前を先ほど入ったばかりの友が・・・首だけの状態横切った・・・。


反射的に横切った頭を目で追うとそれはアーチ状に作られた石橋ではじけ飛ぶ。


地獄絵図そのものだった。地面には人間と魔物であった肉塊と血で赤く染まる、どこを見てもそれは変わらなかった。


各自、魔物一体につき五人で相手取りようやく五分五分といった所だった。


敵の数はたった八匹、地上では大柄で緑色のオーク。その一体が兵士を一人掴み上げていた。途端に皮膚はまるで体内に何か入れているのかボコボコと蠢き、降り降ろされる。凄まじい速度で宙に消えた上を見るとあれが野営地に振る雨の元凶かと察しが付く。


そんな空には石となんら変わりない表皮を持つガーゴイルが空を駆け、また一人。人間の頭をもぎ取った。


目の前を通り過ぎたショッキングな光景が頭の中で映像となり何度もリピートされる。息が止まり、思考が停止する、一息つかせろと身体から意識と力が抜けていく・・・が、目の前に落ちてきた灰色の皮膚を持ったガーゴイルと目が合った瞬間、離れかけていた意識を引き戻す。


「やれぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」


叫び、絶叫にも似た合図と共に腹部を貫くガーゴイルの腕を掴まえると各部隊員に合図を送る。


これでも一応、自身の率いる部隊は精鋭揃い。いつでも死ぬ覚悟は出来ていた。無論、それは男も同じだった。もし仮に目の前をあのような物が通らなければガーゴイルにも反応出来ただろう。


だが、既に悔やむ間も与えてくれない。合図と共に後ろで控える部下の剣を各々が男ごと貫きガーゴイルの硬い皮膚を貫いた。


本来、十人がかりでも死人が出るガーゴイルをたった六人、犠牲一人で仕留めたのだ。我ながらいい仕事をしたと思う。


引き抜かれた傷口から大量の血が溢れ出る。


と、仕留めたと思ったガーゴイルは男から腕を引き抜くと背後に居る部下へ左腕を振り下ろす。


「がぁぁ!!!!」


が、降り降ろされる腕は咄嗟に部下の前に出た男の首をひしゃ曲がり、男の思考は完全に停止した。





「惨いのぉ~あぁ惨いのぉ。」


城内の様子を影から隠れ見る眷属の映像はテント内に立て掛けられている白い板に映し出されている。


「状況的には芳しくないのね。」


「わてはただ現状報告をしにきただけなんじゃがなぁ。後は今後の計画を確認し合うだけじゃろうに。」


「まぁまぁそういい言わずにね。」


「ヴィリニュス、知っておったろ・・・。」


「ぜーんぜん?」


「白々しいわ。」


テント内の一角、ルアスの居る箇所だけ周囲に比べ確実に浮いていた。家一軒入るほどの巨大なテント内、ほとんどの地面が質素な布切れに対して二人の居る一角の地面には真っ赤に染まる絨毯が敷かれていた。真上にはテントには絶対に付けれないはずの赤い宝石に彩られたシャンデリアが辺りを照らしている。


来るまでのテンションを変えず言葉を交わすルアスと、眷属越しに喋っていた本人、吸血姫ヴィリニュス・ヴィクトアが腰掛ける長椅子は王宮にありそうなほど装飾だった。そんな浮いた空間に二人以外に青髪の男と、その後ろに七人の男女と狼男が後ろに手を組み待機している。


「そこをなんとかお願いできませんか・・・?」


青髪の青年が困った表情を浮かべるのに対し、ルアスはいかにも嫌そうな表情で答える。


「わて、はよ戻りたいんじゃが・・・てかこれ如きヴィリニュス・・・なんなら主ら一人で片付けられように。」


「いえ、お忘れですが我ら七騎士は現在ダール王の代理として魔術迎撃城壁とあの計画に魔力を回しています・・・。」


「まぁそれは知っておるが・・・おいそこのワンコロ。」


クイーラの話を聞くや唐突に不本意な呼び名で呼ばれた狼男、ハンバードは眉を一瞬だが動かしながらも一歩前に出る。


「お前は七騎士とは別に叩けるじゃろ。行ってくるがいいぞ。」


「お、お言葉ですが・・・私のような者では少々時間が掛かってしまいます。」


少しだけ苛立ちを浮かべるハンバードは頭を下げる。


「だとよ、どうする吸血姫。」


「えぇ、別に時間かかってでもやればいいのにね。」


と、めんどくさそうに答えるヴィリニュスの耳にハンバードの独り言が耳に入る。


「・・・貴様にいっておらんわ・・・。」


「・・・はぁ・・・この既に頼られさえもしない私に関してはもう七魔として数えられてるのか疑問よね。」


高らかに笑いと共にそう告げるヴィリニュスだったが不意にヴィリニュスの顔からスーと笑みが消えると足を鳴らす。刹那、テント内が一瞬にして暗転する。


あまりにも突然の出来事にテント内にいた一般の兵士達から戸惑いの声が漏れる中。


『黙れ。』


小さく、掻き消えそうなはずの一言はまるで突き刺さる様にテント内全員の耳に入り、そして誰もが口を紡いだ。


「よく抜かすな雑種・・・。」


暗闇に慣れ、視界がほんのり見えてきたところでクイーラたちの目に映ったのはハンバードに近寄るヴィリニュスの姿だった。


咄嗟に助けに入ろうとするクイーラだったが、そこでようやくテント内に蔓延る人影に気が付いた。それも並大抵の数ではない。


何十、もしくは何百といるであろう眷属達が紅い目をこちらに向け蠢いていた。


「私が手を貸すのは人でありお前ではない・・・。わかるか?」


酷く冷たい声音と共にヴィリニュスは自身の手首を薄く傷つける。


「ほどほどにな・・・。」


長椅子で欠伸をつくルアスの言葉を聞くとヴィリニュスが笑みを浮かべ「勿論よ。」と、返すとハンバートの首筋を切り付け手首から流れた一滴の血を傷口に落とす。


「・・・・ぁ・・・ぁああああああ!!!!!!!!!!!!」


余りにも痛々しい叫び声が聞こえると同時にテント内が明るく戻り、同時にハンバードはその場で倒れ込・・・。


「寝るならあっちで寝て。」


倒れ込む先に置かれるように出た足先がハンバードを蹴り飛ばす。


ルアス達のいるテントの端まで飛ばされたハンバードの目は充血し身体を小刻みに痙攣させる。


「あら?様子を見に行かなくていいの?」


踵を返し長椅子に戻るヴィリニュスの言葉にクイーラが両手を上げる。


「今のはどう見てもアイツが悪いです。」


まるでどうしようもない奴だと言わんばかりの動きにルアスがフッと笑みをこぼす。


「この状況でそんな態度を取れるのは主ぐらいじゃろうて。」


「どういう意味ですか?」


首を傾げるクイーラに答えるようルアスはクイーラの背後を指差す。


「あぁ、なるほど・・・。」


ルアスの指示通り背後を見ると苦い笑みを浮かべ、背後で大量の汗を掻き膝を付く六人を見て頭を掻いた。


「ま、まぁこれでも私はジークフリート様の一番弟子なので。」


「師に性格まで似るでない。」


大きく溜息をつくルアスにクイーラは視線を外す。


「本来、あれの殲滅の担当は貴様じゃろ。」


「そんな訳・・・。」


「ルアス、怒っていいのよ?」


「ヴィリニュス様!?あれほど言わないで・・・と・・・。」


最終的に自分でボロを出したクイーラは額に汗を浮かべ跪く。


「このとぉぉぉりでございます!!!!!!」


「泣き落としかの。」


「はい。」


「素直か・・・。」


「嘘は苦手でして・・・。」


「殴るぞ?」


「殴るならば城壁の向こうの奴らを・・・。」


「タダ働きは嫌じゃな~・・・。」


「いつかとは申せませんがロロ様を一刻の間、想い人に近づかせないよう・・・」


「乗った。」


「屑ね。」


「もしやこれを言わせる為だけに粘っていたのでは・・・?」


「まさか・・・。」


どこか含みのある笑みを浮かべるルアスにクイーラもただ頷くしかなかった。


「まぁ本音を言えばハンバードもそうじゃがヴィリニュスもハンバードが気に入らないな。ここに入る前にごねてとヴィリニュスに脅迫されての

仕方なくごねたんじゃ。」


「結構あなたノリノリだったけどね。」


「そういう理由でしたか・・・ふふ・・・ははっはは!!ざまぁみろですね!!!」


今日、一番の笑い声をあげるクイーラに当事者である二人が逆に引かされた所でルアスはクイーラにすぐ戻ると伝え早々にヴィリニュスと共にテントを後にした。

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