4話27 長い一日の終わり
冷え切った体が無重力に囚われ宙に浮く。真っ暗な闇の中で出口を探し俺は足掻いていた。
でも足掻いた所で自分は前に進めているのか、もしかすると後ろに下がっているんじゃないかと思ってしまう。
手先が凍る。身体は冷え切り凍っているのか、または実際に凍っているのか動かすのが精いっぱいだ。
凍っていたら動かせるはずもない。しかしそこまで考えが至らない。一種の夢心地の中で長い間俺は浮いている気がする。
暗いなぁ、ここどこなんだ~とか、いつもはそんな事しか考えておらず、唐突に思い出したと足掻き始め、動かなくなる。
後はそれの繰り返しだった。それでもただ一つだけはっきりしてる事・・・。こんなしょうもない事を考えれてるって事はまだ俺は生きてるんだろうな。ただきっかけを待ってんのかもしれない。
「やっぱ来た・・・。」
徐々に他の考えをし始めてほどなくして左手に温かい何かが触れ、暗い世界に光が差した。
「ん・・・な・・・ぁ?」
「・・・きた!!・・・ちょ!!ルアス!?無理無理やっぱ無理よ!!!」
「わてこそ流石に姿を見せ・・・って邪魔じゃロロ!!!!!」
なんだか聞きなれた声に加え聞きなれていないような久々なような声が騒々しく聞こえてくる。てか喉が乾く、というか身体が重い、瞼でさえ鉛の様に重く感じ身体はまだ休息じゃない?と俺を覚醒させるのを拒んでいた。
しかし、そんな提案を俺はいやいや行けますよと破り捨て強引に目を覚ました。
見慣れた天井・・・とまでは言わないが一度、つい最近見上げた天井だ。先日、ロロが壊して戻した元宿屋の天井だ。
身を起こそうとすると身体のあちこちから声を上げたくなるほどの悲鳴が上がる。それでもゆっくりと手をベットに押し付け起き上がり周りを見ると今さっきまで居たであろう者達の姿は見えない。と、やはりここは俺達が止まった宿、というか不自然に埋まった窓の跡がここが同じ場所と裏付けている。
記憶が確かなら今の今までレイスと戦って死にかけて・・・確かシャドが助けに来たような・・・?来なかったような?どうもまだ頭が起ききっていないせいか曖昧にしか思い出せない。
しかも体の至る所に触れても傷跡やましてやレイスに開けられた大穴は無かった。
「夢か・・・?ってこれもデジャブな気がするんだが・・・。」
「夢じゃないぞい・・・。」
「おはっ!?ってその声・・・ルアスなのか・・・?。」
というのも声はルアスとほぼ似ている・・・が、声には覇気が無く、年老いたしわがれた声とさえ感じられた。更に言えばその主の姿は見当たらず、周囲をくまなく観察してようやく声の出所が部屋の隅に出来上がっていた毛布の山だと知った。
「なにやってんだよ・・・。」
俺の声に毛布の山はピクリと動くとズルズルと近づいて来て、あろうことか飛び上がりベッドに乗っかってきた。。
「どうもこうも先の戦いで枷が外れてしもうた。だから今は見た目はガチのババアじゃ・・・。声でさえ聞かれとうなかったが・・・。」
「でもいうほどババアじゃないよな?むしろそこら辺の叔母さんより綺麗だった気が・・・。」
「そなた枯れ専でロリコンだったか・・・?」
「か、枯れ専な訳が!!!・・・てかロリコン属性いつ付いたんだよ。」
俺は軽く毛布の山を小突く。それだけでもバランスを崩したルアスは「およよ・・・。」などとお婆ちゃんの言いそうな声を上げ、次には一般のお婆ちゃんではあり得ない力で俺は頭突きをかまされた。
「よ・・・て年寄りを労われ馬鹿者!!!」
「怪我人は労わらなくていいのかよ!!!!!」
額を押さえ涙目になる俺にルアスはベッドの上で、俺の上で飛び跳ねだした。
「誰が!こんな体になっても!!そなたらの為にと!!!魔力を!!!!使ったと!!!!!思うとる!!!!!」
「うぅ!!うぐっ!!!ちょっ!!!待て!!!どういう!?事・・・だ・・ハァ!?」
「フン、一日だろうと枷が外れてしまったのじゃ。ならばいっそとこの宿屋に居る全員を治療させたのじゃ。本来ならそなたは丸三日は布団の上だったのじゃよ。それを一日も掛けず蘇らせたわてに感謝せい。」
「なんでそこまでして・・・。」
「べ、別にそなたの為に決まっておろう・・・。そう、言えたら良かったんじゃがの~。」
「どういう事だ・・・」
「あやつじゃよ・・・。」
毛布越しに俺から見て左を示すルアスにつられ左を向くと、よぉく見ると扉からは赤く染まった瞳では無く、元の色である蒼い瞳がこちらの様子を伺っていた。
「ロロまで何してんだよ・・・。」
「いや・・・その。本当なら目が覚めた時に横に居ようと思ったのよ?でも・・・申し訳なさ過ぎて・・・死ねたわ。」
扉越しになにやら手ぶり身振りで何か伝えたいようだがマジで何をしたいのかわからない、とりあえず。
「入れば?」
このまま扉越しに話すはさすがに俺が辛い。何が悲しくて扉越しに話さねばならんのだ。相手も同じことを考えているはず・・・なんだが。
いつまでたっても入ろうとしないロロ。
「あぁ、もうめんどくさいな・・・。」
よいしょとルアスを毛布と一緒にベッドから降ろすと立ち上がる。
「痛ぅ・・・。」
外傷や重傷は治してもらえたがまだ中身の方はそう簡単に完治してくれないのか立ち上がるだけで倒れ込みそうになった。
「無理するなよ・・・。」
「心配・・ご無用・・・。」
心配する声に無理やり笑って答えるとゆっくりとだが扉へと近づいていく。
その間、扉の向こうではロロが何故か!慌てふためき、転んでしまったのか大きな音が聞こえて来る始末だったが、そんなのお構いなしに扉を開け放つ。
「よぉ、王女様。」
「・・・ご、ごごご御機嫌よう・・・。」
扉を開けた先にはカタカタと身体を震わせ青ざめるロロが手で顔を隠す。
「何してんだ?」
「その、顔を見ると申し訳なさすぎて死ぬの・・・。」
あまりにも情緒不安定、弱気のロロに言葉を失ってしまう。後ろで見守るルアスも恐らくだが口を惚けて見ているに違いない。
「・・・・・・。」
「・・・・・・・・。」
「・・・・・・・。」
なんだこれ、なんだよこれ。え、俺が悪いの!?急に扉開けちゃったのが問題だった?ノックすべきだったの!?いや、部屋に入るならともかく廊下に対してノックは・・・。
と、あまりにも長い沈黙、何か喋ろうにも口を開けばロロはキュゥとただでさえ小さくなっているのが小さくなるのを見ると喋りかけれない。
「・・・・・・。(汗)」
「・・・・・?(涙)」
「・・・・。(汗×2)」
「・・・・・・・・・死ぬわ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「なんでだよ!!!!!!!!!!」




