4話20 パラミナ
目の前に迫る氷塊は一瞬にして砂へと姿を変え砂埃が舞う。その現象をまじかで見たシーナは生唾を飲み込んだ。
「パラ・・ミナ・・・?」
パラミナ。シーナがそう呼んだ目の前の女性の事はシーナ自身は前にダール王から少しだけ聞かされていた。パラミリという女は魔法を砂に変える。そして過去のレイス討伐にも参加していることを。
「よく見ればシーナじゃないですか、貴方もレイスに止められていたのですか?」
パラミナは助けた相手が顔見知りと知るや振り返るとフードを脱いでみせた。それも未だに飛翔する氷塊や火球を防ぎながら。フードから現れたまるで人形を連想させるブロンドの髪は後ろで纏められ、シーナを見つめる透き通るような蒼眼の少女を前にルアスは困惑する。
「どういうことじゃ・・・?」
「なにがです・・・?」
ロロの攻撃を無視してルアスの方に向き直り首を傾げるパラミナにルアスは目を細め近寄り・・・。
「やっぱりじゃ!貴様の姿、あの時と全く変わっとらんではないか!!!」
ルアスは声を荒げパラミナを指差した。
「いきなり大声で喋らないで欲しいです。それにあの時っていつの話です?」
「あの時はあの時じゃ!わてもレイス討伐戦には人界守護者として見守っておったんじゃ。忘れもせん・・・ネロに毎回付き纏う貴様の顔なぞ忘れた事がないわ!この数十年でババアになったと踏んで油断すればその容姿はなんじゃこのロリババアが!!!」
なぜかルアスは言葉の直後に胸を押さえ「わてもか・・・!!!!」そう言って小さくのけ反るが、次の瞬間には今にも泣きそうになりながらパラミナの頬を両手で引っ張り始めた。
「ロロだからこそネロを任せられたのに貴様がまたしゃしゃり出るなら話は別じゃ!!!」
「なにがなんなんで・・・なんですぅぅぅぅ!?痛い痛い痛い痛いです!!!!やらせておけば初対面の相手にロリババアだのネロに相応しくない的な発言+この仕打ち、許せないです。」
対するパラミナも片手ながら相手の頬をつねり返すと腕を上下させる。それだけでも小柄な少女の身体はまるで布切れの如く宙に浮く。
「それより今は目の前の敵に集中させて欲しいです!ここまで無尽蔵に魔法を撃たれたのは初めてですから・・・結構、真面目にしないと行けないと私の第六感が囁いてるです。」
ルアスの子供そのものの乱れっぷりにですです語尾のルアスを片手で振り回す見た目だけで言えば子供の二人組の喧嘩はシーナを謎の恐怖へ貶めていた。と、その時。今まで見向きもせずに攻撃を迎撃していたパラミナは突如その場で振り向き手を伸ばす。
「紛いなりにも元は魔法使いか・・・頭が回るようです・・・。」
「・・・・ぇ・・・?」
「相変わらずの馬鹿!力じゃの。」
シーナが絶句し、ルアスは頬をつねられながらも悪態を吐く。それもそのはず、パラミリが突き出した手の先には家一戸サイズの巨大な岩が突き刺さっている。夢でも幻でもない。現にパラミナが邪魔くさそうに横に振り払った岩は家一戸丸々吹き飛ばした。
「人間なのか・・・?」
「その言葉をシーナから聞くことになるとは・・・さすがに落ち込むです・・・。」
「す、すまない・・・!!」
身内にも同じ境遇の者がいるにも関わらずつい口に出してしまったシーナはやってしまったと思いながら頭を下げた。
「・・・なる・・ほど・・・?色々と聞きたい事ができました。でもこのままじゃゆっくりと話もできないです。」
そう言いながら再度、飛来した二つの岩をパラミリは一度の跳躍で蹴り返した。
「返すです。」
さすがに予想外だったのか、蹴り返した岩はロロを覆い隠すと双岩は互いにぶつかり合うと凄まじい音と共に砕け散った。
「さて、脅威でも取り除くです。いいですか?」
パラミナの言葉にルアスは唇を尖らせ腕を組むと。
「貴様に借りは作りたくないが背に腹は変えれんのじゃ・・・。ただ・・・。」
「ただ・・・?」
「悪性だけ取り除いてくれ・・・頼む。」
「・・・どうやら。本当に貴方は私の事を知っているようですね・・・。今回だけ、今回だけ・・合点承知の助・・・です。」
大きく溜息をついた後、パラミナはルアスに親指を立てると腰を低く落とし、相手を見ると笑みを浮かべる。
「貴方も本気で来るようですね・・・。いい心意気です。」
貴方、そう呼ばれたロロの周囲には地面から湧き出る黒い砂がそれぞれ集まり鋭い針に形を成していた。
「くんくん・・・砂鉄ですか・・・。なるほどです。」
匂いを嗅ぐ様な仕草の直後、ロロの周囲に浮く物質を言い当てたパラミナは拳を引いた。
「今までで一番、強そうな魔法使いです・・・。久しぶりに・・・久しぶり過ぎて胸が躍るです!!!!!!」
頬を紅潮させ歓喜の声を上げ、次々と飛来する砂鉄の針をパラミナは最小限の動きでその全てを迎撃していく。徐々に飛来する砂鉄の針は増えていき、同時にパラミナはルアスを背後に移動させ、向かってくる針の先端を器用に避けつつ歩き始めた。
ロロとの距離を少しずつ縮めると同時に針の勢いは増していき、ようやくロロとの間が半分になろうとした時にはシーナの目では針を捉えられないほどにまでなっていた。
が、その刹那。ロロの周囲に浮遊する砂鉄に稲妻が走った。




