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王女の側近騎士は実は〇〇〇だった!?  作者: 十道 鉚
見えない巨大な影
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4話16 人外の戦いにおいてけぼり

目的地に向けて地面を蹴り始めて数分、後ろの戦闘音が小さくなると同時に前から聞こえる音が徐々に徐々に大きくなっていく。時折、建物から見せる白い鎖はまるで生きているかの様に蠢いていた。


そして裏路地の角を曲がれば目的地に到着・・・そう思った矢先、すぐ傍の民家を突き抜けて二つの影が飛び出してくる。


刹那、飛び出してきた片方の真紅の目玉がガンドを映す。突然の死、すでに目の前まで迫った圧倒的な死にガンドの瞳孔は極限まで見開かれ映像フレームが最大限まで拡張することで今も自身の頭に迫る黒い腕は限りなくスローに見えた。


一切の迷いなく直感だけで後ろに倒れるのを決める。その甲斐あってか空気を裂く拳は鼻から僅か指の第一関節前を大きく薙いだ。


『キィシャヤヤッヤ!!』


その一瞬の出来事を飛び出してきた二つの影の内、攻撃を繰り出した黒い化け物は「ほぅ」と言いたげな目線をこちらに向くだけで終わらせると、すぐさま耳を塞ぎたくなるほどの声量を片方に向ける。


対してもう一方は片方の大きさを度外視してもまるで少年の様な体躯をしていた。そんな少年の全身には眩く光る白い鎖が巻き付き、背後にはあの化け物、ネロ・ジグローグが数本の鎖に巻かれ少年に背負わされていた。


「え?なに?声が大きすぎて聞こえない・・・よ!!」


盛大な破壊を生み出していく光景に合わないゆっくりとした台詞。だが、語尾だけに力を加えると共に黒い化け物に向けて鎖を纏った拳が迫る。が、それを黒い化け物は同じく拳で迎え撃った。


何度も大気を震わすほどに交わる攻防は、少年の鎖によって作られた拳が化け物の頭蓋に直撃して決着がついた。


巨大な質量を持つ一撃を放った少年の拳は化け物を吹き飛ばし建物に押し込むと、相手は建物を崩壊させながら奥へと消えていった。


その時間はたった数秒にも満たない時間で起こった。故にガンドの脳は状況を整理し切れていない。なのに目の前の少年は次の行動に出る。


「追撃。」


少年の言葉と共に背後へ鍵爪状の二本の鎖が飛び出すとそれは地面に突き刺さり少年の前に進む勢いを殺し切る。そして少年の勢いが完全に死ぬのを見計らい身体を纏っていた鎖が特有の高い音を出しながら化け物が吹き飛んだ方角へ飛び出していく。


「上昇。」


さらに言葉を発すると、勢いを殺す役目を担っていた鎖と同じく複数の鎖が地面に突き刺さり鎖の鎧を身に纏った少年は宙に浮いた。ついでにと一本の鎖がガンドの胴に巻き付くと少年と共に宙に浮く。


数秒後には周囲の建物よりも高い位置まで上昇したシャドと、連れて来られるように一緒に上がったガンドはお互いに状況を理解できずにいた。


ガンドは勿論、目の前の鎖の鎧を纏う少年?が何者なのか?そしてどうしてこの少年がネロを背負っているのか。


しかし、ガンドが声に出すよりも早く鎖の少年が口を開く。


「ねぇ、所で君は何の用だい?」


少年も同じのように突如と現れたガンドがいったい何者なのか理解できずにいた。もし仮にたまたま迷い込んだ一般人だったらと考え避難させたが、一応、敵だった場合に備え自身の最も迎撃しやすい距離にガンドを置いていた。


「ルアスに頼まれ」


質問に答えようとしたその時。


「見つけた!!!」


何かを見つけたように少年が声を出す。


すると大通りの方で大きな粉塵が巻き上がると何か巨大な物が土煙を上げながら建物を破壊して移動してくるのがよく見えた。

少年は目でそれを追いながら手を上に振り上げる。途端、土煙を貫かんばかりに次々と白い鎖が街から突き出していく。


「で?何?」


その光景に生唾を飲み込むガンドを尻目にシャドは平然と会話を戻す。


「実はルアスに頼まれ・・・!?」


が、またもや会話は途切れてしまう。だが今回はガンド自身から会話を止めてしまった。


そりゃそうだ。目の前にいきなり自分を覆い隠すほどの飛翔体がとんでもない速さで飛んで来てでもしたら竦み上がるだろう。


もし今、目の前で鎖が瓦礫を迎撃していなければガンドの身体は木っ端微塵に吹き飛んでいただろう。


しかし、安堵してはいられなかった。今もなおガンドの身体を覆い隠すほどの瓦礫が凄まじい速度を持ってピンポイントで二人に向かって投擲されていく。


土煙を見ればそのあまりの速度に瓦礫が到達してからやっと投擲したであろう箇所の土煙に穴が開く。


これでは投げてきた相手はわかってもいつ投げられたのか分かるはずもない。ないはずなのに鎖の少年は難なくその全ての瓦礫を何本かの鎖を用いて迎撃していった。


その間、鎧越しに動く頭の動きからしても少年は絶え間なく手を動かし土煙の主を地面から飛び出す鎖で近づかせまいと絶え間なく攻撃していた。


しだいに土煙を上げる化け物を追う鎖は次第に増え、街を白い糸が縫い合わせているような光景は人間の域を軽く超えていた。


なによりその攻防を難なくこなすこの少年がガンドにとって恐怖さえ覚えさせる。


「そもそも援護はいらないって言ったんだけどなぁ。」


頭を掻くような仕草で呟いた少年は思いついたように手を叩く。


「そうだ、君。この後ろの人を安全な所まで連れて行ってよ。」


「それだけでいいのっておい!」


相手は話を聞かず、有無を言わさず背後に背負うネロをこちらに寄せると半ば強引に背中に背負わせた。


「じゃ、頼んだよ。」


そうこうしてる内に建物を破壊し走る化け物はすぐ傍まで迫っていた。


それから逃げる為か少年は三本の鎖をかなり遠くにある時計塔へと射出する。


「巻き上げ。」


そして少年の指示に従い鎖が巻き上げられ、二人の身体が黒い化け物より早く時計塔に向かって高速で移動し始める。


「降下。」


途中、そう少年の発した指示にガンドを巻き付いていた鎖がガンド、ネロ共々地面へと吸い込まれるように降下していく。


「気持ち悪・・・。」


横と縦の高速移動に全身を揺さぶられながら地面に降ろされたことでガンドは口を押え・・・そして背後の殺気に気づく。


「っ・・・!!!」


やばい!そう声に出そうとしたが、自分の上を通過した物体に絶句した。通過した物体は今までの飛翔体よりも質量と大きさを上回るそれはほんの一瞬にせよガンドの視界から空を消すほどだった。


物体を追いかけ背後を振り返ると、ちょうど落下していく時計塔に空中で回避のとれない化け物を叩き潰す瞬間だった。


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