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王女の側近騎士は実は〇〇〇だった!?  作者: 十道 鉚
見えない巨大な影
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4話14 静かに煮えた怒り

まるで瞬間移動の如くガンドの前に現れたルアスとミーナは、ルアスがズーと呼ばれる流動体を破裂させると同時に少年を抱え込み飛躍する。


一方、破裂した魔物は空気に溶け出すように消えていつしか誰の目からも見えなくなるほど小さくなるとその粒子の一つが自身の粒の半分以上の口を作り上げると声を発した。


『ケイカク・・・通りダ?』


『ケイカク・・・。』


『計カクドオリ。』


『計画通りダ。ヶタケタケタ。』


『ケイカクドオリケイカクドオリ。』


一匹?の声がまるで周りの粒子を共鳴させたというのか、次々と粒子の一つ一つが口を作り個性豊かな口調で喋り出す。


『計画通・・・!?』


「逃がす訳なかろうが。」


『・・・・!!!???』


が、仲間にしか聞こえない声もルアスの一言にその小さな粒子の声は一つの残らず途切れ去る。一瞬、意思を持った粒子たちは自身の身に何が起こったのか理解できずにいた。ただ、同時に全ての粒子がこの事態を起こしたであろう七魔の一角を一斉に見つめる。


身体は元々動かせるような形をしていない。言うなればただ声を出す為の器官だけが取り付けられたボール。それでもその唯一動かせる口が動かない。だが思考は停止していない。もし仮に声を出せるのならば全力でこう叫ぶだろう、『ナニガオコッタ・・・』と。


だが、その質問さえ出来ない哀れなボールは互いの隣で固まる仲間の存在に気づく。動いていない・・・・。それは当然、隣の口が動かないという意味ではなく、世界が動いていない。そういう意味だった。


よく見渡せば今や自分からすれば巨人とも呼べる人間も動きを止めていた。そこでようやく自身の陥った事態を察したのだ。


「まぁ、『何千年』と時を過ごした主じゃ、一度や二度死んでるんじゃし何回死のうがさほど苦ではなかろう・・・。」


そんな中で一人だけ悠々と歩みを進める原因に、ズーと呼ばれる化け物はその言葉を聞き、言葉の意味を理解しても恐怖を抱かなかった。なんせ一匹一匹がナノレベルである為か殺されたところでまだ見つかっていない分裂体には大したダメージにはならない。


そう高を括るズーだが、ルアスはついでと言いたげに粒子体に息を吹きかけた。


その瞬間、魔物達の思考は凍り付くと同時に視界が闇に覆われる。ほとんどの個体がどうなったのか理解できないだろう。だが、外側に居る個体だけがどうなったのかを理解していた。


「いやはや蟲を潰してもつまらぬのにましてやそれ以下、楽しいはずないではないか・・・故に。」


まるで新しい玩具を渡された子供の様に、ルアスは目の前にそびえ立つ緑の山の、ナノサイズから手のひらサイズになった醜い緑色ボールを掴みあげると数回に宙に投げる。


ルアスの掴み上げたそれの集まりは異形、ルアスの前に立つ山はその言葉が実に似合ってた。ボコボコとした山肌には数えきれない量の口、さらには雑草と見間違えるほどの複数の触手が飛び出している。その山の一部をルアスは手で転がして見せる。それはまるで粒子体が成長したらそうなっていたように・・・。


「せめてこのサイズにまで成長してもらったぞ♪」


清々しい程の笑顔で答える化け物を前に、山と成り果てた化け物は今となっては自ら死を望んでいた。


化け物は声に出したくてたまらなかった。何千年と寄生と分裂を繰り返し、死んだ個体の記憶を共通しあうことで危険な生物や死の危険から逃れ生きてきた太古の化け物は確かに死には疎かった。しかしそれは一瞬で一度や二度死んだときの話だ。


ましてや幼体時など今まで数えきれないほど死んできた。だが今は状況が違う。強制的に成長させられた身体は確実に痛覚が備わっている・・・わかる、わかってしまう。長くを生きた化け物は変な所で最悪の予想を頭の中で立て上げる。


目の前にいる化け物がどうやって自身たちを殺す気か・・・。


「どうせ、他にも分裂しておるんじゃろ?ならばそ奴にここに居る全ての主の死ぬ痛みを味合わせよう・・・こんな経験は生きてきて初めてだろうに・・・。」


空気すら静止する世界でルアスに握られたズーは山を見上げる。


「1兆と五万と四千に百二か・・・途中で飽きて殺し方が大雑把になるやも知れんが許せよ?」


そう言ってルアスは仲間の数を明確に当てると手始めに手に持っていた一匹を握りつぶした。








また一匹が殺された。次に一匹焼かれ、今度は二匹が混ざり合う様に捩じ切られる。


「ふむ、元が魔力なだけあって柔らかい・・・。」


興味深そうに一匹を掴むと無造作に壁に投げ潰す。


今で死んだ仲間の数は1兆と五万三千九百二だった。首が痛くなるほどの大きさを誇った異形の山は今ではルアスの身長まで小さくなっていた。


体感で何日死ぬのを待っただろうか・・・。最初の一匹が殺された瞬間に脳裏に焼き付いたあの光景。仲間達によって作り上げられた異形の山。もはや塔といってもいいほど歪に出来たそれの中に自分がいると思うと頭が狂う。


そして始まった虐殺は最初こそ一匹一匹、丁寧に炙る、煮る、凍らし粉にするなど正常さを疑うほどの殺しぶりに各々は発狂を始める物も大勢いただろう。


が、今はそれに飽きたように今では一言発す毎に一匹が死んでいく。そしてなによりそれでも複数体、最大でも9体しか一度に殺さないせいで死ぬ痛みは次第に慣らされ不幸にも着付けとなり今でもこうして思考がクリアなままだった。


そもそも死を共有してる時点で気が狂っているのか・・・等と暗闇の中で考える時間は山ほどあった。


たった数日の中で今の人生で最も長い体感時間を過ごした結果、思考は驚くほど向上し・・・。


「と、主で最後じゃ・・・。」


急速な進化を遂げた思考は時を忘れさせる。


「そうだの、最後の一体じゃ、口だけでも動かしてやろうかの。」


その言葉を受けた幾万の死と思考を手にした最後の一体は今までの仲間の恨みを代弁すべく口を大きく開く。


『★※▼◇‘*@@!』


単純に元粒子体の生きた時間を計算してもそれは膨大と言わざる得なかった。それこそ仲間と呼ぶ一つの文明が滅ぶまでを体験したに等しい、それだけにその長い時間を過ごした最後の一体は気づかぬうちに言葉を独自に作り上げ世界の共通語を忘れていた。だからか、その言葉はルアスにとっては叫び声にしか聞こえなかったのだ。


「何言っているのかわからぬの・・・。」


そんな文明の生き残りの言葉は嘲笑うかの様に一蹴され、自身も地面にこびりつく仲間の一部となったのだ。


「ふむ・・・しかし・・・。」


やり遂げたと言わんばかりに腕を組むルアスは困り果てた。生涯で生きる意味とまでなった愛する人の、その伴侶を好き勝手されて怒らなないはずなかった。長い間、音を立てずに煮え過ぎたともいえる怒りが溢れ出した。


それだけに怒りに身を委ね虐殺を続けた結果、怒りは収まったが、逆に冷静さを取り戻したことで場の状況の悲惨さに目も当てられない。


この光景はロボあたりに見せても卒倒しかねなかった。


ましてやこの場にいる4人にこれを見せる訳にはいかなかった・・・。


「どうにかせねば・・・。」


冷や汗を垂らしながらルアスは両手を合わせると、手のひらに水の渦を生成させたのだった。

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