一話5 謁見
[謁見]
城の最上階にある王の謁見室に着くまで俺とロロは一言も言葉を発さずに歩いた。まだ会って二日目と言われれば当然だが、この城に来るまでにも俺とロロは気兼ねなく喋れる程度にはなっていたはずだ。
なのに今はとてもじゃないが喋れるような雰囲気じゃない。ちょうど最上階への階段を登り切った辺りから人の気配も消えた。そのせいか謁見室に入ろうと扉を叩く音さえ城内を木霊し場違いの音のように聞こえる。それほどまでにこの場所、ロロは張り詰めていた。
「お父様、ロロです。ロロ・バルネスタです。」
「入れ。」
中から聞き覚えのある声で入室を許されたロロは扉を開け中に入る。俺もロロと共に入ると中は入り口から部屋の奥にある玉座まで赤い絨毯が曳かれており左右には壁に沿って六本の柱が一定の間隔で入り口に向かって天井を支えていた。天井付近には幾つものステンドガラスが貼られ中は明かりもないのに明るくなっている。
そして部屋の中には俺達以外に七人の人と一匹の大きな狼が俺達を出迎えた。玉座には当然この国の王、顎髭を生やし、眉間にしわを寄せ、顔は王と言うより武人のような表情の王が腰を下ろしていた。そして七人の中にはシーナの姿もあった。
俺はロロの後ろについて王の前まで歩いていると、その際シーナ以外の全員の視線が俺に集中する。まるでその目は完全に疑惑の眼差しだった。
なぜそんな眼差しをするのか、心当たりがある俺は息が詰まりそうになりながらも徐々に王との距離を縮めていく。
と、その時。ずっと表情を変えず怪訝な表情を貫いていた王が困惑の表情で突如「なぜお前がここにいるんだ!?」と、俺を凝視するが、しばらく経つとすぐ状況を理解し溜息をつく。
「どうされました王よ。」
王を心配し、王に一番近い青髪の男が王に近づくが、王はそれを手で制した。
「大丈夫だ、気にするな。して念のため聞くがロロよ、その後ろにいるのがロロの騎士か?」
「そうですお父様、私はようやく信頼に置ける騎士を持つことが出来ました。」
ロロの返答に王は「やはりか・・」と、小さく呟く。
「確かにそやつほど信頼に置ける人物はそういないだろうな・・・」
と、王はジーと俺を見つめる。それを見た俺はシーと「黙っといてくれ」と手でジャスチャーを送る。
「それぐらいわかっている。どうせ問題に巻き込まれて今に至るのだろ?」
まさしくその通り!と頷く俺を見て再度、王は溜息をつく。
「お父様!?誰と喋っておられるのですか!?」
「大丈夫だ、独り言だ。」
「独り言の方が心配なのですが・・・」
「気にするでないぞ!それよりもロロよ、事態は一刻を要す、明日にでも式を執り行うつもりだがよいか?」
「え・・・明日にですか・・・?」
王の問いにロロの声に困惑が混ざる。
「明日にだ。」
「・・・・」
何かの式について話した直後、ロロはその場で俯く。そして後ろの俺から見てもロロの身体は震えていた。
「では、今から式の準備をしてきてもいいですか?お父様。」
「そうしてくれ。」
「では・・・」
感情を押し殺したように返事をすると、ロロは俯いたまま扉に向かって歩き始めた。俺もついていこうと振り返るがそこでシーナと黒髪で穏やかな表情をした男に行く手を阻まれる。
「王があなた様に話があると」
「もうよい・・・。クイーラ、シーナ以外下がらせろ」
王の言葉に王の一番近くに居る青い髪と青い目をした男が反応する。
「今日はこれにてOFFということでよろしいですか?」
「あぁ、そうだ。」
「了解しました・・・。はい!!撤収撤収!!皆、お疲れぇ~」
王の了承を得ると同時に一気に気の抜けるような掛け声と共にシーナ以外が部屋を後にしていく。それを見て王は最後に大きく溜息をついた。その後、全員が出ていき、扉が閉まり切ったのを確認した所で俺は切り出した。
「さて、いい具合に重たい空気も抜けたし。で?なんだよわざわざ手紙寄越してまでの話って。」
「まったく、この世界で我にそんな軽口を叩けるのはお前しかおらんよな。」
「なんだよ、偽物とでも思ってたのか?」
「当たり前だ、しかしシーナと斬り合っているのをたまたま見たものがおってな。そやつが王の見知った者がと言われればお前しかおらん。なぁ、ゼウドラ国、魔王ネロ・ジグローグ?」
それ聞き俺は含んだ笑いをすると、半笑いで答える。
「久しぶりだな。ダール・バルネスタ。」
その言葉に、場に残されたシーナだけが目を驚愕し目を見開いた。




