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王女の側近騎士は実は〇〇〇だった!?  作者: 十道 鉚
見えない巨大な影
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4話4 それはまるで水の中の

まるで空間そのものが俺から放たれる気に圧倒されるように暗くも無い部屋が薄暗く感じる。


畏縮した空間の中、それはロボもまた同じく畏縮していた。


「大変、申し訳にくいのですが・・・ロロ殿は先の魔物の一体に乗っ取られているのではないかと・・・。」


なんとなく予想はしていた・・・もはや望んでさえいたのかも知れない。


ここ数日のロロがするはずの無い行動、言動、仕草の数々。まるで別の誰かがなりすましているのではと錯覚するほどだった訳だが・・・もはや魔物が乗っ取っているとは・・・。


頭を押さえながら俺は再度、確認を取る様にロボを睨む。


「ロロが魔物に乗っ取られている根拠は?なぜ俺の魔力検知が反応しない。」


「根拠はルアス様の自宅にてロロ様の目が紅く染まったのを確認しました。」


「ッ!?」


昔から一部の魔物は自身の魔力を使い様々な魔力を依り代とし如何なる方法を持ってか身体を乗っ取っていた。そして乗り移る対象が人間の場合、目の虹彩は赤く染まり『魔物憑き』となる。


しかし、それは一般人の場合だ。保有魔力が高ければ高い程、魔物の出す混じる魔力は薄まり、それだけ耐性は高くなっていく。


それが無尽蔵のアウロラとなればなおさらだ。元々ロロが弱っていたのか、はたまた乗り移った魔物が特殊だったのか、もしくは別の手段か・・・どちらにせよどうやって魔物はアウロラを保持するロロに取り憑けたのだろうか。


俺は頭を押さえながらも様々な可能性を考えては自身で論破する。そんな事を繰り返していると不意にロボはある方から聞いたほとんど真実のような予想を言い放つ。


「ここからはルアス様の予想の範疇ではありますが、乗り移ったのはロロ様ご本人では無く、アウロラの花に乗り移ったのではないでしょうか?」


予想外の事を話すロボを否定しようと口を開こうとするが、ルアスの予想は9割は的中する。そのことを思い出した俺は思い留まる様に「続けてくれ」と掛ける言葉を変える。


「本来、無限の魔力を有するアウロラの花ですが、生物と一体化したケースは恐らく人類史で一度も無いはずです。」


俺はロボの言葉に頷いた。人類史で一度も無い。それはロロ本人からも聞かされている。それでも確証は無いがもし仮にロロ以外にアウロラと一体化出来たものが居るのなら噂程度でも耳に入ってくるはずだ。


「となれば一体化したロロ様にアウロラが一体化した事でアウロラ本来の魔力の大部分がロロ様の魔力に塗り変わってしまったのではないでしょうか。そう考えればあの戦闘以来、急激に魔力を使いこなすロロ様にも利点が行きます。」


「つまり、アウロラの魔力がロロの魔力に塗り変わったせいでアウロラの花自身を護る魔力が不足し、その結果、魔物はアウロラの花、厳密に言えばロロと一体化するアウロラの花の魔力に取り憑いたんだな。そしてアウロラから徐々にロロの魔力を浸食させたと・・・。」


「この予想が的中していればそういう事になりますね。」


「となるとだ、どうやってロロからソイツを引きず」


不意に、そこまで口にした所で俺は廊下から聞こえる聞き覚えのある足音に気づき口を塞ぐ。


軽快な足運びで俺達の居る部屋の前で泊まると、ドアノブが回され・・・。


「ふぅ、外の方々の記憶を消すの苦労したわ・・・ってロボ戻ってたのね・・・って何?なんか睨まれるようなことしたっけ!?」


あまりにも自然と話すロロを見て俺はつい睨んでしまったようだ。それもそのはず、目の前に居るロロが魔物に乗っ取られるなんて信じられなかった。それにロボに言われなければここ最近の不可解な行動も俺の考え過ぎで片付けてしまったはずだ。


「いや、あまりにもこの宿を直したのがロロだと思うとちょっとな・・・。」


本当のロロならばこういえば突っかかってくるはずなんだが・・・。


「そ、それどういう意味よ・・・?」


ッ!?


「い、いやぁ~・・・壊れそうとか全く思ってないからな!?」


「じゃあネロは外で寝ろ。」


「大変、申し訳ございません。」


「ちょ、冗談よ!?土下座しないでよ!」


「ロロの事だから本当に外で寝ろぐらい言いそうだなと・・・。」


「そ、そう・・・?」


俺は一瞬だけ声を詰まらせた。あまりにも本物のロロと言動が酷似しているからだ。今、目の前に居るのが本物のロロで、逆にロボたちが俺を騙そうとしている。そんな考えが浮かんでくるほどロロは自然に俺達と会話を終わらせる。


が、次の瞬間、ロロが俺の横を通り過ぎる瞬間、ロロの表情が一瞬だけ今にも泣きそうな顔になった。そして・・・。


「今度は・・出せ・・・たわ・・・なんだか水に潜ってる気分・・ね・・?お、風呂入ってくるわね・・・。」


どこかぎこちなく発したその一言を残しお風呂に向かって行くロロを見て俺はその後ろ姿を睨み付ける。


「大丈夫だ・・・ロロ。」


「ネ、ネロ殿・・・?」


「なるほどな、そりゃ辛いもんな・・・。」


俺はそう言うと自身の頬を全力で殴りつけていた。


わかっていた、ロボからロロでは無くアウロラが取り憑かれている可能性の話をされ、俺はもう一つ、ある可能性を考えずにはいられなかった。


それは、ロロの意識が常に覚醒状態である場合。本来ならば取り憑かれた魔力の主は心身共に魔物の支配下に置かれ、意識も完全に世界から遮断される。


しかし、あくまで取り憑かれたのがアウロラの花の場合、その限りではないかもしれないという事だ。


取り憑かれたのはアウロラであり、ロロの身体自体はアウロラの花から出される魔物の魔力に支配されただけであり、悪く言えば操り人形と化している可能性も0では無かった。


もしそうならば自分とは別の何かが、自分のように振舞って親しい人と楽し気に、しかも相手はそれを疑わない。それをただ見ているだけなのは生きていて死ぬより辛いはずだ・・・。


そしてこの可能性は吉と呼ぶのか凶と呼ぶのか今の会話でそれは可能性から事実へと昇華した。


「前な・・・俺とロロが出会った直後、城に案内されるまでの間に言ってたんだよ、風呂は嫌いって・・・。」


「はぁ・・・?」


二人はすぐ傍の、廊下にいる人外の何かに悟られないよう自然な会話を始める。


「別に風呂だから嫌いなんじゃなくて大量の水が嫌いらしいんだよ。」


「なる・・ほど・・・。」


「ロロがちっちゃい頃に池で溺れたらしくてな、溺れた理由が水面に浮かぶ自分に手を伸ばして態勢を崩して落ちたらしいんだ。水面に浮かんだ私が私を引っ張ったみたいだって。」


「その時、実際に下級の魔物がロロを引っ張って溺れさせたんだけど、すぐダールがロロが消えた事に気づいて水辺まで来たんだよ。でも下級の魔物はロロに気持ち悪い笑みを浮かべるとロロの姿になりすまし水から上がりダールの前に現れた。」


と、そこまで言って突然、扉がノックされる。


一瞬だけ身体に力を入れる俺とロボだが、扉から現れたのがこの宿の主人と知りすぐさま身体から力を抜いた。


「すいません、何かお話中でしたかな?」


「いえ、ただの思い出話です。」


「思い出話・・ですか?」


どこか興味ありそうに尋ねる主人にロボも合わせる様に言葉を選ぶ。


「それで?ロロはどうなったんですか?」


「あぁ続きな。まぁ当然ダールは気づいてたみたいだけど、当時のロロはそれがなんだがこのままお父様が騙されると思うと物凄く嫌で声を出そう結果、水呑んでさらに死にかけたわって笑いながら話してくれたんだ。すぐダールが助けてくれたらしいんだが。それ以来、水面に映る自分がまた引っ張るんじゃないかって。」


「なら・・・。」


と、俺の言葉を遮る様にロボが声を重ねる。


「なら、ネロ殿はロロ殿が溺れても悲しませ無いよう助け出さないとダメですな。」


「は・・・ハハ。普通、溺れる前に助けるだろ。」


「それもそうですな!」


二人が突然笑い出すのを見た主人はオロオロと二人を交互に見るが、次第に気味悪がってかそそくさと部屋を後にする。


「なになによ!?何で二人して大笑いしてるの!?」


風呂場まで聞こえたのだろうか、ロロが慌てた素振りでここまで聞こえるよう大きな声を出す。


「大丈夫だ!気にすんな、こっちの話だこっちの話。」


「男同士の話という訳ですな。水要らずならぬ風呂要らぬです!」


「なによそれぇ!!」


「ハハハッハハハァ!」


場を濁すように笑い合う中、俺とロボは互いに手を掴み合い、笑い声とは合わない険しい顔で見つめ合った。








二人が大笑いしている中、湯船に浸かるソレの頬はまるで自身の顔に惚れているかのように手で舐めまわすように手を頬、首筋、胸、腰へと滑らせていく。


「なんだ~ただの思い出話なのね。」


ロロの姿をした魔物は一人の時でもなるべくロロの言動を真似していた。


「それにしてもびっくりしちゃった。まだ出てこれたのね。でももう出てこれないわよ。全く、本体が変な助言でもしたのかと思っちゃったわ。」


そう魔物は安堵するように胸を撫で下ろす。それと同時に、一階の自室でついさっきまでネロと会話をしていた主人の身体が元の、瓦礫で潰れた肉片に姿を戻した。


「さ、愛しのあの方をいつ、どう食い散らかしましょうか・・・ね❤」


水蒸気で白く煙る天井を眺め、魔物は獲物であるネロの顔を思い浮かべ、舌なめずりをしたのだった。

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