3話18 尽きない※※
三話はこれで終了となります。次回からは四話を投稿していきたいと思っています。誤字脱字など多い中、今まで見てくださいった方々本当にありがとうございます!誤字や脱字、読みにくい文章ですがこれからも精進していきたいと思っていますのでよろしくお願いします!
自身の事を一通り話し切った俺はロロが指を鳴らしたと思えば今まで居た空間は砂の様に崩れ、砂埃に視界を奪われる。そして気づけば俺は現実世界でロロの空間に入った時と全く同じ態勢で椅子に腰掛けていた。
「あ、え?は!?」
こう見えてもかなり数々の不思議な体験をしてきた俺でも。今回のロロが創り出した不思議な空間はあまりにも現実味を帯びていて、まるでロロの空間が現実のどこかだと錯覚さえしてしまうほどだった。
そのせいか。今までさっきまであった空間が砂の様に崩れ、現実に戻ればまるでその事自体が無かったかと思わせるこの状況はさすがの俺もパニックに陥ってしまう。
が、珍しくパニックに陥っている俺をロロは横目で見た程度で何かに追われる様に急ぎ足で二階に上がっていった。
「ロロ・・・?」
その行動は、何かしらの理由があるのならば自然な行為だが、この時間を圧縮しているルアスの家にいる以上、はっきり言って急ぐ理由などトイレに行く事ぐらいだ。
故にロロが急ぎ足で二階に向かう行為はどこか引っ掛かり、なにより悪い予感が頭を過る。それは俺に対しての悪い予感では無く、何かロロが危険に晒されている。そんな気がしてならなかった。俺は頭で幾つかの可能性を上げるがその全てはルアスの支配下にあるこの空間が防ぐ、ただそれだけで片が付いてしまう内容だった。
そんな思考を巡らせジッと、階段を見つめる俺にロボは奇怪な物を見るようなまなざしで尋ねる。
「どうかなさいましたかな?」
「いや・・・特に・・・。」
やはりいくら考えてもルアスの家にいる以上、外部からの脅威は未然に防がれる。仮にロロの身体に異常があればすぐにルアスが気づくはずだ。
「俺の・・考え過ぎかな。」
最近、度重なる戦い、ロロとの事で心身共に疲れ果てている俺は、それを「張り詰めすぎ。」と、片付けることにした。だからか、俺は気が付かない。ロロの事を最も知るアウロラの花が気が付かない事をルアスが気づけるはずがないと言う事を。
「ふむふむ、二人ともお疲れだの。」
突然、真上からする声に俺は警戒するが、その声の主を知る俺は呆れたように首を上げる。
「ルアスか・・・。」
「そうじゃルアスじゃ。ネロ、疲れてるときに悪いが話がある。」
まるで重力が反転したかのように天井に立つルアスはそう言うと、見慣れた瞬間移動さまさまの能力で椅子に座る。
ルアスの話は大体予想は出来ている。大方・・・。
「パラミナが現れた。」
「やっぱりか・・・。」
パラミナ・セバスティ、世界で有数の騎士、厄災戦を終わらせた9人の英雄の一人。つまり親父の元仲間だ。そしてパラミナは親父が死んだ時、すぐ傍で一緒に戦っていた一人だ。俺も何度か出会った事はあるが、物静かでフードを被っていて声でさえ聴いたことがない。親父曰く中々の喧嘩口調に筋肉隆々で金髪だそうな・・・。
「で?パラミナさんはどこにいるんだ。」
「そなたらの居たラークスから南のある廃国に居る。」
廃国、本来ならば南に行けばダストンがあるはずだ。しかし、ルアスはその国の事を知らない。それはその国がレイスに食われた何よりの証拠だった。
そしてパラミナさんは高度な隠蔽魔術を持ち、普段はルアスでさえ見つける事は不可能だ。でも、パラミナさんは戦闘時のみ魔力を探知することが出来る。
「そこにレイスがいる・・・。」
パラミナさんはどうやっているのか不明だが、何らかの方法でレイスの居場所を突き止め誰よりも早くレイスと交戦を始める。
毎回、俺が行く頃には戦闘は終わりレイスもパラミナさんの姿は消えている。それでも行く価値は十分にある。
この空間では現実との世界では時が経つのは何倍も遅い。しかし、自分の中にある気持ちは先走る。
「準備が整い次第、出発する。」
「勝手にせい。わかっとるなネロ・・・?わてはそなたに惚れとる・・・。勝手に死んだら容赦せんぞ。」
「わーてるよ。」
俺はルアスの言葉を流すように手を左右に振る。すると後ろではルアスが頬を膨らませるが俺はそんなことを知る由も無く自室に足を運んだ。
「して、わんころはどうするんじゃ?」
残された犬一匹と幼女一人は残された者同士話し合う。
「私には悲願があります・・・。が、今や仲間を失った私一人の力はあまりにも無力で叶わないでしょう。」
「ふむふむ、その悲願。話してみよ。」
ルアスはロロたちが旅支度をしている間、ロボの悲願についてほんの少し興味が湧いたのか暇つぶし程度に耳を傾けることにした。
そしてロボの悲願を聞き終えたルアスは聞き始めた時と同じ始まり方である提案をロボに伝える。
「ふむふむ、ならばネロ達と共にすればよかろう。」
「あの方々と、ですか?」
「うむ、あやつらならばいずれにしろそなたの悲願と被る事になろう。」
「なぜ・・・そう思われるのですか・・・?」
疑い深く聞くロボにルアスは満面の笑みで答えた。否、はぐらかした。
「おいぼれのカンじゃ。」
「はぁ・・・?」
ロボもその曖昧な返事に同じく曖昧に返事を返すとほぼ同時に、ネロと共にロロが階段を下りてくる。
「そもそもな。」
その様子を見てルアスは幼子を見る様に笑みを浮かべると。
「あやつらは元よりそなたを手放す気は無いぞ。」
「ロボ~、もたもたしてっと置いてくぞ~。」
「!?」
もとより期待などしていなかった。自分より弱い生き物を傍に置くという事は連携が取れる以外には足手まといが増えるということ。それが他人ならなおさらだ。
それなのに目の前でこちらを呼ぶその青年は損得など考えていない様子でこちらを呼ぶ・・・。と、その時。無意識で歩み寄る足先は凍り付く。
ネロの傍ら、ネロ見えない様に横目で見るロロの瞳はネロとは一変、拒絶や殺意を持つ目だった。それは普段のロロからは想像できない程に冷たく鋭い。まるでそれがロボの知るロロではないように。
そして足が止まったのにはもう一つ理由がある。背後からもロロに負けるにも劣らない冷気が体を突き抜ける。
「そうじゃわんころ、主をあやつらに付けるにはわてとしても理由がある・・・。」
そう言うとルアスはロボの毛を幼女の腕ではありえない程の力で引き寄せ、低く、まるで深海に落とされたような静かで、冷たく、それでいて重圧のある声音でそっと囁く。
「ロロに・・・気を付けろ・・・。」
声だけのはずがその声はとても冷たい冷気のようでロボの身体に染み渡ると、ルアスはロボの頬辺りに口を当てる。
「ほら、早よせい。置いてかれるぞ。」
そして、すぐに声音を元に戻すとルアスはロボを押し出すと、氷漬けにされていた体が動き出す。そして横目でルアスを見るとまで分かれるのが惜しいかのように手を振った。
その一連の様を見ていた俺はその時、珍しくルアスに情が移ったのかとしか思って・・・いるはずがない。
俺は昔から耳が良い。数メートル先で囁き声は大抵は耳に入る。そのせいかルアスがロボに話した言葉は俺にも声の温度と共に突き刺さる。
ロロに気を付けろ。ルアスの言葉を頭の隅に入れながらも俺はルアスの家の玄関を開け放つ。外は白く、何も見えなかった。それがどこに続いているのかはわからない。が、それが自分にとって最善の場所である事は確かだった。
「ルアスも元気でな。」
そうして出ていく三人をルアスは笑顔で見送った。それと同時に、閉まるほんの僅かな隙間から覗かせるルアスの敵を見る冷たい目線。それと僅かに動いた口が何を言っていたのか。その目線が誰に対してなのか、俺には痛いほど伝わった。
『死ぬな。』
その言葉はルアスの家に来てから最も重く、まるで鉛を担がされたように体に重く伸し掛かる。
「死ぬな・・・か。」
「どうしたのネロ?」
不思議そうに首を傾げこちらを覗くロロ。無垢でまだ世界のほんの小さな部分しか知らない少女の何を気を付ければいいのだろうか。俺はそれがわからずに少女の頭に手を乗せた。
「なんでもねぇよ。」
そして誤魔化すようにロロの髪をクシャクシャに撫でると自分の中で芽生えた新たな感情も一緒にかき混ぜた。




