三話8 血濡れの魔王
この土日が異常なほど忙しかったため、執筆が遅れてしまい本当に申し訳ありません!!!来週は遅くても日曜の夕方までには一話投稿させたいと思っております。こんな遅い時間になってしまい本当に遅れてしまい申し訳ありませんでした。
ルアスが創り出した広間で、ネロの身体を使うシャドはホロウと壮絶な死闘を繰り返していた。すでに牛頭は広間の隅で動かなくなっていた。
黒い瘴気が立ち込める中で、幾つもの蒼い目を光らせるホロウと、どす黒い瘴気に身を包んだシャドが何度も交差し、凄まじい衝撃波が生まれる。
そんな中、シャドは頬を赤らめ、目の前で怒り狂う魔物を見て笑みを浮かべる。
「この高揚感、僕に向ける明確な殺意。醜い獣の如き巨大な体躯。僕は何年、何年もの間、お前を殺すことを夢見たんだろう。そんな機会を与えてくれるなんて・・・ネロに付いて良かったよ!!!!」
シャドの意気揚々とした言葉を理解したのか、それともこれまでの戦闘で限界が来たのか、ホロウは広間を振動させるほどの怒声と共に今までの倍以上の速度でシャドに近づき前足をシャド振り抜く。シャドはそれに合わせるように前足を避け、相手の懐に入ると剣を振り上げた。
確実に入ったと思った一撃。致命傷にもなり得る攻撃はホロウの身体から伸びる触手に受け止められる。すかさず左の掌で腹部に掌底を撃つがホロウは微動だにしない。
その時、足元から剣を防いだ触手とは別の触手が足に巻き付くと、息を合わす様に剣を防いだ触手がネロの身体に突き刺さる。が、突き刺さった体は突如、霧状に四散すると周囲の黒い霧に混ざり合う。それは黒い瘴気で創り出した、質感、熱量までも本体と変わらない身代わりだった。
「黒き棘よ。殺意を包め。」
声がホロウに届く頃にはホロウの後方でシャドは手前に突き出していた。その手先から数本の黒く鋭い棘が伸びたと思えば一瞬で枝分かれを始め、一瞬でホロウの触手を串刺しにしながらもホロウをドーム状に包む様な広がりを見せる。
ホロウは棘が完全に囲う前に脱出しようと咄嗟に串刺しにされた触手を自身で引きちぎり飛び退くが、あらかじめそれを見越して動いていたシャドはほぼ完成し切ったドーム状の棘と棘の間から飛び退くホロウに対して強烈な回し蹴りを放つ。
「まったく、どれだけ生命力あるんですか。」
思わずシャドは苦笑する。シャドの放った渾身の回し蹴りを既に再生した触手に止め、ホロウは満足げに喉を鳴らす。
「まぁ、その調子で頑張ってくださいね。」
『!?』
その刹那、ホロウの胴体から無数の棘が皮膚を貫き現れる。シャドが掌底を放った際、小さな棘を埋め込み、それを魔力で増幅させたのだ。
棘は空中に居るホロウを串刺しにすると、それを合図にホロウを囲う黒い枝からは棘が次々と飛び出しホロウの身体を貫いていく。
どうにか棘の雨から抜け出そうともがくホロウだが、もがく四肢さえ串刺しされた所でホロウは空中に縫い合わされた様に動けなくなった。
それでも棘は未だにホロウを突き刺し、とうとうホロウが無数に重なった棘で見えなくなった所で棘は動きを止めた。
「本気で来てよ。」
嘲笑うように告げる言葉に棘の檻に囚われるホロウは呻き声を上げた。次の瞬間、広間の隅に居た牛頭の目が蒼く光ると一瞬で跳躍し、音も無くシャドの眼下まで迫る。
「はは、やっぱり持ってたんだね。」
シャドは蒼く光る眼光を持つ牛頭を見て呆れるように溜息をつく。混沌のシャドの能力の一つである混入。自身の魔力を生命体に潜める事でその生命体を端末とし、意識を端末と本体の間で自由に行き来する事が出来る。
本体に居る時、端末はほとんどの場合は端末化を理解せずに本来の生態に戻る。その際に端末の見た光景は断片的に本体の記憶に残る。しかし、端末は最大2体しか保有出来ず、本体が死ねば端末は個々で端末を増やせない。
本来ならばシャドだけの能力だが、シャドを吸収した事でホロウは混入を使えるようになっていた。
「その力、僕のなんですけど?」
『だからどうした・・・。』
「お前・・・!」
あまりにも衝撃的な出来事にシャドは顔を驚愕に染めながら広間の奥まで飛び退く。本来、レイス、ホロウ、シャドの魔物には声帯はあっても人間の喋る言語は理解できない。シャドはネロの体内に混入していた為に言葉が理解できるようになったが、ホロウは今、確かに『だからどうした。』と、口にしたのだ。
それはホロウにはもう一つの端末があり、それは人間であるということを意味していた。ホロウは肉体的には死んでいても精神的には死んでいない。さらに言えば肉体的には人間並みのシャドとは違い、ホロウはレイスの支援として作られたがそれでも戦闘力は高い。そして、この空間は今は冥界と繋がっている。
つまり、すでに肉体的に死んでいるホロウの身体は・・・。
「めんどうです。」
シャドはめんどくさそうに顔を歪めると、横の亀裂の奥で揺れ動く複数の蒼い眼光を目にし、シャドは深い溜息をつく。
『それ同じ・・・。』
音も無く目の前まで移動してきた牛頭の言葉にシャドは首を傾げる。
「どういう事かな?」
シャドの質問に牛頭ことホロウは朧げな口調で答えた。
『もう一つの端末が嫌な事を企てる・・・。』
「嫌な事・・・?ッ!?」
そこまで答えた所で頭に鋭い痛みが走る。それはシャドがネロの身体を使える時間が残り少なくなっている事と同時に、暴走する時間が迫ってきているという事だった。そして、暴走に近づくに連れて思考は冷静な思考から好戦的に変わる。
「ごめんよ、ホロウ。僕は今お前と喋るほどの時間が無いみたいだ。それにやっぱり姿が変わってもね・・・。」
シャドはそこで一度、間を置き、舌を出して答える。
「僕は君と喋るのが死ぬより嫌いみたいだよ。そしてネロもお前と喋るぐらいなら死んだ方がましだってさ。瘴気よ!!!」
『!?』
シャドの声と共に剣を床に突き刺すと、シャドを覆う瘴気から棘が突き出す。牛頭は突然の不意討ちをかろうじて避け、ホロウはその光景に困惑する。シャドの周囲に黒い瘴気が集まっていき、徐々に収束していく。
ホロウが着地する頃には今の今までなんの変哲もない服を着ていたネロの身体は黒紫の鎧に身を包み、両脇には二対の黒い巨大な大剣が宙に鎮座していた。
「出来ればネロの体力的に使いたくなかったんだけど・・・。行こうか、これがネロが出し惜しみなく僕を使った時の服装だ。君たちは一分も持たない。断言してもいい」
シャドはそう断言すると突き刺さる剣を抜く。その姿は、いつも笑顔のネロからは想像出来ない程に冷徹さを秘めて光る甲冑は本当ならばネロが本気で切れた場合にしか使わない。
シャドの力を最大限まで利用したその戦闘形態は自身の実力では無いとネロ自身が考え、使用を控えてきたからだ。今回の戦闘や、前回の戦闘では使う前に自身の魔力が低下し、暴走する危険を孕んでいた為、使用しなかった。
しかし、暴走すると決まっている今ならば別だ。存分にその力を発揮し、目の前の敵を滅ぼせる。シャドは眼下で様子を伺うホロウを見て一歩を踏み出す。
その一歩で魔王と言わしめる由縁と言わんばかりの禍々しい威圧を周囲に振り撒く、広場の入り口付近で待機していたロロやロボにまでその禍々しい気配を感じ取っていた。
それは魔物の二体も同じで、本体であったホロウは直観的にシャド目掛けて飛び掛かる。が、一瞬だけ黒い軌跡が見えると、飛び掛かった身体は宙で駒切りになった。
飛び掛かった勢いを残し、黒紫の鎧は血を浴びた。その姿はもはや魔王そのもので魔物であるホロウでさえその姿に恐怖した。そんな中、シャドは鎧を着てから一度も目を離さなかった牛頭のホロウに向けて血濡れの魔王は殺意と共にこう告げた。
「さ、次はお前だ。」




