三話7 覚醒
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できるだけ読みやすいように努力はしているつもりですが、皆さんのご指摘などを頂ければと思います!
ネロが刺された。そう私が感じた時にはネロの雰囲気は、がらりと変わっていた。それと同時にネロの背後で暴れ回っていた炎が掻き消える。
「ネロの邪魔しないでくれるかな?」
その声を聞いた瞬間、私の全身を得体の知らない感覚が駆け抜けていく。あれはネロじゃない。
見た目、声はネロなのに目に色は無く表情は子供っぽく声は普段のネロからは想像もできない程、冷めきっていた。
「危ないよ?」
「え!?」
私は突然目の前まで移動したネロに声を上げる。今の今まで目で確認していたネロが今は私を庇うように魔物二体の攻撃を防いでいた。一瞬遅れて焦る様に私の後ろに入るロボを見て、私が命の危険に晒されていたことを理解した。
でも・・・今はそんな事どうでもいいのよ。
「貴方・・・ネロじゃないわよね。」
鋭い視線でネロの様な何かを睨み付けると一瞬だけ驚くがすぐに微笑む。
「驚いた。この状況で質問できる君の図太い神経に驚いたよ。・・・そうだよ、僕はネロじゃない。よく分かったね。」
淡々と答えるネロの様な誰かは押さえつけられていた手を放して拍手をしてきた。その時には魔物の全身は黒い瘴気で覆われて、身動きが取れなくなっていた。
「・・・なら誰なの?」
「誰でしょ。」
真剣な質問に冗談で返す様を見て私は少し苛立ちを覚える。
「ふざけないでくれる?」
「おぉ、怖い怖い。でもごめんね、その事についてもネロが後でゆっくり喋りたいらしいんだ。まぁ名ぐらいいいか、僕の名前はシャド、下は無いよ。」
透かした様に喋るのは気に食わないが、ネロと関係のある人物?だ。嘘は言わないと考えた。
「シャド・・・ネロがそう言ったの?」
「言ったよ、ちなみにこの後この体は暴走するからそれも止めてほしいってお願いしてたよ。」
「暴走・・・?」
シャドの言う暴走の意味がわからなかった。その言い方はまるでネロの体が勝手に暴走するみたいな・・・。
「それはあなたが出てきたのと関係してる訳ね。」
「凄い推理力だ。そうだよ、僕が今からあの魔物を衰弱しきってるネロに変わって成敗するのさ。」
「ネロは無事なの?」
「勿論、それより頼まれてくれるかな?暴走を止めてくれるって。」
話を急がせる様に強引に進めるシャドがあまり時間が無い事を告げている。そして始終笑顔で喋るシャドだったが、その言葉だけは明確な意思があり、熱があった。
「いいわよ、でもやり方が・・・。」
「それは簡単さ、なるべく体を密着させればいい。」
「それって・・・抱き着けって事・・・?」
「そうだね、正面や背後は問わない。でも暴走状態のネロに抱き着くなんてルアスでも難しいんじゃないかな?」
「ルアスでも・・・!?」
ルアスでも難しいと聞かされ自分に出来るのか不安が過る。しかし。
「いいわ、私はネロの為に命は捨てる覚悟も出来てるの。」
胸に手を当てる彼女を見てシャドは困ったように笑みを崩す。
「死なれたら僕が殺されちゃうよ。」
「大丈夫よ、ネロも助けるし私は死なない。」
自信満々に告げる私を見てシャドは魔物達を見た。
「なら、片付けた後は任せたよ。」
「任せなさい。」
私の言葉にシャドは頷くと微笑んでいた顔が一気に真顔に変わる。そしてその時、魔物二体を束縛していた黒い瘴気が四散し、中からは怒号混じりの叫び声と共に牛頭の魔物が飛び掛かる。
「さぁ、僕が出てきたんだ。楽しませてよ。」
飛び掛かってくる牛頭を見たシャドは不気味な笑みを見せ、目の前から姿を消す。瞬間移動にも近い瞬発力だが、シャドの移動した後には黒い瘴気が舞っている。
「第一ラウンドだよ!!!!!!!」
黒い瘴気を目で追った先ではシャドの拳が牛頭の頭蓋を叩き割っていた。衝撃の余波に目を開けられない。そして、風が収まり目を開けた時には、牛頭の姿は無く、代わりに赤い血痕が広間の奥まで続いていた。
「え・・・・?」
そこで私はいつから居たのか目の前でこちらをじっくりと見つめるヌメヌメとした魔物の姿を見つける。正確には目なんて無く、こっちを見つめている様に見えるだけのはずだが、どうしても目を逸らせない。直後、言い表せない吐き気に襲われる。
「・・・ロボ・・・?」
吐き気が収まる頃には周囲に誰も居なくなってる。それにさっきまであった血痕も無くなっていた。そんな中、不気味に光を反射させるその生物はじわりじわりと歩み寄る。
「いや、ちょ・・・やめて・・・。来ないで。」
私はあまりにも不気味な外見に逃げる様に走り出す。広間の扉を開こうとするが固く閉ざされびくともしない。引き返そうと振り返ると。
「あれ?」
背後を振り返ると魔物は全力で追いかけているのだろが、足が遅い。言うなれば運動の出来ない少年の様な。
「これなら振り切れそう・・・!?い、行けそう!?」
そう考え再度、足に力を込め全力で走り始める。しかし、差は全く開かず、しかし、遠ざかりもしない。
「おかしいわ・・・なんで・・・?城内では大人にも負けないのよ!?まさか魔法?」
差が開けないことになにかしらの魔法かと疑いを抱きながらも懸命に走り続ける。しかし、差は縮まらない。その理由、それは城内の大人たちの手加減と言うある意味凶悪な幻惑魔法にロロは掛かっていたからだった。
走り続けるロロは不意に背後を振り返ると、正面で何か柔らかい物に衝突する。
「え・・・?」
恐る恐る正面を向くと、そこには今まで背後にいたはずの不気味な化け物が目の前に立っていた。
『アモ~~!』
そして、どこから現れたのか巨大幾つものサメ肌の様な歯がびっしりと備わってる口を開ける。反応が遅れながらもどうにか身を逸らすが、サメ肌のような口に左腕が飲み込まれた。様に見えた。咄嗟に魔物から距離を取り、飲み込まれたはずの腕を見るが、外傷は無く、粘膜が付着しているだけだった。
「・・・・?・・・・!?」
その時、異常に気が付く。食べられてない?そう口にしようとするが声が出せない。
「・・・・!?・・・!?」
どうして、おかしい。そう口にするがやはり声が出ない。と、その時。衝撃的な光景を目にする。
『いいな・・・この身体。』
その光景に硬直する。目の前に居た魔物は蛹を破る蝶の様に脱皮するとその中からは私に似せた様な少女が現れる。だが、それは見た目だけで、目は在らぬ方向を向き、関節は不自然に折れ曲がっていた。
「ッッッ!!!!!!!!!!」
声にならない悲鳴を上げる。あまりにも気味の悪いそれは折れ曲がった関節をどうにか動かし近づいてくる。
『お前、食べたら・・・もっと綺麗になれる。』
化け物と言っていいそれは自分と全く同じ声で喋りながら気味悪く笑う。そして右腕の肉が溶けるように床に落ちた。溶けた腕から覗かせたのは骨では無く魔物本来の骨格なのか、刃の様な形状をした骨だった。化け物はそれをこちらに向ける。
逃げようとするが動けない、足は小刻みに震え動く事を拒む。が、その震えが止まる。
『・・・・!?』
化け物は逆にその光景を見て硬直する。目の前の人間が自身の足に氷の刃を突き刺したのだから。刺したことも衝撃的だが、それ以上に人間が詠唱無しに氷を生み出した事に衝撃を受けた。
氷を突き刺し、恐怖を痛みに変え強引に止めた私はゆっくりと立ち上がる。
「・・・・。・・・・・・。」
当然、声にならない。相手の化け物も何を言っているのかさっぱりのようだ。でも、それでいい。もしこの言葉を聞かれたらネロどころか化け物にも引かれそうだから。
なんで私は逃げようとしてたのよ。勝てるかも知れないのに、それにルアスに教わったばかりじゃない。私は奇跡を起こせる魔法使い。昔、本で読んだことのあるどの魔法使いよりも強くなれる。そう思うことが強さに変わるんだと。
氷を引き抜き私は笑う。痛い、でも痛くない。これは弱い私が付けた傷じゃない。相手に受けた傷じゃない。私が弱い自分を殺した痛みだ。そう思うと痛みが気持ちよく感じてきた。
あぁ、なんか考えてることが変態だ。私は自分で自分を口を開けて笑ってしまった。
それが化け物には今まで殺してきた人間よりも怖かっただろう。唐突に、使えないはずの魔法で作った氷の刃を自分の足に刺して笑い始める。その光景を見た化け物は身動ぎすると、背を向け広間の出口にに向かって逃げようとする。
だが、私はそれを許さない。化物は突如、目の前に現れた氷の壁に阻まれた。
逃げないでくれない?あれだけ私を脅かしといて、はいごめんなさいで逃げれると思ってるの。というかこの空間の出口は広間の扉?まぁそんな事はいいわ・・・・・。
声に出せない分、胸の内で喋るが当然相手には伝わらない。でも相手は今からどんな事をされるか理解はしてるようだ。
なんせ私は今、人生で最も不敵に笑っている自覚がある。でも、自分の中から溢れ出る力を誰かにぶつけないとこの高揚は収まらない。どうやら私が上手く魔法を使えなかったのは優しさにあったみたいだ。
もし、失敗したら周りにどんな影響が及ぶかわからない。そんな他人を考える想いは無意識の内にストッパーになっていたのかも知れない。しかし、この空間ではそんな事気にしなくていい。
それになにより、私は今、自分の模倣で作られた哀れな自分を見て物凄く腹が立っている。
私って結構自己中心的と言うか我儘なのかも、だからネロの事も隅々まで知らないと信頼できないのかしら。でもごめんなさい。今は自己中心的で居させてね。と言っても聞こえないわね。
私はニコリと笑う。すると、逃げるように氷の壁をよじ登っていた化け物の目、口、体の節々から炎が噴き出した。全身から吹き出す炎に耐え切れなかった化け物は床に落ちると身を焦がし身悶える。しばらくのたうち回った化け物は脱皮するように自身の皮を剥ぐ。脱皮した皮は依然と炎が噴出しているが、最初の化け物の姿に戻っていた化け物は小さく奇声を上げる。
「脱皮・・・?、あ、声が・・・戻った?」
と、声が出せることに軽い喜びを感じた瞬間、隙を突いて化け物の鋭い骨が突き
刺さらない。その代わりに化け物の骨が木端微塵に砕け散る。
「これからは常時、防御魔法でも張ろうかしら。無理だけど。」
冗談のように笑う。ついさっきまで魔力切れを起こしていた身体とは思えないほど体は軽くなっていた。まだ魔力を蓄える力は弱いもののこの短時間で回復する量はアウロラの花故に出来る事だった。
「さて、私を真似た罪を償って・・・・?」
と、瞬きをしたその時だった。今の今まで目の前で身体の一部を破壊され、呻き声をあげていた魔物の姿が跡形も無く消えていた。
が、ロロは瞬時に氷の壁を塞ぐように凍らせる。よじ登るも越えられない。これで、逃げる方法があったとしてもそれが出来るなら最初からしているはずだ。
「てことは・・・。」
私はおもむろに床を足で鳴らす。
「・・・・!?」
身の危険を感じ、透明化を使っていた魔物が移動しようとする。が、すでに足は凍らされて動かなくなっていた。
「見つけたわよ♪」
嬉々として迫る人間を前に、魔物は自分より、目の前のこいつが化物だと考えた所で人間のサンドバックと化した。
「まず私を怖がらせた罪、ネロに歯向かった罪、私を汚く似せた罪、私を追いかけた罪、そしてこれは、私を前に進めてくれたお礼よ!!!」
白い焔、水流、風の刃、土の龍の順に私は本で読んだことのある魔術を試した。そして、お礼とは名ばかりの雷槍を突き刺した所で今までのダメージが一気に溢れ出る様に魔物は粉となって消え去った。
ふぅ。と、溜息をつくと同時に氷壁、土の龍、周囲で荒れ狂う水流を裂くように一本の道が扉までつながる。
「後片付け大変ね・・・。」
一人、自分で引き起こした広間の惨状に軽く引くと、隔離空間に残され私は自分の手で小さな炎を燃やす。
「でもこれで・・・ネロに近付ける・・・。」
そう言うと、小さな炎を握る。そしていつの間にか開いていた広間の扉から外に出た。
「ロロ殿!!ロロ殿!!!!」
ロボの声が聞こえる。
「戻ってこれたのね。」
瞼ゆっくり開き、魔物の作り出した空間から抜け出した事を確認すると一度、小さな息を吐く。そして目の前を見ると不気味に光る魔物が横たわっていた。
それを汚物を見るような目で見ると、見た目が気持ち悪いとの理由で魔物を空気で奥に吹き飛ばす様にイメージする。すると魔物は何かに殴り飛ばされる様に広間の奥に消えていく。どうやらあの空間だけの魔法じゃないようだ。
「な・・・・!?」
ロボが高速で吹き飛ぶ魔物を見て驚愕にも似た声を上げる。
「ん?どうしたの?」
「い、今の魔物を飛ばされたのはロロ殿で?」
「そう・・だけど・・・?それよりネロは!?」
思い出すかのように聞くと、ロボは広間の奥を指差した。その光景を見て息を呑む。
そこには黒い瘴気が立ち込めており、中には立ち込める瘴気よりも濃い瘴気を纏うシャドと、蒼い眼光を光らせたホロウの化け物同士の壮絶な戦いが目に写り込んだ。




