三話4 前向きな自分
「ネロ!!!!」
突如、目の前で倒れ込んだネロに駆け寄る。何度も何度も声をかけるが返事は無い。そればかりか、肌からは次第に熱が無くなっていく。
「ネロ殿の心音が・・・途切れた・・・?」
背後で驚愕の声と共に目を見開くロボを見て私はネロの胸に耳を当てる。
「なんで・・・。」
本当に心臓は止まっていた。
「ネロは死んだ。」
「なんでよ・・・。」
「わてが殺した。」
「なんでよって聞いてるの!!!!」
「邪魔じゃったからの。」
「ふざけないで!!!!!!!」
声を荒げるのに対してルアスは冷静に言葉を重ねる。
「ふざけておるのはロロの方じゃろう。」
「え?」
「ロロは今までネロに何も出来ていないのにそれを直そうとしてないじゃろ。ここ数日、わては可能な限りロロに魔法の数々は見せてきた。しかしロロは凄い凄い言うだけで一度もわてにネロの護れる術を教えてとは来んかった。」
「今はそれよりネロを!!。」
「いいから聞け。ならもしわてが敵でネロを殺そうとしたらロロはネロを護れるか?」
「そ、それは。私にはそれほどの力が無くて・・・。」
「護られてるだけの奴が、護ってくれる奴と対等になるには護れる側に立たんと、対等になる権利さえ与えられぬものじゃ。それにロロにはアウロラの花の保持者じゃ。わてと同等、互角以上の力を持っとる。」
「そんな訳・・ないわよ・・・。それにもうネロは・・・本当に死んじゃった・・・の?」
突如にしてネロが死んだ事態に着いてこられなかった思考がようやくネロの死に追いつく。
「本当にそう思ってるんじゃな。ちなみにネロは死んでるだけでロロの力を使えば生き返るぞ。」
心が折れかける中、ルアスの言葉にロロはルアスに縋りつく。
「どうやるの!?どう生き返らせるの!?教えてよ!!」
しかし、ルアスは元々そこにはいなかったように姿を消し、ロボの横に現れる。
「すまんがそなたも邪魔じゃ。」
そう言ってロボに触れると、次の瞬間にはロボは姿を消していた。そしてルアスはロロに向き直るともう一度口を開ける。
「言わばそれは強い呪いの類じゃ。生命活動を一時的に止める。一般的な死よりは体の劣化は遅いが、後10分ほどで身体に影響が出るはずじゃ。あと、その呪いを解くのはわてでも無理じゃ。それこそ奇跡でも起こさん限りな。」
「そんな・・・。」
「さぁ、どうする?奇跡でも起こしてみるか?それとも諦めてネロを見殺しにするかの?そなたが決めろ、奇跡の魔術師よ。」
この状況で微笑むルアスの顔が私には悪魔の様に見えた。
奇跡なんて無理よ、私はただのアウロラの花を所持するだけのなんの力も無い。ずっと城の中で自分は特別だと思い込んでただけの無能な女。外に出て自分の弱さ、愚かさ、浅ましさが身に染みるほどわかった。
ネロがどれほど強くて私が近づくことすらおこがましい存在だということにも・・・。それなのに、ネロはこんな私なんかと一緒に・・・。
と、そこでロロはネロの言葉を思い出す。いつも前向きな私が好きだって言ってくれたあの言葉を。
その言葉を思い出した途端、自分の中で渦巻いていた負の連鎖が止まり、代わりにネロに対する感情が湧きだした。ネロが好き。それに私は貴方の好きな私でいたい!だからネロ、私が貴方の好きな私で居られるために今だけ前に歩ける力を貸して・・・どんなピンチでも、自分の危険を置いて他人を救う、その力を。
その時、玉座に置いてる水晶と目が合った気がした。水晶と目が合うはずなんてない。しかし、引き寄せられるように水晶に触れた瞬間、私の手にネロが触れた気がした。その感覚、力が湧き出るようなこの感覚。ネロと触れ合うことが私は何よりの力になった。
「あぁあ、なんだか泣きそうになってきたわ・・・・。何が無能な女よ・・・なんの力も無いよ。ふざけんじゃないわよ。私は世界最初で最後のアウロラ保有者よ!!最近、ホントに悩み事ばっかで自分の性格を忘れてた気がするわ。後ろ向きな考えじゃ女が廃るわ!!」
力強い言葉と共に振り返る。それを聞いたルアスは、姿を小さな幼女に変えるとロロに後ろから抱き着いた。
「答えは決まったかの?」
「えぇ。私は今までネロに救われてきた・・・今まで何度も何度も命を救ってくれた。辛い時でも優しくて・・・だから私も護りたい!!ネロの傍に居たい!!私はネロが世界で一番好きだから!その為だったら奇跡でも何でも二度や三度、起こして見せる!!!!」
「その心意気は良し。今のロロならばわての助言で十分じゃろ。呪われた王女を助ける為には・・・どうすればいいんじゃった?」
今までの冷徹な声とは打って変わり、普段通りに戻ったルアスは、そう言い残すとスゥーと姿を消した。広間の中で一人残った私はネロに近寄るとそっと抱き上げる。すでに体からは体温が無くなり、氷の様に冷たくなっていた。これで生き返るとなると、本当に奇跡を起こすしかない。
「いい加減にしなさいよ・・・。貴方まだ私に何も話して無いじゃない、ありがとうもまだ言えてないのよ・・・?それに直接伝えれてたあなたはいいかもしれないけど、私の気持ちはまだ伝えられてないのよ。だからね?早くこっちに戻ってきて・・・。」
私は目を閉じ、唇を重ねた。淡い光がネロを包み込む。自分の中の何かがネロに流れ込む感覚はどこか気分が安らいでいく。そして、安らいでいくと、私は要らないことまで考え始めた。
今思えばネロと一週間で口づけを交わしすぎな気がする。で、でも仕方ない事よ。命に関わるんだから!それに・・多分、相思相愛だし!?ていうか全部私からじゃない!?どうしよ!痴女だと思われてるかも知れない!!!
唇を重ねながらも悶々と考え事をしていたが。ふと、目を開けるといつから目を覚ましただろうか、ネロと目が合った。そこで私はかなりの時間、ネロとキスをしていたことに気づくと、赤面しながらも動揺を出さないようにゆっくりと顔を上げる。
「お、おはよ・・・。」
気まずそうに口を開くネロに私は更に顔を赤面させた。
「起きるの遅いわよ・・・。」
「ごめん・・・いつ声出したらいいのかわからなくて・・・。」
「いつから起きてたのよ!!!!!!」
「結構前。」
申し訳無さそうに答えるネロをみて耐え切れなくなった私は立ち上がり顔を隠す。
「死にたい・・・。」
「追撃する様で悪いが、話とか全部聞こえてたりする・・・。」
「・・・・泣きたい・・・。」
そこで追撃する普通!?
「で、でもこちらとしても男からキスしたことないのは情けないというか・・・。命に係わる事だとしても普通は俺から行かなきゃいけないのに・・・」
自身で地雷を踏んでそれを必死にフォローを入れようとするネロの優しさはいいのだが、さっき考えていた事を思い出すと、結局地雷しかふんでいない。
「フォローになってないわよ・・・・。」
ネロによる優しいメンタルブレイクを味わった私はその場でガクリと膝を折って力無く座り込んだ。




