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王女の側近騎士は実は〇〇〇だった!?  作者: 十道 鉚
真実と偽りの夢
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?話? 『この夢、私とあやつの出会いやねぇ』 前編

「・・・まじふざけんな・・・」


薄暗い月夜の森の中を足を引きずりながら、全身が血まみれになりながらも俺は背中にロロを背負い腕に両腕を無くした狼男を抱えながら町明かりを目指してひたすら足を前に踏み出す。


ロロと出会ってふざけんなってすげぇ言ってる気がする。俺は出来るだけどうでもいいことを考えることで気を紛らわす。

どうにか爆炎に乗じて逃げたがすでに体は限界を超えていた。歩く力すらとうに残っていない。今こうして歩けているのさえ奇跡なレベルだ。これまで幾数にも渡る死の瀬戸際に立たされた事がある俺も血を失い過ぎて動く身体も動かない。


ロロだけならともかくなんでコイツまで連れてきてんだよ・・・こっちは血が無くて死にそうだってのに・・・。


虚ろな目で自分のお人よしさを笑うと俺は糸の切れた人形の様に地面に倒れこむ。


あぁ、まじでやばい。身体が言う事聞かない所か自分の物じゃ無いみたいな感じだ。寒い・・・暗い・・・・・俺は・・・こんな所で死ぬのか・・・・?


俺は薄れゆく視界の中で背後から地響きと共に何かが近づいてくる。見なくてもわかる。あいつだ、あの爆発を食らっても生きていたって事か・・・。


俺は薄れゆく意識の中で自分の情けなさを笑う。全て無駄だった。あれほど憎悪、努力、復讐、執着を糧にして手に入れた力は人一人守れやしない。結局俺は親父みたいにはなれなかったって事か・・・。


『情けないの。』


諦めて全身の力を抜こうとしたその時、聞き覚えのある声が響く。それはロロと会うよりもずっと前に、まだ俺が親父を無くしてそう経っていないとき・・・。


「・・・幻聴まで聞こえたら終わりだろ・・・。」


『お前さんはいつも面白い事言いよるなぁ。』


「喋り方まで・・・似てやがる・・・。」


『わてはここにおりますよ~?』


独特の口調と共に触れるはずの無い温かい手が頬に当たる。


俺はその手を掴むことも出来ずどうにか首だけ動かし見上げると、そこには腰まで伸びる灰色の髪を持った女性が微笑んでいる。


「幻覚・・まで見たら・・・ほんとに・・・終わり・・・だ・・・・。」


しかし、俺の意識はそこで完全に途切れた。




『あらら、これは大きな借りになりそうやねぇ。』


ネロの意識が切れるのを感じた浴衣姿の彼女はクスクスと笑いながらこちらを見つめる異形に気が付く。それは狼としての形も保てず所々から血肉を見せる怪物を見て彼女は笑顔を消す。


『借りを作る機会を作ってくれたお主には感謝しとるで?・・・でもな、それとこやつを痛めつけた礼をせんのは別やで?』


彼女は短く告げると小さく息を吐くだけでしばらく化け物と見つめ合っていた。しかし彼女はおかしげに首を傾げる。


『なんや?もうええで?あぁ、罪の意識で動かんかったんか。わざわざ動かんといてくれてありがとな。』


彼女はそう言いながら浴衣の裾をはらい袖で口を隠すと『よう斬れたわ』声に続けてフフッと小さく笑うとネロの元に歩み寄る。その頃には異形はただの肉塊に成り果てていた。


『さて、大事なこ奴とその仲間達を運ぶとしましょか。』


彼女は最後にそう言い残すとネロやロロに触れていく。すると3人を触れ終わった彼女は文字通りその場から姿を消した。




俺は死に行く中で長い夢を見た。もう20年前の出来事を。俺の人生を変えた少女との出会いと別れの記憶が夢となって。


山の奥深く、周囲には魔物と呼ばれる生物が闊歩する森で俺は独り木を背に項垂れていた。この森に入ってから約一年が経ったが目立った外傷は無く、腹が減れば魔物を狩り、食らう生活を続けていた。


いずれ魔物に殺されるのを期待していたが一向に殺されることは無かった。周囲は常に数匹の魔物がジッと俺を見つめてくる。しかし、自分からは進んでこちらには来ない。既に仲間の一体が俺の周りに掛かる原因不明の黒い瘴気に突如、串刺しにされたからだ。


そんな中、彼女はいつに間にか俺の目の前にしゃがみこんでいた。


『お主、死にたそうやの。』


不思議そうに俺を覗き込む浴衣姿で灰髪の少女、それが俺とルアの出会いだった。見た目は幼女そのものだが、目は鋭く、俺の全身がコイツは危険だと警告する。


『関係ないだろ・・・。』


だが俺は少女に鋭い殺気を放ちながら答えた。しかし、彼女はその様子を見て怖がるばかりか逆に「決めたの・・・。」そう短く言うと俺の肩に触ろうとする。


『触るな。』


威圧する様に睨むと、周囲の瘴気は彼女を排除しようと包み込む。だが、瘴気は目標を見失ったかのように飛散すると、そこに彼女の姿は無かった。


『酷い事するのぉ。』


背後から声と共に突然抱き着かれ俺は困惑する。俺は今まで木寄りかかっていたはずだ・・・。なのに今はその木は切り株と変わっている。


『おま・・・!』


『あんまり力尽くはやりたくないんやけどな・・・。』


彼女は笑みを浮かべ俺の目を手で塞ぐ、すると謎の浮遊感に包まれる。それは実際の感覚で事実俺は突如地面に穴が空いたように真っ逆さまに落ちていた。


『は・・・?』


今、落ちていたはずの俺はなぜか広い広間に立たされていた。周りを見渡しても今までいた森の面影は無い。だが、地面に落ちる落ち葉が夢でないこと・・・。


『なぜ死にたげな目をしてるんや?』


少女の声が広場に響く。声の主は広場の奥でごくごく普通の家庭にもあるような木の椅子に足を組んで腰かけていた。


『お前に関係ないって言ってるだろ?まずここどこだよ、元居た場所に戻せ・・・じゃねぇと・・・。』


『じゃないとなんや?』


『ここで首切って死ぬぞ。』


俺は親父の形見でもある剣を自分の首筋に当てる。


『やめいやめい、主じゃ死ねんよ。』


呆れたような口調と共にあくびをする少女を見て俺は首筋に当てる力を更に強める。すると首筋から血が滲み出る。


『俺は本気だ、早く元の場所に戻せ。』


本気だった。元々森で死のうがここで死のうがほぼ同じ事だったが、ここで死ぬよりは魔物共に食われ方が今の俺にはお似合いだ。


『だから死にたいなら早くやってみせよ。』


少女の安い挑発に乗っかる様に俺は力一杯剣を押し込む。しかし、いつまで経っても俺の首が斬れることはなかった。その様子を見て少女は椅子から立ち上がると消えるかのように俺の横に移動するとあざ笑う。


『滑稽じゃの。』


それもそのはず、俺の首に向けられた剣は黒い瘴気により阻まれ、肉が少し切れた程度で止まっている。実はこうなる事は知っていた、そうでもなければ俺は今頃あの森の中で勝手に自殺していただろう。


この邪魔でしかない黒い瘴気はレイスの対であるホロウと呼ばれる魔物を倒した後から発現するようになった。自身で制御は出来ず、自動的に脅威を排除したり俺を護る、勿論自身に対する自分の攻撃も全て。さらに生命活動の危機に陥ると身体を乗っ取ろうとし、町を目指し始める。


そのおかげで俺はこの一年、死ぬことも出来ず半ば死んだ様な生活を送る事になったのだ。


『で?俺をどうすんだよ。』


剣を落とすと諦めるようにその場に腰を下ろす。すると少女はしばらく俺を観察するように一周すると、顎に手を当て、ブツブツ独り言を言い始める。しばらくすると独り言を言うのをやめ。


『まずは、そうじゃな。ついて来るがいい。』


そう言って少女は俺の手を掴むと早歩きで俺を引っ張っていく。少女に連れられるように広間の巨大な扉を潜るとそこは広間からは想像できない程ただの木で出来た家だった。後ろを向いてもそこには普通の扉があるだけだった。暖炉の火で照らされた室内を見るが内装も一般の家にあるような家具ばかり。しかし、ただ暖炉の火だけは見た事の無い青い炎が燃え盛っていた。


『どうなってんだこれ・・・。』

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