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王女の側近騎士は実は〇〇〇だった!?  作者: 十道 鉚
 旅立ちの王女
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二話7 ネロ・ジグローグ

腹に蹴りを入れた直後、狼人間は盛大に血を吐きながら後ろに吹き飛ぶ。さらに蹴りによる余波で後ろにいる全員のフードがなびくと全員の顔を確認する。


「まず俺を弱者呼ばわりする時点で軽視してんだよ。てか、お前らマジで誰だ?ルアスが仕向けた奴らじゃないよな。」


しかし、俺の問いかけに誰も答えない。後ろにいる狼男たちは目の前でどうにか倒れるのは耐え大量の血を吐き膝を着く仲間の姿に目を奪われていた。その姿を見て後ろに居た狼人間の雰囲気は一瞬で鋭い殺意、臨戦態勢に変わる。しかし俺はそんな事は関係無いとすでに膝を着く狼人間の顔に向けて再度、右足で蹴りを放ち息の根を止めようとしていた。


いくら無尽蔵に再生できても頭を破壊すれば問題無いと考えたからだ。だが、俺の蹴りはギリギリの所で後方に居た狼男が二人係で抑え込む。即座に余裕を捨て全力で止めに入るのはさすがと言ったところ。しかし俺の本命はこいつ等だ。元々一匹だけの予定が二体とは一石二鳥だ。


まずはここで二体の動きを止める!俺はそう考えながら振り切る力をさらに強めようと足に力を入れたその時、俺の軸足が突如掴まれ床に沈む。その正体は一番最初にロロに襲い掛かった狼男だった。そしてそれと同時に膝を付いていた狼男の紫色に光り始めた右手による刺突が迫る。が、俺は全力で右腕を振り抜・・・。


しかし、俺の右手は止まる。全力で右腕を振り抜いた場合、俺を拘束する狼男ごと吹き飛ばせる。しかし、そんなことすればロロを巻き込みかねない。そう考えている頃には俺の横腹には狼男の手が深々と突き刺さっていた。


「ッ!!!!!」


声にならない激痛が走る。俺が言葉を狼人間に問いかけてから横腹に手刀が突き刺さるまでの時間は約1秒と50。ロロにはいきなり俺が刺されたように見えているはずだ。


「ネロ!!!!!!!」


ロロの叫びを聞いた俺は右足を狼男ごと全力で床に向けて振り下ろす。振り下ろした衝撃で床が崩壊し狼男は態勢を崩した。その隙に俺はロロを抱きかかえると崩壊する窓を突き破り外に飛び出だし、俺はそのまま路地裏を走り出した。


俺は路地を不規則に走りながら森を目指した。敵が予想以上に難敵だった、恐らく最初に吹き飛ばされたのも演技。むしろ軽視していたのは俺の方だった。まさかルアスの加護を突き破るほどの魔力とは完全に自身の油断が招いた結果だ。


あぁ、怪我するのは何年ぶりだろう。俺は久々の物理的な痛みと自分の油断に苦笑する。抱きかかえられるロロは止めどなく血が溢れる横腹を見て心配そうな顔を向けてくる。


「ネロ・・その傷・・・。」


「大丈夫、軽い。それよりロロ、防御魔法は使えるか・・・?」


完全に虚勢だった。突き刺さった刺突には痛覚倍加付与も付いていた様で横腹が今も剣が刺さったままのように痛む。


「お父様から教えてもらった防御魔法が・・・。」


「ダールの防御魔法・・・それは助かる。ロロ!!今すぐその防御魔法を自分に掛けろ!」


「でもネロ貴方が怪我してるのに!」


さっきまで俺に対して恐怖さえ抱いていたロロはそれでも俺の心配をしてくれていた。


「俺は大丈夫だ。それに・・・正直、ロロを狙われて人質にされるのが一番危険だ。」


今までロロは俺の優しさにも不安を感じていたらしい。それなら正直に足手まといだ言った方がいいと考えた結果が今の言葉だった。その言葉をロロに伝えるとほぼ同時に町を抜け森に入るが、背後からは以前、黒い影に真紅の眼光を光らせる追跡者が着実に近づいて来ていた。


「そうよね・・私が足手まといだから・・・。」


情けない声を出し自分を責めるロロに俺は言葉を声を荒げて否定する。


「違う!!!」


荒げる声にロロが驚くように身体を縮込め顔を埋める。その姿はどこか昔の自分が重なった。親父を、大事な仲間を、友達を無くしたあの頃の俺に。そこで俺はようやく気づく、今のロロ姿は昔の俺だ。


最愛の父親による実質的な処刑宣告、そして殺意だけの死の恐怖。この出来事をなんの思いも無く受け止めれる訳がない。唯一の助けを求めた俺はロロを安心させる答えを出せていない・・・。今日の宿の一件、俺に言ったあの言葉は俺が未知の力に脅えていた時に言った言葉だ。俺は大丈夫だったがロロはいわば巣立ったばかりの鳥だ。なのに俺は・・・不安に押しつぶされたのも全て俺の責任だ。


俺は今も顔を埋め震えるロロを見て改めて自分の身勝手を呪う。


「ロロ、今回は全て俺の油断が生んだミス。ロロは何にも悪くない。だからそんな顔をするなよ・・・俺が・・・。」


なぜロロに側近騎士にされるのを断れなかったのか、ダールの陰謀に俺が自身の国を捨ててまでロロを守ろうとしたのか、今、俺が感じたロロの感情があの頃の俺と同じなら、世界が地獄に見えるロロを。自分で自分を壊そうとしているロロを見た今ならわかる。


「俺が・・・俺が好きなのは元気でマイペースで意地っ張りで何でも知ってるように見せる態度やいざとなったら頭が真っ白になるいつも隣に居るだけで安心する・・・ロロが好きだ。」


突然の告白を聞いたロロは目を大きく見開ける。そう、かつての俺も自分を自己嫌悪のあまり自分自身を殺したくなったり壊したくなった。でも、そんな時に理由はどうあれ俺に生きる勇気をくれた奴がいた。だから俺もロロに言おう。


「いつもは強気な口調の癖にちょっとでも焦ったり想定外の事が起きたら弱気になるロロが好きだ。実は凄く食い意地が張ってて実際に食う量がおかしいのに見た目は可愛いままのロロが好きだ。初めて出会った時はわからなかったけどこの数日を通して分かった。俺はいつも前向きなロロが大好きなんだよ、完全な一目惚れだ。だから無くしたくなかったんだ。だから俺の大好きなロロを壊さないでくれ・・・。」


俺の本音を聞いたロロは少しの間、俺を見つめると顔の頬を緩めた。


「ネロ・・・。わかったわよ。今は貴方を信じるわ。今はね!でもちゃんと後で説明しなさいよ。でも今それ言うの?そのせいで頭の中グチャグチャのままで防御魔法なんて無理なんだけど・・。」


「でも今じゃないとロロがロロじゃなくなりそうで・・・。」


「あ、でも、できるかも知れないわね。」


思いついたように答えるロロはなぜか不敵に笑う。


「どうやっ・・・。」


不意に俺の言葉を遮るようにロロは唇を重ねてきた。突然の出来事に俺はその場で全身が固まり足を止める。俺が動きを止めてもしばらくの間キスを交わしてると次第にロロの身体が青く光を帯びはじめた。


「出来た・・・。」


さらに眩い光を放つようになったロロは目をそっと俺から離れる。


「昔ね・・本で読んだ事があるの。最も愛する人物と繋がっている最中は一番集中できるって。」


頬を赤らめ恥ずかしそうにするロロを見て俺は困惑する。


「それって・・・。」


「今はいいの、私は大丈夫よ。それよりいい加減あの犬人間をどうにかしないと。」


ロロの指差す方向には森の影から真紅の眼光が赤い線を引きこちらの様子を伺っていた。


「それも・・そうだな。俺もいい加減、腹の借りを返さないと。」


「こっちは多分・・・いえ絶対大丈夫よ。ネロ、貴方の全てを教えてくれるっていうなら手始めに全力を見せなさい。」


上から命令口調で物を言うのを姿を見て安堵する。今、目の前で喋っているのは不安や自己嫌悪に押し潰された弱気のロロじゃなく、いつも強気で我儘な俺が好きになったロロだった。


「任せろ、まずはロロの騎士の全力見せてやるよ。」


俺はそう言い放つと剣を構え深く深呼吸をする。もう手加減もロロに嫌われないように見繕うのも終わりだ。今まで隠し通してきたのも曝け出そう。だから手始めに今はありのままを。今ここにいるのは自分を隠し通そうとする身偽りのネロじゃない。


ただ一人の少女を護ると決めた世界で魔王と呼ばれ続ける男、魔王ネロ・ジグローグだ。


すると俺の覚悟に呼応するように自身の魔力、黒い瘴気が体からあふれ出す。



「どこからでも掛かって来い。遊んで遊んでやるよ、野良犬が。」


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