二話5 来訪者
「ちょっと~、デレデレしすぎじゃないのぉ~!?」
俺は宿の一室でロロの両手で頬を限界まで引っ張られていた。ついさっき店を出た俺とロロは近くに手ごろな値段の宿があったのでそこで泊まる事になったのだが・・・。部屋に入った途端、「店の店員にデレデレしている」などと変な言いがかりをつけてきた。
「どこをどう見たらアレがデレデレしてるように見えんだよ。どちらかと言うと迷惑そうな雰囲気出してただろ!?」
「そうかしら?私には貴方が『今夜一緒に過ごさないか?』『私でもよければ・・・。』『OH・・・すまない、そういえばアイツが居るんだったよ。また今度でもいいかい?』『喜んで!』ここで握手を求める。『すまない、君の手に触れるのは次会う時までお預けだ☆』
みたいな話をしてると思ったんだけど?」
「俺どんだけたらしなんだよ・・・。なんだよ君の手に触れるのは次会う時までだ☆って、カード返してもらう時に思いっきり手が触れてるからな。」
「そんな話で誤魔化そうとしたって許す気は無いわ。」
「じゃあどうしろって言うんだよ!!ロロに払わす訳にはいかないだろ!」
「どうせ、この後私が寝た後にあなたは浮気をしに闇夜の町に消えてしまうのでしょ?今ここで殺してやりたくて・・・!!」
大袈裟な動きをするロロを見て俺は少し昔に見た有名な演劇を思い出す。俺はそこである事に気づく。ロロがこの部屋に入ってからの言葉が一語一句、動きが前に見た演劇にソックリな事に。それに気づいた俺は。
「待ってくれ、ハニー、俺がホントに愛してるのは君だけなんだよ。どうかそんな怖い顔をしないでくれ。君は笑顔が一番さ。」
俺はうる覚えだが演劇で聞いた役者の真似をし始める。それを見たロロは今までの表情とは一変し笑い出す。
「アハハハ、よくわかったわね。ネロもこの話知ってたのね。かなり小さい頃、お父様に連れて行ってもらった演劇の場面に当てはめたらピッタリだったのよ。」
何が目的かわからないが、本当に演劇の真似事だったらしい。俺は安堵しつつも苦笑いを浮かべた。
「ハハ、俺も見てたからよかったけどもし知らなかったら演技ってわからねぇよ・・・。本気でロロが・・・。」
「別に気持ちまで演技って訳じゃないけどね?」
「は!?」
気持ちは演技じゃない!?それってやっぱり怒ってるって事だよな?いや、待て待て、それなら俺を殺したくてって・・・やめよう。深く考えるな・・・・いやでもなぁぁ!!!前の敵みたいに結晶浸けとか嫌だしなぁ!!
唐突に衝撃的な事実を口にされ思考を巡らせ固まる俺を差し置き、ロロはおもむろにコートを漁り出す。
「おいお前は何か?気を抜いたら服を漁ってしまう癖でもあるのか?」
バルネスタの門前でも然り、ロロの漁る頻度はかなり多い。荷台に乗せてもらっていた時も、俺が目を放すと積み荷を漁ろうとしていた。
「今回は・・・違うわよ。どこに・・・あった!!!」
ロロはお目当ての物を見つけたのかそれを取り出した。
「あぁ、それか。大したものじゃないぞ?」
ロロが持っていたもの。それは店やここに入る時に使ったカードだ。
「さすがに外の世界に無知な私でもカード一枚でご飯が食べれたり宿に泊まれるのがおかしいことぐらいわかるわよ!さぁ言いなさい!!さっきネロが行った愚行の罰よ!!」
「愚行って・・・ロロの考えが愚か・・・。」
「つべこべ言わない!」
これ以上言えば本当に結晶漬けにされそうなので俺は口紡ぐ。
「・・ギルドカードだよ。」
「ギルド・・・カード?」
「そう、ギルドカード。簡単な説明がいい?難しい説明がいい?」
「詳しく。」
「わかった。このカードはギルドって・・・ギルドはわかるよな?」
「それぐらいわ。世界それぞれの国の寄付金で成り立っている組織ね。世界中の人々が送り付ける依頼を仕事と言う役割を付けてギルド加盟者、冒険者にギルド側から依頼する事で依頼主の問題を解決する。それがギルドよね?」
「だいたい正解。そしてこのカードは話がいわゆるギルド加盟者の身分証明書みたいなものだな。依頼をこなした報酬金をギルド本部の換金所に貯まった額を現すカードで。これの中にはごく小サイズの遠隔魔石が散りばめて埋まってるんだ。その石が一か月ごとにギルド本部と更新して何ルビ貯まってるか、何ルビまでなら使えるか更新してくれる。
あとギルドカードにはそれぞれランクがSからDまであってそれぞれ一か月で使える額が決まってて、Sなんかなれる奴は世界に10人といないが限度額は無限になる。つまり、限度額までなら換金所までわざわざ金を取りに行かずにお店で払えるんだ。その店の事をギルド加盟店って言うんだけどまだ試験的で多くの店は対応してない癖に定価より多く金を払ったりと不便もある。」
俺の長々とした話を真剣に聞くロロが手を上げた。
「はい、先生。話に纏まりが無いのもそうですが。もしギルド加盟店が無く手持ち金も無いようなカードに頼るネロがいたらどうするんですか?」
「完全にカードに向けてじゃなくて個人に質問してるよな!?だが安心なされい!一つの町にはギルドが管理する換金所がかならず一つはあるから俺がお金に困らないって言ったのはそういうわけだ。あと!俺は毎回ちゃんと一日過ごせる金を持ってる。」
「どこに?」
「それは企業秘密。」
「ふ~ん。で?逆に簡単に言えば?」
元より興味が無い様に話を進めたロロに若干ながらの怒りを感じながらも。
「げ、限度額までなら金を持ち歩かなくても大丈夫。」
「でも身分証なんだったらギルドに報告されたら自動的にお父様の所にも知られちゃうんじゃない?」
「大丈夫だ。ダールは俺がギルドに入ってることを知らない。」
「でもさっきネロがカードを出した時、周りの人たちの反応凄かったわよ?」
「ま、まぁ確かに・・・。」
「そのカードのランクってどれぐらいなの?」
「・・・・S・・・・。」
「はぁ・・。まさかやけにSは難しいって言ってたけど自分がSってことを密に自慢してたのね・・。」
「だが実際Sになるにはそれ相当の実力が・・・。」
俺が言い訳をしようとしたその時、外の廊下から大勢の足音が聞こえてくる。その足音は俺達の扉の前で止まる。
「なんだ・・・。」
「そりゃそうよ。私がなぜかあれだけ注目された後にその片方が世界で?笑10人といない?笑カード持ってるだもの怖いもの、そりゃ押しかける理由には十分でしょ?」
「そりゃおかしい、Sランクのギルドカードでも、ランクは非表示、限度額も隠蔽魔法で本人しかわからないはずだ。」
「じゃあこの外の連中は何よ?」
迷惑そうに扉を指差すロロに俺は素直な言葉で返す。
「さぁ・・・・。」
俺は苦笑いと共に首を傾げる。




