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俺、異世界転生しました。  作者: tama
魔闘会に向けての訓練
8/18

8,俺、泊まりました。

 生徒たちは下校のチャイムと共に学園の敷地を離れていく。上を見上げると、太陽の沈みと共に、ユグドラシルが赤く輝いて、美しい。

 さて、俺はというと。


「ここって全寮制じゃないんだな。」

「うん。」

「いや、普通さ。学園ものって言ったら全寮制じゃん!?なんでここはないのよ!!空気読めねぇのか!?おいっ!!」

「お前の言う学園ものの意味が分からないが、とにかく今日はどこか宿を探すしかない。」


 寝泊まりする場所が無く、立ち尽くす俺と、ナビィ。こうしている間にも、学園内の生徒はどんどんと減っていく。


「ホテルとか無いのか?」

「あるが、お前今リルもってねぇだろ。」

「えー、お忘れの方も多いと思うので、一応説明。リルとはこの世界の共通硬貨です。」

「誰に向かって言ってんだ?」

「この作品を読んでいただいてるご親切な読者の皆様に。」

「だからどーゆー意味だよそれ。」


 すると、俺の背後から一つの影。


「……わっ。」

「どぉうえはぁっ!!!?!?」

「わ、驚きすぎ。」

「な、なんだ、伊波か。はぁ、びっくりしたぁ。」


 俺に『後ろから背中を叩いてわっ』をされて全身を使って盛大に驚かせた人物は、銀髪美少女こと伊波志穂である。


「こんなところで、どうしたの?」

「え?い、いやぁ、別に。」


 帰る場所が無いなんて、恥ずかしいからな。一文無しとも思われたくないし。べ、別に俺のプライドが許さないとかじゃないんだからねっ!


「……帰る場所がない……とか?」

(するど)っ!!……あ。」

「その反応……図星だね。」


 くっ……てか、マジで鋭いなこいつ……。


「まぁ、そーなんだよ。ここに来たばっかでリルもないし…。困った困った。はは…。」


 思わず乾いた笑いをこぼしてしまった俺。

 どしよ…絶対笑われる。うわぁー、恥ずかしい!


「じゃあ、家来る?」

「いや!そんなに…笑わないでぇーーー!!ってえええええええ!?!?」


 爆弾発言しやしたぜこの人!!


「え?え?い、良いの!?」

「別にいい。」

「でも、ご両親の許可はとれてないだろ?」

「ううん、私、両親いないから。」


 あ……なんか、聞いてはいけないことを聞いたかも…って


「アウトーーー!!!」

「…よく叫ぶね。」

「まてまて!両親いない!?そんな状況で男連れ込むとかなかなかだなあんた!!まだ会って一日も経ってないんだぞ!?」

「うーん…まぁ、なんかしたらなんかしたで…おっけ。」

「おおおおおい!!?ダメだろそれは!?」


 ったく!俺にかなちゃんという彼女がいなかったら120パーセントついていって犯罪を犯してたとこだぞこれ。


「でも、困ってる。」

「そ、それはそうだけど…。」

「大翔。今の状況じゃ、こいつの家に泊めて貰うのが懸命だ。夜からは魔物も狂暴になるし、何よりお前はまだ魔法が使えねぇじゃねぇか。」


 ナビィが横から口出ししてきた。

 それもそうだけどさ…。


「ほら、そこの妖精さんの言う通り。」

「…ほ、ほんとに良いのか?」

「うん。」

「じゃ、じゃあお言葉に甘えて。」


 そうして、俺は今夜、美少女と一つ屋根の下過ごすこととなった。


 ***


「入って。」


 伊波の家は、本当にマンションのような建物の一室にあった。7階建てで、規模は割りと大きい。学園からも遠くなく、都市内にある。どうやら、学園の学生が住めるように家賃も比較的安く、お手頃な物件となっているようだ。

 俺は6階からの景色を眺めながらも、恐る恐る部屋に入った。


「お、お邪魔しまーす…。」


 伊波は電気をつけて、そのまま左にある部屋へと入っていった。


「じゃあ、ここが、大翔の部屋。」

「…わかった。」


 そこは使われていない部屋らしく、何も置かれていなかった。かといって、掃除していないわけでもなく、人が住もうと思えば十分な部屋だった。

 俺は伊波の次の指示を待った。


「ご飯は…ちょっと待って。あ、お風呂…入る?」

「お、おう。入る。」


 き、来た…!『お風呂イベント』


 ※ここからは佐々寺大翔の妄想となります。


「ふぅー。いい湯だなぁ。しかし……まさか同い年の女の子と同居することとなるとは……。」


 がちゃ。


「え?」

「やぁ。」

「ええええええええ!!!な、ななな、なんで伊波が!?!?」

「……大翔の体を洗おうと思って。」


 シャアアアアア……。


「ほら……背中…流すよ?」

「そ、それはまずいって!!」

「はやく…。」

「う、うわあ!!ち、近付くなって!!み、見えてるからぁっ!!ちょっ…!!」






「あ、それと、私は入らないから、湯沸し器の電源切っといて。」

「ですよねーーー!!」


 変な妄想した俺が馬鹿だったよ。





「ふぅ……いい湯だ。」


 お風呂って本当気持ちいいよな。


「ナビィも入れよ。ほら。」

「いや、俺はそんな高温の液体に入ったら溶けちまう。熱気だけで十分だ。」

「そうなんか。」


 ナビィは俺の頭上でくるくると旋回し、言葉を発した。


「なぁ、お前、魔闘会で優勝する気は無いか?」

「うーん…魔法が使えない今、そんなこと聞かれてもなぁ…。」

「……多分だが、魔闘会で優勝できるようになれば、地球に転生出来ると思うぞ。」

「マジ!?」


 それは嬉しい。


「多分な。そこまでの実力を持つことが出来れば、十分だとは思うんだがな。」

「おお!ちょっとモチベーションが上がってきた!」

「いや、モチベーションもなにも、お前は属性が見えるのを待ってるだけじゃねぇか。」


 それを言われると痛い。

 でも、今の俺の状況は、本当に前途多難だ。待つことしかできない。


 その時、本当に不意に、沙菜の言葉を思い出した。


 ――瞑想でもしてれば!?


「……。」

「……?どした、大翔。目なんか瞑って。」


 ナビィの声が聞こえる。

 別に本当に瞑想が効果的だなんて思っていなかった。気休め程度にしていただけだ。


「おーい。寝んなよー?おいってば!」


 どんどんとナビィの声が遠くなっていく。


 そして全く聞こえなくなった。


 これが……瞑想の真髄なのか……?


 もしかしたら見えるのかもしれない。


 適性属性というものが。


 そんな淡い期待と共に、俺は意識を失った。




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