7,俺、訓練始めました。
章タイトルも規則性に則ってつけようと思ったのですが、思い付かなかったので普通のにしました汗
ここまで読んで下さった方々、ありがとうございますm(__)m
「失礼しまーす。」
「あ!来てくれましたか、大翔くん。」
俺は、沙羅……こほん、沙羅先生に呼ばれて職員室に来ていた。
「用ってなんだ?」
「ええと、実は、この学園に魔闘会があるのはご存じですよね?」
ああ、あの天下一魔闘会とかいうパクリネタね。
「うん、知ってるよ。」
「簡潔に言いたいと思います。特別教室のクラスは人数が四人しかいないのです。で、魔闘会は丁度四人の代表者を決めて出場するわけですから、あなたも参加しなければいけないんです。けれど、大翔くんは魔法が使えないから、参加資格を満たしていないので、参加することが出来ません。そこで、他クラスで代役が出来るように頼んでおいてはくれませんか?」
「ええ!?そんな、編入したばかりでそんなことは出来ないよ…。」
それに、大分毛嫌いされてるようだしな。うちのクラスは。
「同じ人物を二回出すって事は出来ないのか?」
その質問に対し、沙羅先生は首を左右に振る。
「今までもそうやって、四人目の代役を頼んでたんです。去年は剛田くんがしてくれました。」
うわ、どうせ木折に頼まれたんだろうな。いや、あいつから頼まれに行ったんじゃないか?
しっかし……俺としてはあの剛田ケンシロウにギャフンと言わせてやりたい。ナメ腐った態度で気が悪いことこの上ない。
この問題を打破する方法はただひとつ。
「それなら、俺がこの一ヶ月間で魔法が使えるようになれば良いじゃないですか。」
***
こうして、この一ヶ月間は俺の魔法が使えるようになるための特訓尽くしとなるのだった。
沙羅先生には、自分には魔法を教える時間が無いし、木折と伊波は学校の貢献活動や、自主練習に忙しいため、関わることができないらしい。そこで、魔法に関しては最高クラスに強いある人物を尋ねるように言われた。
そのある人物とは――
「は?あんたに魔法を教える?嫌よ、死んでも嫌。」
七騎沙菜である。
俺は一つため息をついて、もう一度頼んだ。
「なぁ、頼むよ。どうしても魔闘会に出て、こらしめてやりたい奴がいるんだよ。」
俺としても、こいつには教えてもらいたくないが、魔法の実力はこの学園一らしいので、一番手っ取り早いと感じたからこうして必死に頼んでいる。……でも、そんな実力を持っているのになんで特別教室に…?
「その相手って剛田のこと?」
「な、なんでわかった!?」
「…食堂で見てたのよ。バッカバカしい。あんな挑発に乗るんじゃないわよガキ。」
くぅ~!!この女は本当に気に食わねぇな!!
まぁ、挑発に易々と乗るのもおかしいという意見はあってる気がする。しかし、ここで引き下がれるほど俺は、プライドが無いわけではないんだ。
「そ、そんなこと言ったってなぁ!お前なぁ!男にはなぁ!引きしゃが……引き下がれるほどなぁ……うう…。」
噛んだし、途中から蔑みの目で見られるし、もうやんなっちゃう!!
「とにかく、私はあんたに魔法を教えるつもりはないから。」
「くっ……。」
そう言い捨てて沙菜は、特別教室であるこの場所を立ち去ろうとした。
……ダメだ。ここは何としてでも教えてもらわなければならない。
「たっ!頼むっ!!お前しか…沙菜しか頼める奴が居ねぇんだよ!お願い…します…っ!!」
「なっ……。」
俺は深々と頭を下げた。
「ちょ、ちょっと…何よ、いきなり本気になっちゃって…。そ、それに、どさくさに紛れて私の名前を呼ばないでくれる?」
「なんでもするから!木折や伊波は忙しいから教えて貰うのは無理だし、俺にはお前しか居ねぇんだ!」
「うっ……!……わ、わかったわよ…。」
「!!!……う、うおおおおお!!!ありがとおぉぉ!!!」
歓喜のあまり俺は、思わず沙菜の両手を握った。
「ちょっ、ちょっと。は、離しなさいよ!」
「あ、ごめ。」
おっと……俺としたことが、一時の気の迷いでこの女の手を握るという失態を犯してしまった。不覚。
それから、下校までに少し時間があるので、最初の訓練を始めるために、俺と沙菜は特別教室のある小屋の外に出た。
「じゃあ、まずはあんたがどれぐらい魔法についての知識があるかだけど……。」
「皆無。」
沙菜はやれやれというようにため息をついた。
「ほんと、よくこの学園に編入できたわね。」
「いやぁ、それほどでも。」
「誉めてないっての。で、下級魔法も使えないの?」
「一番簡単なやつか?使えないよ。」
沙菜はうーんと唸った。
「……二年生の時に、進級試験で下級魔法の実技があったのよ。だから、三年生以上は絶対に使えるはずなの。ていうか、下級魔法ぐらいは成長と共に使えるようになるものなのよ?普通。」
この学園は、どうやら六年制らしい。俺のいた世界でいう、中学と高校を一貫したような感じだ。俺は年齢が16歳だから、四年生だ。ちなみに、一から三年生は、こことは少し離れた別校舎にいるらしい。
説明はさておき、先程解説してくれた沙菜の言葉に、俺はショックを受けるしかなかった。
「そ、そんな……。魔法が使えるような予兆すら無かったぞ……。」
「まぁ、個人差はあるのよ。私が二年生の時、試験の前日まで使えなかった子なんていたもん。」
「……なんか、訓練はしたのか?」
「ふん、私は訓練なんかしなくても、二年生の時点で上級魔法は発動できたわ。教師も、特別扱いで訓練には参加しなくていいって言われたわ。」
……いつもの俺なら、「けっ、自慢かよ。」なんて言っていたと思う。でも言わなかった。言えなかった。何故なら、沙菜がいつもは見せないような、怒りの表情と、その裏にある悲しみのような表情を顔にしているからだ。
「そ、そか。…でさ!そいつらはどんな訓練を……?」
何となく気まずかったので、早めに話を戻した。
「ええと……自分の思う魔法についてのイメージを名一杯するんじゃなかったかな。」
「なんだそれ。」
「魔法っていうのは、イメージから始まるの。私は『光』の属性が適性なんだけど、イメージを働かせれば、どんな形のものでも造れるようになるのよ。」
そう言って沙菜は、右手を前に差し出した。そして目を閉じる。
「エーテルコアを解放。」
そう言うと、沙菜の周りに空気の渦が取り巻いた。それらが風となり、俺達の髪を揺らす。
次の瞬間、沙菜の右手の上に、光の球が現れた。
「す、すげ。」
「球体っていうのは、一番イメージしやすく、具現化しやすい形なの。これが出来て初めて『初心者』になれるわ。」
「てことは俺はまだ初心者にすらなれてないのかよ。」
「そういうことよ。」
沙菜はそう言って鼻で笑う。くっ……腹立つ。
「で、これから立方体を造るわ。……!」
沙菜は再び神経を右手に研ぎ澄まし、球体だった光の魔法が、どんどんと形を変え、最終的にはきれいな立方体が出来た。
「おお!すげぇな。」
「自分の魔法をイメージ通りに、複雑な形に変えることが出来れば、半人前ってとこね。」
「ううむ……でも俺はまず、球体すら出来ないんだが……。」
「……あんた、自分の適性属性が何かわかってる?」
「は?わかんねぇよ、そんなの。」
「自分の適性属性は、直感的に分かるものなの。それが出来なければまず、魔法を発動することは出来ないでしょうね。これも、成長と共にわかる事なんだけどね。」
う、うそだろ……。何にも無かったぞそんなの。
「ど、どーすればいいんだ!?」
「知らないわよ、そんなの。」
「この役立たずが!!」
「はぁ!?魔法を教えてもらってる分際で何その態度は!?バッカじゃないの!?」
「さっきから上から目線で上達できる確かなことは何も教えてくれてないじゃねぇか!!」
「ふん!じゃあそこで瞑想でもしてれば!?魔法も使えないあんたが一番役立たずじゃないの!!」
うっ……!い、言い返せない……。
沙菜は機嫌を損ね、立ち去っていった。それと同時に下校時間を知らせるチャイムが鳴った。
「く、くっそぉ~。ほんと気に食わねぇなあの女は!!」
「まぁ、魔法の実力は本当にあるみたいだぞ。」
「何だよナビィ。お前も俺の敵になるのか?」
「な、なんでそうなるんだよ。とにかく、自分の属性が見えるようになるまで待てってことだ。」
「そ、そんなん、一ヶ月以内に見えなかったらどうすんだよ。」
「それはまぁ、ドンマイ。」
「うぉい!!」
「まぁ安心しろって。何せ、魔法のセンスがあるからお前はこの世界に転生できたわけだろ?いわば主人公だ。一ヶ月以内に見えるって。」
そ、そうだな。そうだよな!!俺は主人公だ!チートするんだ!大会でジャイアンをこらしめて、この学園で有名になるんだ!
こうして、俺の先の見えない訓練は始まった。