16,俺、魔闘会しました。2
「ウォータスキン"ランス"!!」
「ファイアスキン"ランス"!!」
炎の槍と、水の槍がぶつかる。
ドドドド…と、派手な音をたてて相殺した。
それを見て沸き上がる歓声。
これが天下一魔闘会だ。
「すげえなぁ……。」
俺は今、一回戦の試合を観ている。女生徒二人の戦いで、かなり激しいものだ。
ここで、魔闘会の具体的なルール説明をしたいと思う。
実は、この世界には魔法で造られた道具、魔闘石というものがある。
魔闘をする者の魔力を込めることで、その者達に特殊な加護を与えるのだ。それは、肉体的なダメージを一切関与しない、アバターのようなものだ。つまり、魔闘をしている間は、心臓を貫かれても死なないというわけだ。その代わり、『HP』が付与される。これがゼロになった場合、敗けとなる。
……っていう難しい説明をナビィから受けて、30分ぐらいかけて理解した。
あ、ちなみに、アバター状態で一対一の戦いをすることを、魔闘という。
さて、そろそろ観戦に集中しよう。
「"ヴォルケーノ"!!」
一人の女子生徒がそう言うと、彼女の周りから火柱がたち、それらが相手に向かって放たれる。
「ウォータスキン"ウォール"!!」
すると相手は、水で造られた壁で、攻撃を防いだ。
だが、炎の女子はそれを読んでいたのか、水の女子(なんか以下略)の方へ周りこんで、手に螺旋丸のような炎をぶつけた。
しかし、水の女子(な以下略)は空中へジャンプし、炎の女子の背後にまわる。そして回転しながら手に纏った水の刃で相手を斬りつけた。だが、炎の女子はそれに対抗し、炎の球をぶつける。
激しい衝撃が起こり、二人は互いに後ろへはね飛ばされた。
「すっげ……。」
「魔闘ってのは、魔法を単純に発動しまくれば良いってもんじゃなく、相手の2手先を読み、それの対抗策、そして勝負の決め手となる魔法をぶつけようとする。」
「だ、大丈夫かな……俺。しかも、魔法はあれから一回も使ってないし……。」
昨日は結局訓練出来なかったし、ぶっつけ本番だな。
「ウォータスキン"ドラゴン"!!」
「うおっ!竜だ!水の竜が居るぞ!!」
ド派手な、そして巨大な竜が、炎の女子に向かって放たれた。
「きゃああああ!!!」
その一発で、満タン近くあったHPが一気にゼロになり、勝負がついた。
ワッ!!!!
歓声が巻き起こった。
「なぁ、ナビィ。あの二人が使ってた、ウォータスキンとかの、『スキン』ってなんだ?」
「ええと、確か、下級魔法から上級魔法までで、訓練次第で形を変えれるらしい。」
「なるほど。」
沙菜が言ってた、イメージが大事ってやつだな。
うっ……ちょっとトイレに行きたい。
「ナビィ、ちょっとトイレに行って来るわ。」
「おう。」
俺は用を足したあと、ナビィの元へと戻ろうとした。
今歩いている通路は、選手専用のものなので、人通りは少ない。しかし、一人だけ、やけに違和感のあるフードを着た人が歩いていた。
(なんか……学園のやつとは思えないな。)
少し不審に思いながらもその人とすれ違う。
「……きゃ殺されるやらなきゃこ……」
「!?」
すれ違った時、何か言っていたのが聞こえ、俺は思わず立ち止まって振り向いた。
『やらなきゃ殺される』
確かにそう言っていた。なんだ……この胸騒ぎ。なにも起こらなければいいんだけど――
***
そうして、二回戦が始まる。
『さぁ二回戦の開催です!次の対戦の組み合わせは――』
司会の女子生徒が活発な声でそう言った。
俺も流石に戦いに馴れてきて、最初ほどは驚くことも無くなった。
そして、四人目となる。
「おい、大翔。」
「ん?どした、ナビィ。」
「今から出てくるやつはこの学園でNo.2のやつだ。」
「え?」
『続いては四人目の対戦となります!組み合わせは……』
ナビィの言葉に、少し興味を持った俺は目を凝らして会場を見る。
そいつは赤い髪で、女だった。
対戦相手はごりごりの大男。
『四年生にして学園No.2の美少女、赤坂紅羽!対して、見た目ヤンキー心もヤンキー。どうしようもないデクノボー、田中太郎!』
「げへへへ、女だからって手加減はしねぇぜ?」
「それはどーも。」
あいつはNo.2って事を知らないようだ。
そして、試合が始まる。
「「エーテルコアを解放!」」
二人が同時に唱える。
「"ポセイドン"」
赤坂がそう唱えると、彼女の背後から水が立ち上がり、それらが形を変えて巨人のようなものになった。
そして彼女は手を前に差し出す。
すると水で出来た巨人が大男に向かって突進した。
「えっ!?うわ、ちょまっ――」
結果、田中太郎(笑)は魔法を披露する間もなく、呆気なくやられた。
会場は余りの呆気なさに、しんとしている。
『い、以上、四人目の対戦でしたぁ~……。』
「めっちゃ強いな、おい。」
俺はナビィに言う。
「どこの家の出で、どの地域から来たのかさえわからないという神秘のベールに包まれた謎の美少女で通ってるらしいぞ。……しかし、名前は『赤い』のに、なんで水属性の魔法使い何だろうな。」
「そりゃあ、適性がたまたま水属性だったからだろ?」
「……正論ですね、はい。」
「そういえば、五、六年生を差し置いて四年生に学園トップスリーが揃うなんて変なもんだな。」
残念だが、その中にはあの悪魔女とジャイアンが入っているが。
「それは確かに、珍しいことなんだ。それくらい彼女たちには能力があるというわけだ。まさに奇跡のせだ――むぐっ。」
「それ以上はパクリになるから自重しようねー?」
「おけおけ。」
そんな会話をしていると、司会の生徒が三回戦の選手に、準備をするように指示をした。
「おっと、行かなきゃな。」
俺は速足で準備室へと急いだ。
準備室の扉の前までたどり着くと、ジャイアンとばったりと会った。
「あ、ジャイアン。」
「誰がジャイアンだコラァ!!」