13,俺、野外へ出ました。後編
「な、なぁ……ここって一体どの辺なんだ…?」
「し、知らんわ。何でこんなに暗いんだ?」
俺たちは、学園の集団の行く先の先回りをした。
しかし、さっきまでしっかりと日が射し込んでいたのに、ここは全く射し込まず、とてつもなく薄暗い。夜になってしまったか、と勘違いしてしまうぐらいだ。
後ろを振り返ってみる。
「……。」
「これは……」
「完全に……」
「「迷ったな。」」
「うおおおおおおおお!!!!!どーすんだこれええええ!?!?!」
「知らねええええ!!!どーすんだこれええええ!?!?!」
とりあえず俺とナビィは無我夢中で叫び続けた。
「はぁ……はぁ……。」
「ぜぇ……ぜぇ……。」
「……はぁ……。とりあえず、進むか。 」
「そうだな。留まっていても仕方がないだろ。」
と、言うことで、俺たちは先へ進んだ。
「おいナビィ!あれ見ろ!」
「ん?」
「光だ!光が見えるぞ!!」
「何っ!?」
歩くこと約数十分。ようやく日の光の射し込む場所を見つけた。
あまりの嬉しさに、俺は走った。
途中、行く手を阻む大きな草木があったが、そんなものは問答無用で掻き分け、進んだ。
そしてたどり着く。
「ここは……?」
「……なんて…神秘的な場所なんだ……。」
そこはまるで、聖域だった。
ここだけ吸う空気はおいしく、不思議な雰囲気が漂っていた。
「!!おい大翔!あれを見ろ!」
「?」
ナビィの指す方向を見ると、聖域の真ん中に置いてある大きな岩の上に座る、一人の人物が居た。
その人物は、大昔のお城の兵隊のような鎧甲冑を来ており、隣には銀色に光輝く大きな槍が置いてあった。
「だ、誰だ!?」
「……!」
俺の声に反応し、こちらに顔を向ける。
そして立ち上がった。槍をその手に。
「おい……大翔。こいつは人じゃない。」
「何……?」
「恐らく……亜人だ。」
「!!?」
ナビィの元に向けていた顔を、正面に戻すと、目の前に亜人が居た。
「うわあっ!!!」
「逃げろ大翔っ!!!!」
亜人は槍を突いてきた。それを俺は、運動神経をフルに使って、横へと回避した。
しかし逃さず、槍を俺に斬りつけてきた。
俺の背中を掠める。
「ぐっ!?」
間髪入れず、亜人は俺と距離を詰めてくる。
「な、なんだこいつうううう!!?!?」
「無駄口叩くな大翔!!!逃げろ!!」
「くっそぉぉぉ!!!」
その瞬間、背後で俺を追いかけていた筈の亜人が、目の前に居た。
「なっ……!?」
そして素早く槍で突いてきた。
俺は横に回避しようとしたが、避けきれず脇腹に深く掠めてしまう。
吐血。
人生初体験の吐血だった。
「ごぷっ……!?」
それは単なる血の味だけでなく、胃液や唾液の味や臭いもした。
俺はあまりの痛みに膝をつく。涙が止まらない。
抵抗のつもりで、亜人を下から見上げると、その輝かしい槍を振り上げていた。
「大翔ぁぁぁっっ!!!!」
ナビィの叫びと共に、俺に異変が起きる。
―――それは正に、直感的なものだった―――
気付けば俺は右手を前に差し出していた。
そして言う。
「エーテルコアを解放。」
そして唱えた。
「"ヘルズ・サン"」
すると俺の右手には、黒い炎の大きな球が現れていた。
その大きさ、暗黒とも呼べる禍々しさ。まさに地獄の太陽だった。
その炎は亜人を包み込み、ゆっくりと地面に落ちた。それと共に、暗黒の炎は爆発し、森全体に衝撃を与えた。
「は、はは……やっと見えた……適性属性が……。」
そして俺は意識を失った。
***
「おいっ!!大翔!!大丈夫か!!?」
俺は、ついさっき魔法を発動して倒れた大翔の近くまで来ていた。
魔法の規模の大きさから、ここら一帯は荒れ地となっていた。明らかに俺も巻き込まれたのだが、無傷だった。
しかし今はそんなことを考えている暇はない。大翔の脇腹から溢れ出す血が、死をもたらすことになるかもしれないからだ。
今から助けを読んでも間に合うか?
いや、それでは間に合わないだろう。
この小さな体では大翔を運ぶことも出来ない。
じゃあ…………アレを使うか?
……やむを得ないかもしれない。大翔の命には変えられない。
その時、物音がした。
「うわっ!すごい……。」
あ、あいつは……!
特別教室のクラスメイト、確か……木折?だったかな。
「これは……。」
他方から声が聞こえた。そちらの方を振り向くと、えと……確か、伊波?が居た。
「うわっ!!!何これっ!?」
またまた他方から声が聞こえた。そちらの方を振り向くと、……あ、悪魔女?何せ、大翔が一番嫌っている女が居た。
これはチャンス。
俺はすぐに羽で飛び、三人に大翔の状況を伝えた。
「!!!ひどい……!」
木折は両手で口を覆って驚く。
「すぐに都市へ戻って手当てしよう。」
伊波はそう言って、大翔を箒に乗せた。
「これって……まさかこいつが……?」
悪魔女は辺りを見渡して、顔をしかめて言う。
その後、大翔は都市の医療所にて、手当てされ、安静にしていた。
彼が目を覚ましたのは、9日後。つまり、魔闘会の前日だった。