1,俺、死にました。
勢いです。読んでいただければ、幸いです。
あーーー……やっちまった……。
何でこんなに落ち込んでるかって?それは俺がトラックに跳ねられて死んだからだよ。
今思えばこの17年の人生で何も良いことが無かったなぁ……。あ、いや、かなちゃんと付き合う事が出来たのは奇跡だったなぁ…。あんな可愛い娘と彼氏彼女の関係になれただなんて……くそー!!あと一週間あったらキスは出来ただろうになぁー!!
俺は自分の生前を悔いながらも、辺りを見回した。
白、白、白。
どこを見ても白が続いているこの謎の空間。
「誰かいるかー!!?」
俺の声がこだまする。返事が返ってこない。そのあまりの静けさに、虚しさが倍増した気分だった。
「うへぇ……天国ってこんなに寂しい所なのか……。想像してたのと全然違うかったなぁ……。」
うう……。帰りてぇ……。かなちゃぁぁん。はぁ……。生き返る方法とかねぇかなぁ……。シ○ンロォォン……。
「よんだ?」
「びっっくりしたあ!!」
急に後ろから声が聞こえてきて、俺は身体を跳ねさせた。後ろに振り向くと、何て言うか……僧侶の方々が着るような、いわゆるローブのようなものを着ているお爺ちゃんが立っていた。
「……誰?」
「いやぁ、すまんね。君は佐井寺大翔君だね?」
「な、何で俺の名前を……もしかして神様?」
「ううん、シェン○ンだよ?」
うわぁ……ドラ○ンボールのキャラが出てきたよ……。七つ球を集めると出てくるやつだよ……。
しかし、このどうしようもない状況で、人が出てきてくれたのは嬉しかった。何から質問しようかと考える前に、神様が口を開いた。
「さて、佐井寺君。君、生き返りたくないかい?」
「えっ!?出来るのか!?」
「うん、出来るよ。ただ、君の生きていた地球ではないけどね。」
「……え?」
「いや、それがね、君には魔力なるものが潜在しているんだ。」
魔力ね。はいはい、分かりますよ。いわゆるMPってやつだね。ル○ラとかホ○ミとか使うためにあるやつね。ゲームしたからそのへんの知識は大体分かるよ。
「…で?何って?」
「いやだから魔力。」
あーはいはい、魔力ね。あのイオ○ズンとかの――
「そろそろ先に進んで良いかな?」
「……えっ!?あ、はい。」
「で、だ。君には魔力、それも相当高度な魔法が使えるため、魔法の概念のある星に――」
「まてまてまてーーい!!ちょっと待て!!流石にいきなりすぎじゃね!?何、魔力って!!17年間そんな物に関わったことないからね!?魔法って最早ファンタジーじゃねぇか!!マンガじゃん!!アニメじゃん!!」
唐突な展開過ぎて俺には理解不能だった。そこまで要領は良くないので、突っ込ませてもらった。
「まぁ、何だ。君からしたらいわゆる、『異世界』なるものがあってだね。君には魔法の概念のある『異世界』に転生してもらう。」
異世界……か。小説とかでその設定のものをよく読んだから大体は分かるかな。うん。
「で、その異世界に転生しなきゃいけない理由は?今まで魔力を持った状態で地球で生きてたんだから、別に異世界じゃなくてもいいんじゃ…。」
「残念ながら君が思っているほど魔法というのは甘くないのだよ。しかも、君の持つ魔力の性質は……恐らく、異世界でも最強と十分に言えるほど高等なものなんだ。」
なにそれ、異世界チートとかめちゃ俺得やん。
「このまま放っておけば、いつかその魔力は暴走を始める。もし、魔法の概念のない地球で暴走が起これば対抗できるものなんで無いからね。為す術無く地球は滅亡を迎えるだろうね。」
その言葉を聞いて、俺は自分が恐ろしくなった。一体、俺の中に何があるのか。魔力というものが現実的に存在するものだとは、夢にも思っていなかったため、得体の知れない何かが自分の中で蠢いている気がして、吐き気がした。
「で、他にも理由はある。暴走のことだが、放っておくわけにはいかないよね。だから、君には、その身に潜む膨大な魔力と、底知れぬ魔法を操れるほどの総合的な『力』を付けていってもらう。」
「……つまり、魔法について学んでこい…と?」
神様はうんうんと頷いた。
「異世界の名前は『アレイディア』地球と同じように海と大陸に別れており、自然豊かな世界だ。君には魔法を、兵士育成の為に作られた魔法学園に通ってもらう。」
うわぁ、どんどんテンプレ通りになってきたよ…。
まぁでも、異世界転生。うん、なかなか楽しそうな響きだ。特に何も無かった俺の前世よりかは充実した生活を送れそうだな。
「それでは、今から転生を始める。準備はいいか?」
「お、おう!」
神様は両手を俺の足元にかざした。すると…何て言うか、魔法陣?のようなものが俺の足元に浮かんだ。
「今から20秒後に転生されるから。」
うほー。ちょっとテンションあがるなー!俺って一体どんな魔法を使うんだろうか……。まぁ強いらしいからチートしまくってハーレムでも作ろうか。いや……でも俺にはかなちゃんが……。
そんなことを考えていると神様が俺に語りかけてきた。
「あ!一つ言い忘れてた。佐井寺君、君は確かにかなりの高等魔法を使用することが可能だが――」
聞き終わる前に俺の意識は途絶えた。
「あ、遅かったか……。まぁいいや。彼なら何とかするだろう。」
神様は後ろに振り返って歩き出した。そして呟くように言う。
「まだ彼の魔法は覚醒していなくて、最初のうちは使えなくてもね。」