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墓石

作者: 無貌

なんとなく思い付きで書きました。

というのは嘘で、名無しの首なしが上手く出来なかったのでその腹いせ?じゃないかもしれないけどそんな感じ。


私は墓石はかいしである。名前がつく予定はない。


一様『鈴木家之墓』と前に書いてはあるが、私の下に葬られ今でもお参りに来る者たちの受けつぐ名だ。

私の物ではない。


私がこんな小難しい事を考えるようになったのは何時ごろからだったか?

確か今お婆さんという地位にいる妙子がまだ私よりも小さな頃だっただろうか?

もう春夏秋冬を何十回巡っただろう。毎年盆には顔を見せていたのにあくる日には私の下に納められていた物もいたし、空から何かがたくさん降った日には大勢の人が変わり果てた姿になって穴に放り込まれたこともあった。

その上には今では少し汚れてしまっているけど私の何倍もおおきな同族がいる。

今では人々はそんな彼には目もくれずに前を通っていくが今でも彼の顔は優しげではあるがどこかリンとしたものが有る。何時かああ成りたい様な成りたくないような複雑な感じだ。


だが納めている家系に不幸が無いのが一番だ。

大きな揺れがあった日から誰もお参りに来てくれない同族もいる。

もうあれから季節が二回ほど巡って今年も盆になったが、やはり今年も来ない家族がいる。

お隣の大野家の奴なんかは苔むしてきてしまった。毎年豪快に笑う漁師兼族長の大柄な爺さんがいたと思ったが最近全くその姿を見ていない。あの大きな揺れで何かあったのは間違いないはずだがそれすら分からないというのは何とも悔しい物が有るのだろう。あいつは毎日苦々しい顔をしている。

手も足もない事をこれほど悔しく思った事はあの空から何か落ちて来た日以来だ。

あれの後から妙子の夫の顔を見ていない。死んだんなら私のもとに来る筈なのにそれすらなかった。

今でもその真相が解らないことが心残りだ。


それでも私は今でもバラバラではあるが各家族がお参りに来てくれるだけましだ。

言葉が悪いかもしれないがああはなりたくない。誰からも思い出されないというのが一番つらい。

それというのも私たちは口が無いから無口だ。

来る日も来る日も周りの同族と坊様の顔見ているだけなのは勘弁だ。

気が滅入ってしまうし掃除だってしちゃくれない。


だが最近奇妙な事が起きている。

最近私の下に入った訳でもないのにお参りにくる人数が減っているのだ。

これは一体どういう訳だろうか?特に酷いのが妙子さんの次男坊確か…つとむとかいったか。

少し前揺れがあったよりも前になんだか欲深そうな女を嫁さんだと言って納められてる人々に報告していたようだが、あの後数人の子どもをこさえて連れてきていたが最近その子供をちっとも見ていない。


というか嫁さんの方もちっとも来ていない。どうせなにか悪さでもしているに違いない。

妙子の家はここら辺で1・2を争うぐらい裕福な家系だ土地や何か持っている。

それを目当てに身体を餌に次男坊を釣ってなんとかその権利をふんだくろうとしていたのだろう。

子をこさえたのもそのためだ。別れ話を持ち出された時に金を奪ういい口実になる。

そんな風に子どもを見る女が子を育てられる訳が無い。


どうせ碌でもない育て方をしたのか、それとも全くに育てなかったか。どちらにしてもあの子たちはまともに育たずまともに生きれなったのだろお。

嘆かわしい事だ。そんな女を家に入れた次男坊もそ女の上っ面にだまされた家族も。


まあ、過ぎた事は仕方ないどうしようもないとは言わないがもっと建設的な事を考えるべきだ。

私が考えてもどうしようもないのだが。


今年もまた盆が過ぎて暑い日が射す夏が過ぎる。

これが終わればまた秋が来る。妙子さんがまた来るだろう。

彼女が語りかける人々はいない。来るのはもっと日が暮れた晩だけだ。


さてそれまで何をしようか?

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