21.坊っちゃん劇場
すごく短いです
少し周りを見渡せば騒めく女性たちの輪がそこかしこにある。
皆の視線の先を見れば、そこにはどうした事か、たった1人明るい日差しの下、憂いを帯びた花の顔を少し俯ける青年の姿があった。
彼の後ろから溢れるように咲き誇る薔薇の生垣は、ハラハラと時折思い出したようにその花弁を散らしていく。
赤く色づくその花びらは、風のイタズラか彼の頬をくすぐっていく。まるで慰めるかのようなその偶然に、青年の表情も思わずといったように綻びた。
柔らかく細まるその目元、何かを探すような花弁を追う繊細な指先。
彼を遠巻きに取り囲むご令嬢方から、感嘆の溜息が漏れた。
「…………フリード様」
表情が完全に抜け落ちたロレーヌはそれ以上の言葉を飲み込んだ。
(言うな言うな言うな。気にしたら負け。気にしたら負け。……あ、まずい。鳥肌が)
幾度となく同じ場面を見ているからといって、耐性がつく訳でない。ぞわぞわと背筋を這い上がる不快感に、ロレーヌの表情も戻ってきた。主に怒りの方向で。
「フリード様」
「……ロレーヌ?」
不安そうに、そして一抹の期待を込めた声で振り返った儚い主人は、ロレーヌの姿を認めるとふんわりと花がほころびるように微笑んだ。
瞬間、ロレーヌの眉間に深いシワが刻まれた。
「……フリード様、お加減が優れないようですので、すぐにお部屋へ戻りましょう。一刻も早く」




