13. 夜の訪問は変態仕様に
ちょっとR指定?
背筋を這い上がる悪寒に、ロレーヌが勢い立ち上がったのは一種の条件反射かもしれない。素晴らしい勢いで立ち上がったロレーヌは流れるような動作で、今まで座っていた椅子を頭上に掲げた。
「ヴァイス…………いい加減にしてくれませんかねぇ……。安眠妨害も甚だしくて仕方ありません。そういう変態行為はあんたの後ろにくっついて回る、見た目に騙された可哀想な女性達に全力で向けてあげてください。そして即刻この部屋から立ち去りなさい」
ゆらりと立つロレーヌの顔から表情が抜け落ち、その眼は本気だ。さすがにこの幽鬼のような様子を見ればヴァイスといえども引くかと思いきや。
「あれ?もしかして妬いた?大丈夫だよロレーヌ。今は君しか見えないから。ほら、そんなことしてると陽が昇っちゃうよ?眠らないつもりだったなら、他の事しよ?汗かいた後の気だるげな朝の日差しって、とっても気持ちいいんだよ?」
ロレーヌの怒りもどこ吹く風。実力さが歴然としているからか、その態度は余裕すら感じられる。
もちろん、優雅にロレーヌのベッドで寝そべるこの獣を前に、獲物が、自らの身の危険を察知しないわけがない。口で言ってもわからなければ、次にくるのは実力行使だ。それが証拠に、ヴァイスの眼は夜中だというのに、異様な熱を孕みつつある。潤んだような、切迫したような危うい視線は、一瞬でも気を抜けばロレーヌの体をたやすく絡みとってしまえるほどの強さがある。
ロレーヌは決断した。
「どうぞここでお休みください。では、よい夢を」
敵前逃亡上等。手近にあった財布と日記を手に持ち、機敏な動きで踵を返す。扉の取ってに手をかけた。が、
「嫌だな、オレ一人で寝れるわけないじゃん。冷え込んできたし、人肌が恋しくなるんだよね。……ロレーヌは?」
まるで見計らったように重ねられた乾いた男の手がロレーヌの手の甲の上に出現した。ありったけの甘さと、重低音のかすれ声を加味させた最後の一言は、見事に多大なるダメージをロレーヌに与えた。体の芯を揺り動かす声に、その熱に、自然と震えのくる膝を叱咤し、ふるふると立ちすくんでいる。赤くなった顔を絶対に見られないように必死に明後日の方向を見るロレーヌは、常の冷静さをどこに忘れたのかといいたくなるような可愛らしさである。
もちろん飢えたオオカミがそんな最高のご馳走を放置しておくはずもなく、ゆっくりと体をロレーヌの背中に沿わせた。空いた片手が薄い夜着の上からロレーヌの腹の辺りを撫で一分の隙間も埋めるようにきつく抱きすくめた。
ヴァイスの吐く熱い息が、ロレーヌの首元を暖める。耳元に触る自分のものではない他人の髪の毛の感触がさらさらと動く。
唐突に数拍固まっていたロレーヌの意識がはっと目覚めた。
「な、な、何すんのよーーーー!!!」
混乱の極みのロレーヌは、咄嗟に出した自身の暗器を躊躇なく背後へと向けた。
「っ?!ちょ、ろれー」
小さく後ろへ後退したヴァイスが焦ったように言葉を紡ぐ前に、ロレーヌは脱兎のごとく部屋から逃げ出していた。
なかなか夜から抜け出せません(笑)




