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『「君の役目は妹で足りる」と婚約破棄されたので辺境へ去りましたが、滅びかけた王国より先に私の領地が大陸最強になっていました』  作者: 常陸之介寛浩✪書籍・本能寺から始める信長との天下統一


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第142話 裏搬入口、動く

 昼を過ぎても、取引は止まらなかった。


 十七番箱の重量差異は、銀狐商会側の転記ミスとして処理された。箱は開けず、封印も破らず、差異箱として別置きされた。


 それで全員が安心したわけではない。


 むしろ、一度止まりかけたことで、空気は少し硬くなった。


 けれど、その硬さは悪いものではなかった。


 銀狐商会の荷扱い人は、箱番号を声に出して確認するようになった。

 商会側の記録係は、数字を書くたびに隣の控えと見比べるようになった。

 ヨハンは荷車の位置をこまめに直し、ガレスは縄の内側に誰かが入りそうになるたび、視線だけで先に止めるようになった。


 誰も大声を出さない。


 だが、皆が見ている。


 それが、午前とは少し違う空気だった。


 炊事場では、申告通りの人数分の食事が出された。申告外人数なし。器の破損なし。水の追加なし。


 マルタは記録札を一枚ずつ裏返しながら、静かに言った。


「午後も、このまま終わればよろしいのですが」


 豆売りの女主人が豆袋を抱え直し、窓の外を見た。


「そういう時ほど、何か来るんだよ」


「縁起でもないことをおっしゃいますね」


「長く商売してると、嫌な予感だけは当たるんだ」


 マルタは返事をせず、鍋の火を少し弱めた。


 その頃、旧代官所裏搬入口では、ディルクの兵二名が監視についていた。


 表からは見えにくい位置。

 だが、搬入口と旧道の両方が視界に入る場所。


 旧搬入口には縄が張られ、立入禁止札が吊るされている。柵は仮補修済み。固定鉄輪も記録され、周囲の地面には不用意に踏み込まないよう目印の紐が引かれていた。


 何もない。


 そう見える場所だった。


 だからこそ、兵は目を離さなかった。


 先に気づいたのは若い兵だった。


「……あれ」


 彼は、旧道の方を指差した。


 もう一人の兵が目を細める。


 草の向こうで、何かが動いていた。


 荷車。


 小さい。


 正式な銀狐商会の荷車よりずっと小さく、町の中で野菜や薪を運ぶような軽い荷車だった。古布がかけられていて、中身は見えない。


 引いているのは男一人。


 顔は布で半分隠れている。町人の格好に見えなくもないが、歩き方が妙に急いでいた。


 正式な動線ではない。


 旧搬入口の方へ向かっている。


 若い兵は、訓練通りに声を出した。


「追加確認をお願いします」


 もう一人の兵が、すぐに赤布を上げた。


 旧搬入口異常。


 火印。


 荷車あり。


 荷印。


 旧搬入口関連。


 蔦印。


 分類は後でいい。


 まず知らせる。


 赤布が上がった瞬間、男がこちらに気づいた。


 男は荷車を放り出し、旧道の草むらへ走った。


「止まれ!」


 兵が追う。


 しかし、男は最初から逃げ道を知っていたようだった。草地の切れ目を抜け、崩れかけた石垣の裏へ身を滑らせる。


 追った兵がそこへたどり着いた時には、もう姿はなかった。


 残ったのは、小さな荷車だけだった。


 古布をかぶったまま、旧搬入口の少し手前で斜めに止まっている。


 車輪の片方が、ぬかるみに半分沈んでいた。


 中継小屋へ連絡が走った時、ガレスは十七番箱の差異札を確認しているところだった。


「旧搬入口、赤布!」


 連絡役の兵が息を切らして駆け込んだ。


 その瞬間、中継小屋の空気が凍った。


 ヨハンが顔を上げる。


 銀狐商会の現場責任者も動きを止める。


 ルイスは記録板を握り直した。


「内容は?」


「小型荷車一台。未申告。男が逃走。荷車は残置。旧搬入口手前」


 ガレスの顔から血の気が引いた。


 ロイエンが即座に言った。


「取引記録と分けます。旧搬入口即時確認。正式荷の現在位置は?」


 ルイスは反射的に答えた。


「中継小屋内。箱確認済み二十四。十七番箱のみ差異箱別置き。封印異常なし」


 ディルクがすでに歩き出していた。


「正式荷を動かすな。中継小屋の縄を閉じろ。商会側は現場責任者一名と記録係一名のみ同行。残りは中継小屋待機」


 銀狐商会の現場責任者が青ざめた。


「当方は関与しておりません」


「今はそれも確認中です」


 ディルクの声は冷たかったが、断定はしていない。


 レティシアは帳場から知らせを受け、すぐに中継小屋へ来た。


 表情は落ち着いている。


 だが、その目は鋭かった。


「正式荷は?」


「中継小屋内で停止中。封印異常なし。商会側も待機」


 ルイスが答える。


「旧搬入口の荷車は?」


「未開封。布も外していません」


「よろしい」


 レティシアは短く頷いた。


「開ける前に記録します」


 旧搬入口へ向かう道は、昼なのに妙に暗く感じられた。


 草の影。

 古い石垣。

 使われなくなった搬入口。

 その前に、布をかぶった小さな荷車が一台。


 ただそれだけなのに、嫌な存在感があった。


 ディルクは荷車から数歩離れた場所で止まった。


「誰も触るな」


 兵が周囲を固める。


 ルイスは記録を始めた。


 旧搬入口付近未申告荷車に関する即時確認記録。

 発見時刻、昼三刻後。

 発見場所、旧代官所裏搬入口手前。

 発見者、監視兵二名。

 状況、小型荷車一台。古布あり。引いていた男一名、兵の確認前に逃走。荷車残置。正式銀狐商会取引荷とは別動線。


 ロイエンの書記官も同じく記録する。


 銀狐商会の現場責任者は、少し離れた場所で立っていた。


 彼は何度も荷車と自分たちの正式荷の方向を見比べている。


「本当に、当方の荷ではありません」


 レティシアは彼を見た。


「その発言も記録します。ただし、確認前の発言として」


「はい」


 ルイスが書く。


 銀狐商会現場責任者、当該荷車について商会正式荷ではないと発言。ただし確認前発言として記録。


 ディルクは荷車の周囲を見た。


「車輪幅」


 ヨハンが呼ばれていた。


 彼は荷車に触れず、棒で車輪の幅を測った。


「昨日の轍に近いです。完全一致とは言いませんが、幅はかなり近い」


「車輪の泥は?」


「北側の乾いた土と、旧搬入口付近の湿った土が混じってるように見えます」


 ルイスが記録する。


 次に外装。


 古布はまだ外さない。


 まず、荷札の有無。


「荷札なし」


「封印は?」


「見える範囲ではなし」


「布の結び目」


 マルタがいれば、布の結び方まで見ただろう、とルイスは一瞬思った。


 今はディルクの兵が確認する。


「簡易結び。商会封緘なし。町内荷札なし」


 レティシアはロイエンを見た。


「王太子府確認として、開封前の条件を」


 ロイエンは頷いた。


「開封理由。未申告荷車であり、旧搬入口付近に残置。逃走者あり。正式取引荷との混在防止および安全確認のため。開封立会人、北方旧所領、警備、王太子府連絡官、銀狐商会現場責任者。ただし、銀狐商会の立会いは正式取引への影響確認のためであり、当該荷車の所有を認めるものではない」


 銀狐商会の現場責任者が、はっと顔を上げた。


「その文を入れていただけるのですか」


「必要です」


 ロイエンは静かに言った。


「あなた方が関与を否定している以上、立会いと所有認定を混同しない方がよい」


 現場責任者は深く頭を下げた。


「助かります」


 レティシアも頷いた。


「採用します」


 ルイスが書く。


 そして、いよいよ古布が外された。


 兵が手袋をつけ、結び目を解く。


 布がめくられる。


 全員の視線が、荷車の中へ集まった。


 鉱石ではなかった。


 まず見えたのは、焼け焦げた紙片だった。


 古い帳簿の断片のように見える。文字の一部が残っているが、焦げていて読みにくい。


 その下には、小さな木札が数枚。


 いくつかは焼けている。

 いくつかは新しい。


 そして、その木札には、白蔦状の印があった。


 ただし、前回の木片とは違った。


 焼き印ではない。


 墨で描かれている。


 しかも、蔦の曲線が妙にきれいすぎた。


 ルイスは思わず息を呑んだ。


「これは……」


 ロイエンが低く言った。


「描いてありますね」


 ディルクも頷く。


「焼き印ではない。後から描いたものだ」


 銀狐商会の現場責任者が青ざめる。


「まるで、白蔦会のものに見せようとしているような……」


 その言葉に、誰もすぐには返さなかった。


 それを最初に言葉にするのは危険だった。


 レティシアは、静かに言った。


「白蔦会とは断定しません」


 ルイスはすぐに書いた。


 荷車内発見物。

 焼損帳簿断片数点。

 木札数点。白蔦状類似印あり。ただし、一部は墨による後描きと見られる。焼き印ではない。白蔦会関連物とは断定せず。偽装の可能性あり。


 豆売りの女主人が、遅れて現場近くまで来ていた。規定位置より内側には入らず、縄の外から見ている。


 彼女は低く呟いた。


「嫌な真似するね」


 ヨハンも顔をしかめる。


「見つけさせるための荷車、ですか」


 ディルクが鋭く彼を見た。


「なぜそう思う」


「隠したいなら、こんな見つかりやすいところに置きません。布も雑です。逃げた男も荷車を置いていった。まるで、見つけてくれって感じです」


 ディルクは少し黙った。


「同感だ」


 ガレスは喉を鳴らした。


「誰かが、白蔦会っぽく見せようとした……?」


 レティシアは答えなかった。


 代わりにルイスへ言った。


「“白蔦会っぽく”ではなく、“白蔦状類似印を用いた偽装可能性”と記録して」


「はい」


 ガレスは少し縮こまった。


「すみません」


「いいの。言葉を変えればいいだけよ」


 それは責める言い方ではなかった。


 ガレスは小さく頷いた。


 荷車内の品は、その場で一つずつ仮保全対象になった。


 焼損帳簿断片。

 墨描き木札。

 古布。

 荷車そのもの。

 車輪の泥。

 結び紐。


 荷車そのものまで。


 ルイスは記録量に一瞬目眩を覚えたが、手は止めなかった。


 ここで手を止めれば、あとで誰かが「何が入っていたのか」を勝手に語る。


 それが一番危険だった。


 銀狐商会の現場責任者は、はっきり言った。


「当方はこの荷車と関係ありません。正式荷の箱番号、荷車数、封印はすべて記録通りです」


 レティシアは頷いた。


「確認します。正式荷の動線と、この未申告荷車の動線は分けます」


 ロイエンが続けた。


「銀狐商会側にも、関与なしの仮確認署名を求めるべきです。ただし、“現場確認範囲に限る”と明記して」


 現場責任者はすぐ頷いた。


「それなら署名できます。本部全体の責任までは、この場では断言できません」


「当然です」


 レティシアは言った。


「署名範囲を越えた署名は、後で争いになります」


 ルイスは新しい欄を書いた。


 銀狐商会現場責任者署名範囲:現場到着荷車三台、箱数二十四、封印確認済み正式荷について、当該未申告荷車との直接関与を確認できず。署名は現場確認範囲に限る。


 ロイエンはそれを聞き、深く頷いた。


「よい文です」


 銀狐商会の現場責任者も、明らかに安堵した顔をした。


 だが、問題はまだ終わっていない。


 正式荷の取引をどうするか。


 中継小屋では、荷が止まっている。


 十七番箱の差異は処理済み。

 正式荷に異常はない。

 旧搬入口では未申告荷車が見つかった。

 中身は、白蔦状類似印を用いた偽装可能性のある物。


 豆売りの女主人が言った。


「普通なら、止めるよ」


 ヨハンも黙って頷いた。


 ガレスは、もはや顔色を失っていた。


 ディルクはレティシアを見る。


「止める理由は十分にあります」


 ロイエンも静かに言った。


「この状況で取引を完全停止しないのは、かなり危うい判断です」


 その声に、全員がレティシアを見た。


 レティシアは、未申告荷車と、中継小屋の方を順に見た。


 正式荷。

 未申告荷車。

 旧搬入口。

 銀狐商会。

 王太子府。

 町人。


 全部が一つに絡まりそうになっている。


 だからこそ、分けなければならない。


「取引を完全停止しません」


 場が静まり返った。


 豆売りの女主人が目を細める。


「本気かい」


「はい」


 レティシアは答えた。


「正式荷と未申告荷車を分離します。未申告荷車は仮保全。旧搬入口は封鎖強化。逃走者の追跡。正式荷は、中継小屋内で封印と数量に異常がないものとして、手順内で継続します」


 ロイエンが問う。


「その理由は?」


 責めるのではない。


 必要だから問うている。


 レティシアは、彼の目を見て答えた。


「未申告荷車は、正式荷ではありません。正式荷の封印、箱数、商会側記録に現時点で異常はありません。ここで正式取引を完全停止すれば、未申告荷車を置いた者の狙い通りになる可能性があります」


 ディルクが頷いた。


「止めれば、混乱を作れる」


「ええ」


 レティシアは続けた。


「ただし、危険はあります。だから、止めない理由も記録します」


 ロイエンの表情が、わずかに動いた。


「止めない理由も、ですか」


「止めるより危ない判断ですから」


 ルイスは、すでに新しい紙を出していた。


 表題を書く。


 手が少し震えた。


 けれど、文字は崩れなかった。


 分離継続判断書


 レティシアは口述した。


「一、未申告荷車は、銀狐商会正式取引荷とは別動線で発見。二、正式荷は北門より受け入れ済み。箱数、封印、商会側記録を確認済み。現時点で未申告荷車との混在なし。三、未申告荷車は仮保全し、正式荷と保管場所、動線、記録を分離。四、旧搬入口は封鎖し、警備増員。五、取引完全停止による正式荷保管負担、警備負担、王都需要への影響を考慮。六、銀狐商会現場責任者、王太子府連絡官、北方旧所領警備、帳場立会いのもと、分離継続を判断」


 ルイスは書き続けた。


 周囲は誰も口を挟まなかった。


 いや、挟めなかった。


 止めないことにも、これほど理由がいる。


 そのことを、全員が見ていた。


 ロイエンは静かに言った。


「この判断書に、王太子府連絡官として署名します。ただし、所見を添えます」


「お願いします」


 ロイエンは口述した。


「王太子府連絡官所見。未申告荷車発見により取引完全停止も選択肢となる状況。ただし、正式荷と未申告荷車は現時点で記録上分離可能。正式荷の封印・箱数に異常なし。未申告荷車は、白蔦状類似印を用いた偽装可能性があり、取引混乱を目的とした設置の可能性あり。分離継続判断は危険を伴うが、混在を避け、正式荷を記録下に置いたまま進める実務判断として理解可能」


 銀狐商会の現場責任者は、苦しそうな顔で頷いた。


「当方も、署名します。正式荷が止まれば、商会としても大きな損害になります。ただ、この未申告荷車とは関係ありません」


「その範囲で記録します」


 レティシアは答えた。


 ディルクも署名した。


 ルイスも記録官として名を入れる。


 分離継続判断書。


 その紙が、午後の取引を支えることになった。


 未申告荷車は、布をかけ直され、縄で囲まれたまま仮保全場所へ移された。


 正式荷とは逆の動線。


 別の保管場所。


 別の記録束。


 ガレスは、それを見て呟いた。


「同じ日に、進める荷と止める荷があるんですね」


 レティシアは、彼の隣で静かに答えた。


「だから、分けるの」


 ガレスは頷いた。


 怖さは消えない。


 でも、何が怖いのかは少し見えた。


 中継小屋では、正式荷の取引が再開された。


 誰も軽くは動かなかった。


 銀狐商会の荷扱い人は、さっきよりさらに丁寧に箱を扱った。

 ヨハンは未確認荷が近づかないよう荷車の周囲を見た。

 ルイスは分離継続判断書の写しを取引記録の横に置いた。

 ロイエンの書記官は、王太子府向け緊急報告の下書きを始めた。


 旧搬入口では、兵が増えた。


 赤布は下ろされていない。


 異常は継続中。


 だが、正式荷は動いている。


 止めるものと進めるものが、同じ空の下にあった。


 夕方近く、帳場の一角で、レティシアは短く息を吐いた。


 疲れが見えた。


 ほんの一瞬だけだったが、ルイスは気づいた。


「大丈夫ですか」


「大丈夫ではないわ」


 レティシアは正直に言った。


「でも、止まってはいられない」


 ルイスは何も言えなかった。


 その代わり、分離継続判断書の写しをもう一枚作った。


 王太子府へ。

 王立書庫へ。

 銀狐商会本部へ。

 北方旧所領控え。


 また紙が増える。


 でも、今日ほどその紙が必要だと思った日はなかった。


 夜に入る前、ロイエンは王都へ緊急報告を書いた。


 銀狐商会本取引中、旧搬入口付近に未申告小型荷車を発見。引いていた男は逃走。荷車内より焼損帳簿断片、白蔦状類似印を墨で描いた木札等を確認。白蔦会関連物とは断定せず。偽装可能性あり。北方旧所領は取引を完全停止せず、正式荷と未申告荷車を分離。未申告荷車は仮保全、正式荷は封印・箱数異常なしとして分離継続判断書に基づき取引継続。銀狐商会現場責任者は現場確認範囲で関与なし署名。


 彼は最後に所見を加えた。


 本判断は危険を伴う。しかし、未申告荷車の設置が取引混乱を目的とする可能性を考えれば、正式荷を記録下に置いたまま進める判断には合理性あり。今後、偽装意図および逃走者経路の確認が必要。


 書き終えたロイエンは、しばらく筆を置かなかった。


 危うい。


 危ういが、雑ではない。


 その違いを、王都が読めるか。


 それはまだわからない。


 その日の追記は、遅い時間になった。


 ルイスの手も疲れていたが、彼は筆を持った。


 レティシアは、分離継続判断書と、仮保全記録を見比べながら口述した。


 すべてを止めれば、安全に見える。すべてを進めれば、強く見える。だが、現実はそのどちらでもない。進める荷と止める荷が同じ日に現れる。正式な箱と、未申告の荷車が同じ空の下に並ぶ。だから分ける。分けるために書く。止めない判断ほど、止める条件をそばに置かなければならない。


 ルイスは、最後の一文を書き終え、ゆっくり筆を置いた。


 外では、中継小屋の火が燃えている。


 旧搬入口にも、兵の灯りがある。


 正式荷は、まだ記録の中を進んでいる。


 未申告荷車は、仮保全の中で止まっている。


 北方旧所領の夜は、進むものと止まるものを分けたまま、深くなっていった。

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